【銘柄】イラン情勢で注目される「丸紅」いま、食料安全保障が投資テーマとして期待される理由

穀物相場の上昇で農業関連銘柄への注目が集まっている Viktor/AdobeStock
イラン情勢で歴史的転換点に立つ穀物相場
現在、世界の穀物市場は劇的な環境変化に直面し、価格に強い上昇圧力がかかっています。
最大の要因のひとつが、アメリカ・イスラエルとイランの軍事衝突による中東情勢の緊迫化です。イランによるホルムズ海峡封鎖などにより原油供給への懸念が急速に広がり、ガソリン価格が高騰したことで、原油を代替する「バイオ燃料」の需要が急激に拡大しているのです。
アメリカでは、大豆油の総消費量のうち過半数が燃料向けとなる見通しで、トウモロコシを原料とする燃料エタノールの使用量も過去20年で3倍超に達しています。
大豆製品に占める大豆油の価値(オイルバリュー)は通常4割程度ですが、直近では5割を上回る水準にまで高まっており、バイオ燃料シフトの大きさを裏付けています。
これに加え、ラニーニャ現象などによる天候不順や、新興国の旺盛な需要増といった供給不安・需要拡大も要因として重なり、穀物価格は長期的にも緩やかな上昇トレンドが続くと予想されています。
穀物価格の上昇が株式市場に与える影響
穀物価格をめぐるこうした構造変化は、農業関連企業の業績に多大な恩恵をもたらします。短期的な価格変動ではなく、エネルギー政策や食料安全保障と結びついた中長期的なテーマであることから、株式市場では長期投資の観点で関連銘柄への投資妙味が一段と高まっています。
■穀物価格上昇で潤うアメリカ株
長期的な穀物価格上昇の恩恵を幅広く受けられる代表的な銘柄として投資家から大きく注目されているのが、世界トップクラスの穀物メジャー(穀物専門商社)、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド<ADM> です。
同社は、主要穀物の買い付けから加工・輸送を一貫して手がけるほか、バイオ燃料であるエタノールの取り扱いも行っています。中国などによる穀物輸入拡大の恩恵に加え、ガソリン代替としてのバイオ燃料需要の急増を直接享受できる立場にあります。

また、穀物価格の上昇を背景に、北米では作付面積が拡大しています。種苗や農薬といったマージンの高い製品の需要増に直結するため、この分野の継続的かつ安定的な成長が見込まれています。
2019年にダウ・デュポンから分離して誕生したコルテバ<CTVA>は、トウモロコシや大豆などの種苗部門と、除草剤などの農薬部門の2本柱で事業を展開する、農業化学の世界大手です。農業の川上に位置するビジネスモデルが、穀物価格上昇局面で大きな強みとなっています。

さらに、穀物価格の上昇は農家の所得を直接押し上げていることから、農業資材・農機に対する投資も活発化しています。特に、長らく農家の経済状態が冴えない時期が続いていたため、ここに来て大型トラクターのペントアップ需要(繰り越し需要)が発現しています。
世界最大級の農機メーカーであるディーア<DE>では、販売価格の引き上げ効果も相まって、大幅な業績拡大が期待されています。機器の更新需要は複数年にわたり継続すると見込まれており、農家の収益環境が改善する局面において、最も恩恵を受けやすい銘柄のひとつと言えるでしょう。

■日本株市場で存在感を増す関連株
日本株市場でも、農業をテクノロジーや資材で支援する企業群や、世界的な商権を持つ総合商社が注目を集めています。食料安全保障への関心が国内外で高まる中、農業インフラを担う企業の存在感はますます増しています。
日本の総合商社の中で、穀物取扱量においてトップクラスの規模を誇るのは丸紅<8002> です。
丸紅は、穀物のトレードにとどまらず、肥料・農薬・種子といった農業資材の提供から散布サービスまで、農業全般を幅広く手がけています。国内外における穀物需要の拡大と価格上昇の恩恵をダイレクトに受けやすい構造にあり、穀物をテーマに長期投資を検討する際の筆頭候補となるでしょう。

これに対して、世界的な農業インフラ投資の波に乗る中核銘柄として中長期的な成長が見込まれているのが、世界有数の農機メーカーであるクボタ<6326> です。
トラクターやコンバイン、田植え機などに自動運転技術を組み込んだ「スマート農業(DX化)」を牽引するクボタは、実践農場「クボタファーム」を全国で運営するなど、国内外の農業の効率化と生産性向上にも積極的に貢献しています。

サカタのタネ<1377>は国内首位の種苗会社で、世界の売上トップ10にも入る規模を誇ります(2023年)。野菜の種子を中心に、苗木・球根・農園芸用品の卸・小売をグローバルに展開しています。
天候不順や災害による不作リスクに備え、種子の調達先を世界中に分散させてリスク管理を徹底している点も、サカタのタネの大きな強みです。食料安全保障の最上流である「種」を扱う企業として、中長期的な成長が期待されます。

穀物相場を好機に変えるには
穀物相場は元来、天候や地政学リスクによって短期的に大きく変動する性質を持ちますが、バイオ燃料への構造的な転換や世界的な人口増という長期的な背景からは、強気なトレンドが続くと見られています。
ただし、穀物先物そのものの値動きを予測するのは困難です。そこで個人投資家としては、農機メーカーや種苗化学会社、また穀物商社といった「穀物ビジネスの恩恵を享受できる関連銘柄」への投資によって、穀物価格上昇の波に乗ることもできるでしょう。
食料安全保障という国家的なテーマとも重なるこの分野は、今後も長期にわたって注目が集まり続けることが期待されており、新たな投資先候補となりそうです。
[筆者]
山下耕太郎(やました・こうたろう)/トレーダー、金融ライター
一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家・トレーダーに転身。株歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味はウィンドサーフィン。
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