進む大汐線改修、臨海部貫く羽田空港アクセス線の現況は? 美しい橋梁も【2025全区間 徹底探訪・後編】

天王洲アイル付近で首都高速と東京モノレールと交差する羽田空港アクセス線

JR東日本が進める、都心と羽田空港を結ぶ「羽田空港アクセス線 (仮称)」計画。詳細発表後の2023年4月と2024年12月に、休止線である東海道本線・貨物支線の大汐線を含め同計画全区間を【徹底探訪】してから早1年が経過しました。工事の本格着工から3年が経過し、前年との比較も含めて「羽田空港アクセス線(仮称)」全区間の沿線を再度訪れ、現況を“前編”と“後編(こちら)”に分けて徹底レポートします。

*撮影は全て公共エリアから。私有地や私道からの撮影は行っていません。

【前編の記事:超広大な車両基地誕生か?「東京駅〜羽田空港を18分で結ぶ」羽田空港アクセス線の現況!【2025全区間 徹底探訪・前編】】

前回2024年の探訪記事

「【2024全区間 徹底探訪・前編】いよいよ線路敷設がスタート!都心と18分で結ぶ羽田空港アクセス線の現況は?気になる大汐線跡も」

「【2024全区間 徹底探訪・後編】羽田空港アクセス線の現況は?臨海部の美しい橋梁を貫く大汐線や高輪築堤など」

前々回2023年の探訪記事

「【2023徹底探訪】まるで廃線跡… 25年都心に眠る大汐線のイマ、羽田空港アクセス線」

■ 橋梁が魅力的な臨海部周辺(大汐線改修区間)の様子

「羽田空港アクセス線(仮称)」は、東京貨物ターミナル駅構内を出て都心方面へ進みます。天王洲アイル駅付近、京浜運河と天王洲南運河が交差する場所にある若潮橋を渡る手前で、東海道新幹線回送線と完全に並走する形に。ここからはお互い複線の線路4本すべてが高架線で、臨海部を貫きます。若潮橋は美しいトラス橋(三角形で負荷を分散させる)の構造。東海道新幹線回送線は、橋梁や架線柱などが塗装されて綺麗な状態であるのに対し、大汐線のものは錆が目立つ状況です。羽田空港新駅(仮称)と新橋駅の間に途中駅は設けられない計画ですが、天王洲アイルの沿線自治体では新駅設置に向けた誘致活動も行われています。

天王洲アイル駅近く、品川南ふ頭公園から眺める

©レイルラボ ニュース

高架線は港南大橋の手前で大きくカーブを描き、京浜運河を渡り港南地区に至ります。京浜運河を渡る高架線でもトラス橋の構造が採用されており、圧巻の美しさを魅せてくれます。昨年は架線柱の一部のみが残された状態でしたが、老朽化した設備の更新が進み、架線柱を繋ぐビームが新品のもの(仮設かは不明)へ変更されているのが確認できました。

港南大橋手前で高架線はカーブを描く (手前が大汐線、奥が東海道新幹線回送線)

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架線柱を繋ぐビームが交換されている様子 京浜運河を渡る大汐線のトラス橋 (手前が大汐線、奥が東海道新幹線回送線)

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京浜運河を渡る大汐線を港南大橋から眺める (手前が大汐線、奥が東海道新幹線回送線)

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港南地区に入ると、大汐線最大の見どころともいえる“アーチ橋”との立体交差があります。品川駅や高輪ゲートウェイ駅にも近いこの場所では、首都高速1号羽田線・都道316号線(海岸通り)・東京モノレールの“上”を行く大汐線を見ることができ、都心の大動脈その“上”にあるアーチ橋の光景は、まさに圧巻です。このすぐ先にある、特徴的なヨット型が特徴の浜路橋手前では再びトラス橋が出現。大汐線の高架は、浜路橋と交差するように高浜運河を渡ります。

首都高速や東京モノレールの上を行くアーチ橋

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浜路橋手前のトラス橋 手前が大汐線

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浜路橋交差点では頭上に大汐線(右側)を見ることができます

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高浜運河を渡り、高浜橋のあたりで再びトラス橋が姿を見せます。これまで並走していた東海道新幹線回送線とも、少し高さにズレが生じはじめ、大汐線が少し低い位置取りに。高浜橋のあたりにあるトラス橋も、大汐線のみとなるなど変化がみられるエリアです。このあたりでは地上から見える限り、昨年から特に大きな進捗は見られませんでした。高浜西運河に架かる芝浦橋の直上「芝浦併用ガード」を過ぎると、東海道線との合流地点はすぐそこに迫ります。このあたりで、東海道新幹線の本線(2本)と回送線(2本)を地下で交差した「羽田空港アクセス線(仮称)」が合流し、地下と高架間の勾配を走ります。

高浜橋から見た大汐線の高架

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芝浦橋(芝浦併用ガード)から見た大汐線の高架 奥には高浜橋のトラス橋

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芝浦橋(芝浦併用ガード)の標記

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■ いよいよ都心の心臓部 東海道線接続区間周辺の様子

田町駅手前・札の辻周辺では、東海道新幹線の本線(2本)と回送線(2本)の計4本を地下で交差する短絡線の開口部工事が行われている様子を見ることができました。かつての大汐線は、汐留(浜松町)から単線で来た線路が高架橋へ登りはじめる地点で複線となっていたため、このあたりにちょうど分岐点が設けられていました。

