ふるさと納税でも「新米が売れない」 米農家の最悪のシナリオは「仮払金返納」 鈴木農水相は「農協」の代弁者か

■「ふるさと納税」コメの注文が激減, ■売れ残った5キロ1万円超の特別栽培米, ■来年の買い取り価格は下がる, ■下げ幅の見当がつかない, ■仮払金返納を求められる可能性, ■年明けから値下げに踏み切る, ■農水相が米価の下落を阻止か, ■鈴木農水相は農協の代弁者か

 新米の価格は高騰しているが、米を直販する農家の売り上げは伸びていない。米農家は「来年の買い取り価格はどこまで下がるのか」を心配している。

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■「ふるさと納税」コメの注文が激減

 価格が上がりすぎた新米をめぐり、異変が米農家を直撃している。

「昨年は、『ふるさと納税』での米の販売が好評で、注文をさばくのが大変なほどでした。今年は10月中旬から受注を開始したサイトは、注文が激減しています」

 そう話すのは、日本有数の米どころ、新潟県南魚沼市で20ヘクタールの水田を営む「フエキ農園」取締役・笛木こずえさんだ。笛木さんによると、同業者も似たような状況だという。

 フエキ農園は長年、赤字経営だったが、昨年度から単年度決算で黒字に転じたばかりだった。

「昨年は米が品薄だったから、お客さんには『多少高くても米を入手したい』という切迫感があったのでしょう。今年は米不足感がないですから、高すぎる米は売れない。在庫の米を来年の端境期までに売り切れるのか。本当に心配です」(笛木さん)

■売れ残った5キロ1万円超の特別栽培米

 市場原理と、消費者のニーズの実情が乖離しすぎたのだろう。

 笛木さんの目に焼きついている光景がある。10月下旬、関越自動車道のサービスエリアで売られていた米が、5キロ1万1500円だったのだ。

「いくら新潟県産コシヒカリの特別栽培米だといっても、こんな価格で買う人がいるのか。そう思って、袋をよく見たら、精米日から1カ月ちかくも経っていた。欲を出しすぎて高値をつけすぎて、売れ残っていたのかもしれません」(同)

■来年の買い取り価格は下がる

 今年5月の時点で、米価は高騰せざるを得ない状況に陥っていた。笛木さんの地域の農協(JA)の理事が、農家からの米の買い取り価格について、「今年は3万円より下はない」と言っていたからだ。

 今年の米の買い取り価格は60キロ3万7000円。昨年の価格は2万1000円。

「来年の買い取り価格はきっと下がるでしょう」(同)

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■下げ幅の見当がつかない

 ただ、「まったく読めない」というのは、その下げ幅だ。

「1万円くらいですむのか、それ以上になるのか、見当もつきません」(同)

 以前のように採算ギリギリの状態に戻るのか。あるいは大暴落してしまえば、目も当てられない。懸念から、農業機械の購入については「とても慎重」(同)だという。

「最近、コンバインとバックホー(油圧ショベル)を購入しましたが、2台ともキャッシュで購入できる価格帯の中古品で、機械に詳しい知人に修理してもらったり、自分たちで整備して使っています」(同)

 米農家は価格の振れ幅を冷静にとらえているようだ。米が値上がりし、高齢の農家がリタイアを踏みとどまるとも思ったが、実際はそうでもないという。

「農業機械が故障したタイミングで米作りをやめています。今年、もうかったからといって、新品の農機具を買うのはリスクが大きすぎる。こんな価格が続くとは誰も思っていません」(同)

 これまで苦しい経営が続いてきた米農家が多いだけに、米の高騰は利益をもたらした半面、その反動で米離れが起きつつあるのではないか。心配のタネは尽きないようだ。

■仮払金返納を求められる可能性

 今年度産の米が売れず、JAなどの集荷業者と卸売業者との取引価格が下落すれば、農家にどんな影響があるのか。

 農業経営学が専門の宮城大学・大泉一貫名誉教授は、農家はJAから米を出荷して受け取った「仮払金の一部を返納するように求められることもありうる」と指摘する。

 JAが卸売業者に販売する米の価格が上昇すれば、農家は追加払いを受けることは珍しくない。前出の笛木さんの地元のJAは昨年、農家に60キロ2万円の仮払金を渡したが、米価の上昇にともない、追加で1000円を支払った。

 しかし、米価が下がれば、農家はそのぶんの返納を求められるかもしれないというのだ。支払われた金額の一部を後になって「返せ」とは、農家には打撃だろう。

「もし実行したら、JAは農家の信頼をますます失うことになる。JAに米を出荷する農家はさらに減るでしょう」(大泉名誉教授)

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 1942年から95年まで続いた食糧管理制度のもとでは、JAは米の全量を集荷していた。だが、同制度が廃止され、米の流通が自由化されると、JAの集荷率は下がり、「昨年産米は28%まで低下した」(同)

■年明けから値下げに踏み切る

 いま、JAをはじめとする米の集荷業者は、卸売業者に対する販売価格を、いつ値下げして損切りをするか、思案しているはずだという。

「来春の決算期に向けて、年明けから値下げに踏み切るのではないでしょうか」(同)

 卸売業者への販売価格が下がれば、小売価格にも反映されるはずだ。農林水産省によると、11月10~16日に販売された米の平均価格は5キロ4260円だった。

■農水相が米価の下落を阻止か

「来年になれば、4000円前後くらいになる可能性もあります」(同)

 米の価格は「暴落する」という見立てもあるが、大泉名誉教授が予測する下げ幅は小さい。なぜなのか。

 要因の一つとして指摘するのが、鈴木憲和農水相による事実上の「減産」発言だ。

「米は『需要に応じた生産が原理原則』と繰り返し述べ、減産を印象づけた。そのうえで、『価格は市場にゆだねる』という。当然、米価の下落にはブレーキがかかるでしょう」(同)

 つまり、鈴木農水相の発言は、米価の下落を食い止めるためのパフォーマンスと見ることもできるわけだ。

■鈴木農水相は農協の代弁者か

「価格高騰により、消費者の米離れも聞こえてくるなかで、残念ながら、鈴木農水相からは『米価は今のままでいい』というメッセージしか聞こえてきません」(同)

 では、農家に寄り添っているのかというと、米価が下落に転じた際の対策や、農家への所得補償については、言及しない。

「つまり、鈴木農水相は消費者にも米農家にも目を向けていない。農協の代弁者にしか見えないのです」(同)

 鈴木農水相は、10月22日の就任会見で、「コロコロ方針が変わっては、生産現場のみなさんは対応することができない」と述べたが、農政はいったい誰のために行われているのか。消費者や生産者の疑問は膨らんでいる。

(AERA編集部・米倉昭仁)

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