イランとイスラエルが直接交戦「第五次中東戦争」でゴールド価格はどうなる?

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金(ゴールド)は不穏な動きに反応する資産だと言われる。世界で起こる戦争、政情不安、為替の乱高下――。金はただの安全資産ではなく、地政学リスクを映す鏡である。個人投資家の天海源一郎氏が、金投資の勝敗を分ける“情報の掴み方”を伝授する。※本稿は、天海源一郎『株と金の大投資術』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。

金への投資が持つ

最大の魅力とは?

 常に世界のどこかに不穏な動きがあって、それを背景に金(ゴールド)の価格はゆっくりと上昇を続け、長期的には3万円に向かいます。金への投資は、長期的にあなたの資産をしっかりと下支えするでしょう。

 金は、5000~6000年前から人々をその輝きで魅惑し、宝飾品や通貨などに用いられてきました。金の魅力を語る上で最大のポイントは、その「希少性」にあります。

 金の国際的な調査機関であるWGC(World Gold Council)によると、これまでに産出された金の総量は約20万トンだそうです。これは、オリンピックの競技用プールで3杯ほど。かつては1杯分と言われていたので、増えています。ただ、少ないことに変わりはありません。

 宝飾品としての金を知らない人はいないでしょうが、ほかにも金は電子部品に使われています。錆びにくく、電気を通しやすい上、加工しやすい性質も持つからです。代替として他の金属が活用できないか、世界中で研究が行われていますが、現状では金に取って代わるような金属は見つかっていません。

 そのため、スマホやパソコン、テレビのほか、ありとあらゆる電気製品の中の電子部品に金が使われています。しかし、金の総量自体は変わりません。だから、金はいつまで経っても価値が高いものとして扱われるのです。

 余談ですが、人類は古くから別の物質を金に変える、いわゆる「錬金術」に取り組み、失敗してきました。実は、現代の科学をもってすれば別の物質から金を生成することは可能だそうです。ただし、生成される金の価値を大幅に超えるコストがかかるため、誰もやらないのでしょう。

 金への投資は、株式投資ほどメジャーではありません。そのため、株と比べると情報の量もかなり限られています。それだけに、チェックすべきところはきちんと押さえておくことが重要です。

 ここからは「金価格の情報はどこで見ればいいの?」「相場の動きについて知りたいのだけれど、何を見ればいい?」「そもそもどこで買うの?」など、金投資に関する基本的な事柄について述べていきましょう。

金価格・金取引に関する

情報を得るときの注意点

 昨今の金価格の上昇を受けて、街中に金の買い取り店があふれるようになりました。テレビ番組で、ネックレスやイヤリングなどの宝飾品を売りに来た人にインタビューをしているシーンを見たことがありませんか?金価格が1グラム8000円、9000円など節目の価格を突破すると、ニュースでそれが報じられると同時に、「金の買い取り店に行列ができている」として、買い取り店の前に並ぶ人を写したり、インタビューしたりするわけです。金価格は2023年8月、史上初めて1グラム=1万円を突破しましたが、その際も同じような取り上げ方がされました。

 しかし、金価格については気に留めておかなければならないことがあります。それは、「初めて金1グラムの値段が1万円を突破した!」というニュースは、金価格を「円建て」で示していることです。金価格には、「円建て」のほかに「ドル建て」があり、双方は異なる値動きをしているのです。

近年の超円安傾向が

金価格に及ぼす影響

 下図は、金価格のドル建てと円建ての値動きを表したチャート。ドル建ては1トロイオンス(toz=約31.1グラム)当たり、円建ては1グラム当たりの販売価格(税込み)です。これを見ると、2022年3月あたりから、円建て、ドル建ての値動きが離れていることがわかるでしょう。

同書より転載

 ここまで大きな差が出ている理由は、「円安」です。

 ニュースなどで報じられる「金が1グラム○○円」という数字は、すべて「円建て」のものです。そして、円建ての場合、当然ですがドル/円相場が大きく影響します。

 ドル/円相場は、2022年3月頃から急速に円安が進みました。ここ1~2年の物価高が円安によるものと理解している人は多いと思いますが、金価格についても同様です。世界での金取引はドル建てで行われているため、円安が進めば、「円建ての金価格」は上昇します。

同書より転載

 戦争やその他の「不穏なこと」が起きる(あるいは起こりそうになる)と金価格が急上昇する局面はありますが、本来、金価格はあまり値動きが大きいものではありません。それは、先出の「金現物のドル建て・円建ての値動き比較チャート」の「海外価格」の値動きを見ても、おわかりいただけるでしょう。

 ところが、そこに「ドル/円相場の変動」が加わると、「円建て」の金価格が大きく変動することがあります。つまり、「円建ての金価格」の値動きは、金そのものの価格の変動を表しているわけではないということ。金価格の本当の推移は、ドル建てでチェックすることになります。

 金の「現物価格」の国際的な指標は、ロンドン市場の「ロコ・ロンドン」と呼ばれる価格です(ロコ・ロンドンは、「(輸送費や保険料などを一切含まない)ロンドンでの取引価格」という意味)。

 金価格には、現物のほかに「先物」があり、こちらはニューヨーク商品取引所の価格が指標になります。

 投資をこれから始めようという人にとって「金には現物と先物がある」などと言うと、混乱するかもしれません。

 しかし、考えてみてください。日本株には4000ほどの銘柄があります。銘柄選びが面倒という人は、投資信託やETFへの投資を選ぶかもしれません。投資信託協会によると、2024年2月現在、6000本近い投資信託があるそうです。株にせよ投資信託にせよ、結局は、膨大な数の銘柄から自分の目的やテーマに合った銘柄を選ぶことになります。

