卵を冷蔵庫のドアポケットで保存してはいけない理由、おすすめの場所とは?

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栄養満点かつ手頃な価格で、毎日のように食卓に登場する卵。初めての料理が「目玉焼き」だったという人も多いのではないだろうか。実はこの目玉焼き、卵の選び方・保存・焼き方で見ていくと、とても奥が深いもの!料理家・樋口直哉が、おいしい目玉焼きができるまでの道のりを分かりやすく解説する。※本稿は、樋口直哉『料理1日目 たったの10皿で「料理の基本」はマスターできる』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

卵の大きさは違っても

黄身のサイズは一緒?

 卵選びの大事なポイントは卵の「大きさ=サイズ」です。

 卵は農林水産省の鶏卵規格でSS、S、MS、M、L、LLというふうにサイズが分かれています。卵のサイズは鶏の月齢に比例し、大きく育った鶏ほど大きな卵を産みます。

「Lサイズ」「MS~M」「S~MS」という具合に、パッケージには大きさが小さな文字で書かれているので確認してください。SSサイズとLLサイズでは最大で36gも差が出るので、レシピに「卵1個」と書いてあった場合には注意が必要です。

同書より転載

 最近ではスーパーなどでサイズ表記がない、あるいはフリーサイズという表記の卵も売られています。こちらはSS~MSくらいの大きさの卵がバラバラに入っていますが、選別工程を省き、安価に生産されたもの。値段は魅力的ですが、味や鮮度が安定しない卵が多いので注意しましょう。

 普段使いするのであればどのサイズがいいのでしょうか?ぼくが選ぶのは『M』。なぜなら〈卵黄の比率が最も大きいから〉です。

「卵の大きさは違っても、黄身のサイズは一緒」

 という説を聞いたことはありませんか?この説は半分正しく、半分間違いです。

 卵のサイズが大きくなると当然、卵黄も大きくなりますし、卵白の量も増えます。SSとMの卵を割って比べてみれば卵黄の大きさがまったく違うことがすぐにわかります。

 ただ、卵黄の増加率は卵白よりも低いのはたしか。例えばLとLLでは卵白は増えますが、黄身の大きさはほとんど変わりません。そのため「黄身のサイズは変わらない」という誤った説が広まったのです。

 卵の味は〈卵黄〉と〈卵白〉のバランスで決まります。卵かけごはんにせよ、オムレツにせよ、黄身が多いほうが色もきれいですし、味も濃くなります。そして、最も黄身が多く、白身が少ないサイズがMなのです(ちなみにL以上になると卵白の量が増えるので、卵白の力でふくらませるお菓子づくりなどではLが推奨されます)。

冷蔵庫の野菜室に

卵を入れるのはNG!?

 卵の品質を維持するには低温が原則なので、購入した卵はできれば包装のまま、冷蔵庫のあまり冷たくない場所(例えば冷蔵室の上の棚)にしまいます。

 ときどき、スーパーで常温の棚に並べられていることがあるのは、温度変化によって結露すると、品質が劣化したり、細菌汚染が広がる可能性があるからで、家庭では冷蔵庫に保存するのがベスト。

 また、卵は振動に弱いという特徴があります。振動を与えると殻が割れたり、卵黄膜が破れやすくなったり、白身が水っぽくなるので、安定した場所にしまいましょう。

 昔の冷蔵庫はドアポケットに卵を保存するケースがついていましたが、現在、販売されている冷蔵庫は上部に卵置き場があることが増えました。卵は振動に弱いという事実が周知されたからでしょう。

 冷蔵庫といっても野菜室はNG。卵の殻には気孔という細かな穴があり、にんにくやタマネギのような匂いの強い野菜と一緒にしておくと、匂いがうつってしまうからです。

 卵を割ると新鮮な卵は黄身がしっかりとして、卵白は水っぽい部分(水様卵白)が少なく、皿に広がりません。

 目玉焼きをつくるときにはこの性質が役に立ちます。

 卵の黄身と白身は凝固温度が異なり、ざっくりいうと卵黄は65℃~70℃で、卵白は60℃~80℃で凝固します。

 卵白にはしっかりと火が通り、黄身はなめらかさを保った状態に加熱するには、先に卵白に火を通す必要があるので、新鮮な卵を使えば卵黄が盛り上がったままで、白身が流れたりせず、きれいな目玉焼きになるのです。