札の辻橋から見た合流部分 左側プレハブ周辺が大汐線用地

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大汐線は一番海側に線路があり、山側を走るJR東日本の在来線(東海道線)と接続させるためには、東海道新幹線の線路を跨ぐ必要があります。そのため田町駅周辺では、山手線・京浜東北線・東海道線(上野東京ライン)・東海道新幹線という、いわば都心の心臓部といえる路線に影響を与えないように短絡線(トンネル工事)が慎重に進められています。ただでさえ過密な東京の線路網に、新たに1本線路を増設するスペースは無さそうにも思えますが、幸いにも田町駅の浜松町方には山手線の留置線が1本あり、これを廃止することでトンネル出入口となる1本分のスペースを確保します。具体的には、山手線の留置線があった場所に山手線外回り、順繰りに京浜東北線南行、東海道線上りを移設して、東海道線下りとの間に線路1本分のスペースを生み出すものです。スペースの制約もあり、この短絡線が「羽田空港アクセス線(仮称)」で唯一の単線区間になります。

東海道線接続部 田町駅周辺工事の概要

©JR東日本

この工事を行うため、JR東日本は2025年4月19日〜20日にかけて、田町駅〜浜松町駅間で線路切替工事を実施。東海道本線と「羽田空港アクセス線 (仮称)」へ繋がる“旧・大汐線”との接続ポイントを整備するための、工期全体で見ても非常に重要なステップでした。東海道上下線への渡り線と、臨海部方面(旧・大汐線)に向かう、東海道新幹線とクロスするためのトンネル出入口が設置されます。

2025年4月に行われた田町駅〜浜松町駅間での線路切替工事の様子

©レイルラボ ニュース

2025年4月に行われた田町駅〜浜松町駅間での線路切替工事の様子

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同短絡線の線路縦断線形ですが、実は2024年に計画が見直されました。浜松町駅〜田町駅間で分岐し、短絡線トンネルの勾配が始まる計画でしたが、工事着手前の試掘で同エリアに歴史的な遺構を発見。これが、明治時代・産業革命の象徴でもある「高輪築堤」の石積であることが確認されました。当初の計画通りだと約160mがこの「高輪築堤」と干渉するため、保存の観点から約100mを品川方に移し、発見された石積は現状のまま(埋め戻し)とすることが決まりました。これにより約60mのみが支障範囲になるものの、工事への影響を最小限に抑えた形です。さらにこの過程で、支障範囲外の「雑魚場架道橋」の橋台に鉄道開業時の“第5橋梁(鉄道開業駅である新橋駅から数えて5番目の橋梁)”の橋台が残存している可能性と、田町駅付近に江戸時代後期に構築された“薩摩台場(薩摩藩蔵屋敷の東側、つまり海側に築造された砲台)”の上に位置している可能性が高いことなど、歴史的な遺構調査の進展がみられました。

「高輪築堤」 明治初期には海に浮かぶこの石積の上を汽車が走っていました

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羽田空港から来た電車は、田町駅手前・札の辻周辺と、田町駅の浜松町方(雑魚場架道橋)との間にあるトンネルを出ると、東海道線の上り線に合流し新橋駅・東京駅を目指します。線形として、新橋駅・東京駅方面からの下り線(羽田空港行き)も、この単線トンネルへ合流します。全体の工事区間としてはここまでで、これにて「羽田空港アクセス線(仮称)」全区間徹底探訪の終点に到着です。

■ 大汐線終端の様子

「羽田空港アクセス線(仮称)」全区間徹底探訪としては田町駅を出たところで終了ですが、大汐線は浜松町駅まで線路が敷かれていました。工事が本格化する2023年初頭ごろまでは、浜松町駅の真横まで単線の線路が敷かれたままの姿を見ることができ、「雑魚場架道橋」には大汐線の単線専用橋梁も設置されていました。現在、この区間の線路はすべて剥がされ、再開発に向けた別の工事が進行中。それが、JR東日本や世界貿易センタービルディングなどが進める「浜松町駅西口開発計画・芝浦プロジェクト」で、これに合わせて東側でも旧芝離宮恩賜庭園に隣接する歩行者専用道路を整備します。この歩行者空間がまさに大汐線の線路が敷かれていた場所であり、かつカートレイン乗降場跡地です。

田町駅〜浜松町駅間の大汐線・線路跡(左端)と雑魚場架道橋(中央下) 【2023年4月撮影】

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大汐線およびカートレイン乗降場跡地に先行整備された歩行者空間(左側)

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■ まとめ

「羽田空港アクセス線(仮称)」“東山手ルート”の運行形態など詳細について明らかになっていませんが、“上野東京ライン”のルートで新橋駅、東京駅と羽田空港を結び、宇都宮線・高崎線・常磐線方面への直通運転も計画されているとみられます。東京駅では東北新幹線・上越新幹線・北陸新幹線からの乗り換えで、これら沿線地域から空港アクセスの利便性が飛躍的に高まることも期待されます。渋谷・新宿・池袋方面への“西山手ルート”と、新木場方面・京葉線方面への“臨海部ルート”の、JRとして強みを活かす計画や、私鉄線との相互乗り入れなど多方面との直通運転計画に期待を膨らませつつ、2031年度の“東山手ルート”開業を心待ちにしたいと思います。また、空港アクセス面でも国際競争力を強化することで、既存の京急空港線や東京モノレール、リムジンバスに加えた新たなアクセス手段の整備により、安定的な輸送力を確保することができます。利便性もさることながら、橋梁が美しい東海道新幹線の回送列車と並走する臨海部の高架線や、貨物列車の一大拠点を車窓から眺められる点など、鉄道ファンにとっても楽しみです。

「羽田空港アクセス線(仮称)」の発着駅となる東京駅(東海道線ホーム)

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【前編の記事:超広大な車両基地誕生か?「東京駅〜羽田空港を18分で結ぶ」羽田空港アクセス線の現況!【2025全区間 徹底探訪・前編】】

いずれ「羽田空港アクセス線(仮称)」を走行するかもしれない常磐快速線

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