 一方、金について覚えておくことは、「現物」と「先物」の2銘柄のみ。それも、日々の金価格の動向を見るのは「先物」の1銘柄で事足ります。先物価格がより重要なのは、現物市場より先物市場の取引額が圧倒的に多いからです。

 ここまでの話をまとめてみましょう。

 ・金にはドル建て価格と円建て価格があるが、推移を見る時は「ドル建て」価格が適切

 ・国内で報じられているのは主に「円建て」価格

 ・円安によって「円建ての金価格」が上昇している側面がある

 ・金価格のチェックはニューヨーク先物市場を見る

 金投資を始めるために必要な前知識はこれくらいでしょう。あとは、第二章で述べている「金は不穏な動きが大好き」という根本的なことを理解していれば十分です。

金価格を確認する際に使える

便利なサイトと検索ワード

 金投資で最も重要なのが、価格自体の情報でしょう。先ほど「金価格はニューヨーク商品取引所の金先物が基本」ということをお話ししました。最近では、金先物の価格やチャートが見られる証券会社のサイトが増えてきました。また、「金先物 価格」あるいは「金先物チャート」と検索すれば、すぐに価格を調べることができます。そこまで詳しくはありませんが、日経新聞のサイトでもマーケット情報の「商品」欄で金先物の情報をチェックすることが可能です。

 また、金取引で国内大手の田中貴金属や、純金積立で有名な三菱マテリアルなどのサイトでも、金価格のほかに金投資に関する情報を見られます。ただ、そうした会社のサイトは、基本的に「金を販売する」ための作りになっています。その点は認識しておくべきでしょう。

 金投資と聞くと、「金地金や金のコイン」をイメージする人が多いでしょう。「金地金」とは、いわゆる「金塊(インゴッド)」のこと。映画のお宝シーンなどで出てくる金の延べ棒などのことです。保管しやすいように成形され、流通している金地金には、管理用の番号や商標などが刻印されています。

 販売会社で金の現物を購入すると、年会費や購入手数料がかかる場合がありますが、もっと手軽に金に投資することができる商品があります。これについては後述します。

金投資でチェックするのは

金の価格だけではない!

 金価格の推移を専門的に分析するようなサイトの数は限られています。また、ここまで何度か指摘したように、通常、金価格自体はそこまで荒っぽい値動きをするものではないため、1日に何度も価格をチェックする必要はないでしょう。

 金投資で重要なのは、「長期的な視点」です。

 金価格の値動きに関する専門的な情報は限られていますが、金価格の重要なファクターとなる情報、つまり「地政学的な情報」については、テレビや新聞、雑誌、インターネットなど、さまざまな情報源が存在します。

 たとえば、「ロシア・ウクライナ戦争の状況」や「イスラエルとパレスチナの武装組織ハマスとの紛争」などが、金価格に影響を与える、つまり世界に「不穏な状況」を広める要因と言えそうです。ほかにも、北朝鮮の動向、紅海の海賊による海上封鎖など、いくらでも挙げられます。

 ニューヨークの金先物価格は2023年10月頃から急反発しました。これは、イスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃し、それにイスラエルが反撃した時期と一致しています。この両勢力の衝突が「不穏な動き」と思われ、金が買われたと言っていいでしょう。

 もっとも、金先物価格は2023年12月以降、狭いレンジで推移しています。ハマスとイスラエルの衝突、それ以前から続いているロシア・ウクライナ戦争はまだ終わりが見えない状況です。この状況を金価格の動きを通して説明すると、世界の投資家は「この2つの衝突、戦争はこれ以上深刻化しない=いま以上に不穏な動きとはならない」と考えていることが推測できます。

 ハマスとイスラエルの衝突が、イランとイスラエルの直接交戦につながり、さらには、「第五次中東戦争」に発展すると、金は買われる可能性が高いでしょう。

 また、第二次トランプ政権による米国の政治状況も金価格に影響すると思われます。世界の安全保障に関するものだからです。要は、「トランプ政権の動き自体が地政学的リスク」と言うことができるのです。

 このように、金取引では、金価格を通して世界の「不穏な動き」の状況を知ることができる一方、さまざまな「不穏な動き」に関するニュースが金価格に影響します。

 国内外の経済情勢、政治状況、地政学的な情報など、さまざまなことに対してアンテナを張る必要があります。

電子部品向け需要が高まっても

金価格への影響は限定的

 ほかに、金価格は需給の増減によって上下します。需要の約半分は宝飾品向けで、2割が各国の中央銀行による購入、2割が投資(投機)、残りの1割弱が電子部品です。前出の金の国際調査機関WGCによると、2010年代以降、各国の中央銀行による買いが増えています。また、中国やインドなどの経済成長によって、富裕層や中所得者層が増えていることも、金の需要増加につながっているようです。

『株と金の大投資術』 (天海源一郎、幻冬舎)

 金の宝飾品を身につけることはステータスになる側面があり、中国やインドでもその傾向があることから、今後、金の需要が大幅に減ることはないでしょう。したがって需給面では、金価格の大幅な下落をあまり心配する必要はなさそうです。電子部品向けは1割弱と比率が低いので、どれだけ需要が高まっても、金価格への影響は限定的と思われます。

 金価格の動向のカギを握っているのは、やはり「不穏なこと(地政学的リスク)」なのです。