フライパンの温度は

水で確かめられる

 目玉焼きは弱火で加熱するのがセオリー。弱火というと表面温度は120℃~140℃くらいで、ジャガイモやレンコンなどの根菜、大きな肉の塊を焼く場合に使う火加減です。

 ゆっくりと火が通る安全運転なので、初心者にも安心ですが、弱点もあります。水分が多い素材を入れると表面温度が下がり、100℃前後になってしまうと食材から出た水分で煮る状態になるので、焦げ目がつかなかったり、なかなか火が通らなかったりするのです。

 料理によって強火で焦げ目をつけた後、弱火で火を通したり、逆に弱火で焼いた後、表面を強火であぶったりするなどの調理工程が出てくるのはこのため。

 料理本で強火、中火、弱火の使い分けについてあまり詳しく書いてないのは、鍋の違いやコンロの火力、素材の水分量などの変数が多く、説明しきれないからです。

 弱火や中火でもフライパンを火にかけ続ければ強火と同じくらい表面温度は上昇しますし、逆に水分の多い具材をたくさん投入すれば、煮ているのと同じ状態になってしまいます。

 温度は目には見えません。料理に慣れている人は手をかざしたり、表面から立ちのぼる蒸気や油煙、食材の様子などから温度を判断しますが、予熱してから小さじ1/2程度の水を入れることでも把握できます。

 フライパンの温度が100℃だと気泡はすぐにできませんが、150℃で小さい気泡ができ、180℃で大きな泡が立ちます。200℃だと水を入れるとすぐに沸きたって、表面をすべりはじめ、250℃近くなると水が蒸発せず、そのままの形で転がるでしょう。

 フライパンの表面温度は経験を積まないとなかなかわかりませんが、最近は温度計つきのフライパンも販売されています。はじめはそういった課金アイテムを上手に使って、温度の感覚をつかんでいくのもよいかもしれません。

自分好みの「焼き方」を

目玉焼きで知ろう

 さて、目玉焼きの場合、白身に火を通しつつ、黄身はなめらかな状態を保ちたいもの。強火で加熱したり、蓋をして加熱したりすると白身に火が通った頃には黄身が固まってしまいます。

 安全に進めるなら弱火がベター。サラダ油をひいたフライパンを弱火にかければ、白身にしっかりと火が通り、黄身はなめらかという状態を達成しやすいからです。フライパンの表面温度が120℃前後の状態で3、4分も焼くと、白身がなめらかで黄身は黄金に輝く、美しい目玉焼きの出来上がり。

 弱火で焼く目玉焼きに慣れてきたら次は中火で白身に油をかけながら焼きましょう。そうすれば香ばしく焦げた白身を楽しめます。中火で15秒予熱したフライパン(表面温度は150℃が目安)にオリーブオイルを多めに入れ、卵を割り入れ、スプーンで白身の部分に油をかけながら、1分ほど底がカリカリになるまで焼くだけです。

『料理1日目 たったの10皿で「料理の基本」はマスターできる』 (樋口直哉、光文社)

 フライ返しを使ってキッチンペーパーを敷いたバットなどに移し、油を切り、皿に盛って、塩胡椒で味付けしたら出来上がり。上手に焼けた目玉焼きを炊きたてのごはんにのせて、しょう油を少し垂らすとこたえられないおいしさです。

 サラダ油をひいたフライパンを中火に熱し、卵を割り入れ、弱火に落とし、蓋をして2分~2分30秒ほど蒸し焼きにすると、黄身の表面にうっすらと白い膜が張ったような状態の目玉焼きができます。これは焼く(伝導熱)+蒸す(対流熱)の合わせ技です。水を加えなくても卵自体の水分が蒸気になって、フライパンの蓋のなかで対流し、フライパンに接していない部分も効率的に加熱できます。黄身にしっかりと火が通った仕上がりが好き、という方にはおすすめの方法です。

 目玉焼き一つとっても加熱方法を変えることで、食材は大きく表情を変えます。一つの食材の持ち味を損ねずに、違った魅力を引き出すこと。それが料理の本質なのです。