東証「事例集」に名指しで載った42銘柄・配当利回りランキング/新NISA応援

東証が公表している「事例集 プライム市場編」に掲載されている42銘柄は投資対象として有望か? 東証に本資料の背景を聞くとともに、42銘柄についてランキング表で掲載しつつ、金融ジャーナリストの岡村友哉氏に取材した。【本記事はアエラ増刊「AERA Money 2025夏号」から抜粋しています】
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資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を上場企業にお願いしている東京証券取引所(以下、東証)。
2024年11月には機関投資家から評価の高かった企業の取り組みを紹介した「事例集プライム市場編」の改訂版を公表した。
そもそもこの資料は何なのか? まず、東証は300以上の機関投資家などと面談している。東証と面談した投資家が「資本コストや株価を意識した経営の実践」という面で実際に評価している企業と、投資家側の評価ポイントをまとめたのが「事例集プライム市場編」だ。
つまりこの資料は「東証が名前を挙げた銘柄集」ではなく「投資家側が評価している、現在もろもろ取り組み中の銘柄リスト」である。
■東証はなぜ公表?
投資家側の評価項目は、「投資家の視点から資本コストを捉える」(現状分析・評価)、「株主・投資者の期待を踏まえた目標設定を行う」(取り組みの検討・開示)、「経営陣・取締役会が主体的かつ積極的に関与」(株主・投資者との対話)の3項目、計12の観点。
「東証では資本コストや株価を意識した経営を推進したい上場企業に、『どういった取り組みや開示が投資家から評価されているか』の参考例を示すことができればと考えて事例集をまとめました。
特に規模が小さな企業は経営改革への対応が大変な面もあります。同じような規模の企業の取り組みを紹介することで『がんばる意思はあるが、何からはじめれば……』という企業のフォローアップができればと。
資本コストや株価を意識した経営の実現を、一過性のテーマではなく上場企業の意識の中に根付かせていきたいです」(東京証券取引所金融リテラシーサポート部課長/吉田貴弘さん)
東証は『投資者の目線とギャップのある事例』もネットで公開。どちらの事例集も前向きな有望株を見つけるうえで最高の資料、と本誌は勝手に思っている。

事例集の背景がわかったところで、そこに載っている42銘柄の顔ぶれが知りたい!
日本には3826社(2025年3月31日現在)が上場しており、数としては過去最高を記録。これだけ多いと優良な銘柄も埋もれてしまい、個人投資家が気づかないケースも多くなる。
特に、小さめの企業は情報発信が行き届かない場合もある。そんな中、「IR(投資家向け広報)に積極的な会社はそれだけで投資候補として前向きに見ていきたい」と語るのは、金融ジャーナリストの岡村友哉さん。
「投資家や株主に向けて自社の経営方針や取り組みを発信するのは、IR(投資家向け広報)担当者ががんばれば、大金をかけずともできること。
地道なIR活動が市場の認知につながり、株価上昇につながる可能性もあるわけです。
IRに積極的かどうかは立派な投資基準の一つ。逆に業績に関する情報を非開示にするなど、IRに消極的な姿勢を見せた銘柄は株価が下がる時代です」
東証の事例集に載っているのはIRに積極的、もしくは積極的になろうとしている42銘柄ということである。
これらを予想配当利回りの高い順に表にまとめた(本誌が勝手に作成したもので、東証は無関係)。
■特大株主還元で上昇

最近、話題になった銘柄といえばアパレル大手のTSIホールディングス(表の19位)。2025年1月に固定資産売却からの特別利益を計上した。
配当性向30%以上の方針に従い、2025年2月期の配当を15円から65円に大幅増配。
自社株買いを100億円から150億円に引き上げ、株価が上昇した。2026年2月期の1株配当(予想)は40円だ。
「最近はアクティビスト(モノ言う株主)に目をつけられる前に先手を打ち、株主還元の目標値を設定して株価を引き上げようとする企業が増えました。
特に大規模な自社株買いを予告する企業は、決算発表前に業績悪化を見越した株のカラ売りも少なくなるため、株価の安定につながります」
東証の事例集には21位の山陰合同銀行、25位の山梨中央銀行など地方銀行も入っている。
「地銀の小型株は非常に割安でしたが、やはりアクティビストによる株主還元要求で株価が上がるケースが目立ちます。
40位の千葉興業銀行は、2022年までPBR(株価純資産倍率)が0.1倍台でしたが、投資ファンドが株を買い集めたことで急騰しました」

TOPIX(東証株価指数)組み入れ銘柄は、これから減少傾向に。3年後の2028年7月までに、現状の約1700銘柄から1200銘柄程度にする予定という。
「TOPIX連動のETF(上場投資信託)の残高は日銀の買いも含めて120兆円以上です。
今後、TOPIXから姿を消す約500銘柄は、ETFの組み入れ対象から外れる、つまり大量の売りが出ます。
新TOPIXの採用1200銘柄に入るための時価総額のボーダーはざっくり400億円程度です。
最近、ボーダーすれすれの銘柄が増配や自社株買いなどの株主還元策、株主優待の新設をする例が目立ちます」
たとえば時価総額400億円前後の山形銀行は、増配と1年以上の200株保有でクオカード2000円分などの株主優待を導入し、株価は上昇した。
取材・文/中島晶子(AERA編集部)、安住拓哉
吉田貴弘(よしだ・たかひろ)東京証券取引所 金融リテラシーサポート部 課長 東証マネ部!編集長。「東証マネ部!」や『ETFの常識』などを企画プロデュース。「個人投資家にやさしい東証」を目指し精力的に活動
岡村友哉(おかむら・ゆうや)金融ジャーナリスト。国内大手証券、投資情報会社を経て独立。日本株を20年以上ウォッチ。2010年から経済番組のキャスターを務める

編集/綾小路麗香、伊藤忍
『AERA Money 2025夏号』から抜粋