【疑惑】万博でも走った「EVバス」でトラブル相次ぐ「ハンドルが利かない」「いきなりモーター停止…」販売会社関係者は「品質を軽視」政府の後押しで拡大も安全性に懸念

 大阪・関西万博でも運行された電気で走る「EVバス」。“環境にやさしい乗り物”として、全国で導入が始まっていますが、2025年はEVバスのトラブルが相次ぎました。取材で見えてきたのは、販売会社の「安全性の軽視」が疑われる実態でした。

■運転手「ハンドル左なのに右へ」スクールバスが信号で突然停止…相次ぐトラブル

事故を起こしたEVバスのドライブレコーダー(関係者提供) ©ytv

 運転手がハンドルを左に切っているのに、バスは右に進み、中央分離帯に衝突―。

 これは2025年9月、大阪市福島区で単独事故を起こしたEVバスのドライブレコーダーに映っていた事故当時の状況です。回送中だったため乗客はおらず、ケガ人はいませんでしたが、一歩間違えば大惨事につながりかねない事故でした。

 この運転手は、バスを所有する大阪メトロの調査に対し、「衝突直前、ハンドルを左に切ったが、右に流れていくような感覚があり、車体をコントロールできなかった」と話したということです。

運行停止で車庫に置かれた大阪メトロのEVバス 今月2日 大阪市内 ©ytv

 大阪メトロによりますと、事故の原因はいまだわかっておらず、214台あるEVバスの約9割の運行が停止され、営業所の車庫などに“眠ったまま”となっています。

 大阪府も、11月から南河内地域でEV自動運転バスの実証実験を行う予定でしたが、吉村洋文知事は「(バスの)不具合・安全性というのがあって、その確認が完了するまでは(実験を)進めない。確認している最中ですから、まずは安全対策を第一に進めていきたいと思います」と話しています。

 EVバスを巡るトラブルは、全国各地で起きていました。

福岡県筑後市が導入したEVスクールバス ©ytv

 福岡県筑後市にある小学校では4月、EVバス4台を「スクールバス」として導入。しかし直後から車両トラブルが相次ぎました。

スクールバスの運転手 ©ytv

 スクールバスの運転手

「カーブでハンドルが切れなかったのには正直びっくりしました。あとは信号でモーターが停止したり、ブレーキの利きが悪かったりとか。(勝手に)ハンドルがいきなり回ることもありました」

 子どもたちの命を預かるスクールバスで起きた危険なトラブル。筑後市は導入してからわずか2週間で、EVバスの使用中止を決めました。 

■バス販売会社関係者「1に補助金、2に補助金」「品質を軽視していると感じる」 補助金など政府の後押し受け全国で導入

トラブルを起こしたバスはすべてEVMJが販売したバスだった ©ytv

 万博会場内を走ったバスに、大阪市内で事故を起こしたバス、 そして筑後市のスクールバス。

 これら3つのEVバスはすべて、福岡県北九州市に本社を置く「EVモーターズ・ジャパン(EVMJ)」という日本企業が販売したバスでした。

 EVMJは6年前に設立されたばかりですが、“環境にやさしいバス”として、国や自治体の手厚い補助金を背景に急速に販売を拡大。補助金で本来の3分の1ほどの価格で購入できるといいます。

 この会社で何が起きているのか。今回、会社の関係者が読売テレビの取材に応じ、驚きの内情を語りました。

EVMJの関係者 ©ytv

 EVMJの関係者

「補助金に間に合わせるために、品質管理はそれなりにという形で、『1に補助金、2に補助金』と社内では揶揄されているぐらい補助金を大切にするような形でやっておりました。正直に申し上げると、車の品質が悪すぎてちょっと手に負えないなというところですね。品質っていうものを軽視しているなという風には感じています」

■トラブル相次ぐEVバスは実は中国メーカー製 専門家「見たことないメーカー」リコール内容は「初歩的かつ重大な欠陥」

 相次ぐトラブルを受け、国土交通省は9月、EVMJに対し、全車両の点検を指示。11月28日には、EVMJのEVバス85台が、設計ミスでブレーキが利かなくなる恐れがあるとして、リコールも発表されました。このうち35台は実際に万博で使われていたバスでした。

 自動車ジャーナリストの佐藤耕一さんは「今回のリコールの内容は、本当に信じられないくらい初歩的、かつ重大な欠陥と言わざるを得ない」と指摘します。

EVMJは中国メーカーに製造を委託 ©ytv

 取材を進めていくと、実はEVMJのバスは「Wisdom Motor」など複数の中国メーカーに製造を委託していることがわかりました。「Wisdom」はEVMJと同じく6年前にできた新興メーカーですが、佐藤さんはこのメーカーについてー。

 自動車ジャーナリストの佐藤耕一さん

「私もここ数年、毎年中国に取材に行っていますし、そこでも見たこともないメーカーで。今回の事故で初めて知ったくらいのメーカーですね」

■記者が会社を直撃…会社側「お客様の安全と信頼を最優先にと事業を進めてまいりましたが…」

EVMJ本社 福岡・北九州市 ©ytv

 新興の中国メーカーに製造を委託して「安全性」は本当に担保されていたのでしょうか。直接確かめるべく取材班は12月19日、福岡県にある本社に向かいました。本社の駐車場には筑後市が返品したスクールバスとみられる車両や大阪・関西万博のロゴがあしらわれたバスが留め置かれていました。

 相次ぐトラブルに関する会社の認識について、記者が取材を申し込むと、「正確を期すため、すべて文書で回答する」とし、その後、以下の回答が返ってきました。

 (EVMJの回答)

「弊社といたしましては、お客様の安全と信頼を最優先にと事業を進めてまいりましたが、その信頼に傷をつけてしまったことを真摯に受け止めています。製造委託メーカーに要求する主たる条件は、日本の保安基準及び日本仕様に対応できるかどうかです。日本の厳しい基準に照らすと、(中国)メーカーのこれまでの知見にはない事項もありますが、メーカーが弊社からの要求に応えようしているのは事実です。今後の再発防止策の実施により、メーカーの管理監督をさらに強化し信頼回復に努めてまいる所存です」

 一方、専門家は今回のトラブルの原因は「会社の姿勢」にあると指摘します。

 自動車ジャーナリストの佐藤耕一さん

「一番優先しなければいけないのは『安全性』であるべきであって、経験のないであろうメーカーに委託したことが、ひとつの大きな要因になっていることは間違いないと思いますね」

 政府の後押しを受けて、導入が進む「EVバス」。時代の先端を走っていても、何より大切な「安全」がないがしろにされることはあってはなりません。