適地減る太陽光、それなら屋根を使おう!「わが家は発電所」 自治体の義務化追い風に、導入目標は2030年新築6割【脱炭素 深掘り】

屋根に太陽光パネルを備えた住宅=2022年1月、さいたま市緑区

 日本の再生可能エネルギー拡大を支えてきたのは、太陽光発電だ。適地は減りつつある。特に問題となっているのが、メガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電所だ。生態系への影響や景観悪化、土砂崩れなど災害リスクが高まることへの懸念から住民とトラブルになる場合がある。

 政府は環境破壊につながる開発に歯止めをかけようと、メガソーラーの規制を強化する。一方で、深刻化する気候変動の悪影響に対応するには再生可能エネルギーの拡大は欠かせない。

 そこで関心が高まっているのが住宅の屋根。政府は2030年に新築一戸建て住宅の6割への導入を目指す。2022年は3割にとどまったが、設置義務化に乗り出す自治体も出始めた。専門家によると、初期費用ゼロで太陽光パネルなどが設置できるお勧めの仕組みもあるという。(共同通信=石川恒太)

▽モデルは東京都と川崎市

 2022年12月、東京都で全国初となる注目の条例が成立した。新築一戸建て住宅に太陽光パネルの設置を義務化するというもの。小池百合子知事はこう強調する。「わが家は発電所。東京の屋根には大きなポテンシャルがある」

 小池氏は環境分野の取り組みに力を入れており、都の幹部は「設置義務化は知事の肝いり政策だ」と説明する。制度は2025年4月、川崎市と同時に始まった。

 シンクタンク「自然エネルギー財団」(東京)によると、仙台市や千葉県松戸市、相模原市でも新築一戸建てを対象とした条例化の動きがある。仙台市や相模原市は2027年度、松戸市は2028年度の施行を目指している。

 財団の塚本悠平研究員は現状をこう分析する。「この3つの自治体は東京都と川崎市をモデルにしながら条例の素案を作っている。条例化の動きは全国にじわじわと広がっている」。群馬県や京都府、京都市は既に大規模な建物で設置を義務化しているが、一戸建て住宅は対象外だ。

沖縄県・宮古島の住宅の屋根に設置された太陽光パネル=2024年10月18日

▽非常用電源にも

 屋根での発電はどのような仕組みなのか。住宅や車庫の屋根に設けた太陽光パネルで発電した電気は、まず照明やエアコンなど自宅で消費され、余った電気は電力会社に売ることで収入となる。災害などによる停電時のメリットは大きい。日中は電力が得られ、蓄電池や電気自動車(EV)にためておけば、非常用電源として活用できる。

 さらに大規模な土地開発が必要となるメガソーラーとは違い、住宅の屋根を用いるため、新たな土地開発はほとんどなく、環境破壊の懸念は少ない。

 石炭や天然ガスなど化石燃料に由来する電気と異なり、発電時に温室効果ガスを排出しない。豪雨や猛暑などへの危機感や不安が高まる中、気候変動対策としても貢献できる。

▽8年で回収可能

 住宅での太陽光発電は1990年代に始まり、2012年に固定価格買い取り制度(FIT)がスタートしたのを機に拡大した。太陽光発電協会(東京)によると、2001年の住宅用(出力10キロワット未満)の導入件数は全国で7万7000件。2022年は累計で316万件となったが、近年は新規の導入件数が伸び悩んでいる。

 主な理由は全国の新築住宅の4分の3を担っている工務店での対応が進んでいないためだ。大手住宅メーカーと比べると、初期費用の高さや手続きの煩雑さが負担となっている。低コストで家造りを請け負う傾向がある工務店は、太陽光導入よりも家主の関心が高い内装などの設備に費用をかける場合が多いという。

 東京都によると、都内で出力4キロワットの太陽光パネルを設置する場合、2023年時点の見積もりで初期費用は約115万円になる。ただし、電気代が節約される分や都の補助金を活用することで、約8年で初期投資した分を回収できるとする。

自然エネルギー財団の塚本悠平研究員(同財団提供)

▽屋根を貸す

 そこで自然エネルギー財団の塚本さんが薦めるのが「オンサイトPPA(電気購入契約)」と呼ばれる仕組み。初期費用ゼロで太陽光パネルや蓄電池を設置できる。住民は使った電気料金だけをこの仕組みの運営会社に支払う。余った電気は運営会社が大手電力会社に売電してくれる。設置やメンテナンスの費用も運営会社が負担するので、住民はパネルを置くために“屋根を貸す”感覚に近い。

 塚本さんは、工務店の多くはオンサイトPPAなど屋根置き太陽光発電の導入を支援する仕組みを熟知していない可能性があると指摘する。その上で「国や自治体はこうした仕組みの利点を、分かりやすく周知する必要がある」とする。

 さらに住宅と比べて設置が進んでこなかったのが工場や倉庫、学校など屋根の面積が大きい建物だ。塚本さんが今後の展望を語る。「自治体の設置義務化が進むことで設置が遅れていた、こうした建物への導入が活発化する可能性がある」

▽拡大へのブレーキ

 気がかりなのは、太陽光パネルのリサイクルや廃棄の制度づくりが遅れていること。パネルの寿命は20~30年とされ、2030年代後半に廃棄量が急増すると見込まれている。

 環境省と経済産業省はパネルの製造業者らにリサイクルを義務付ける制度を検討したが、2025年の通常国会への法案提出は見送った。現在、自動車や家電のリサイクル費用は消費者が負担しており、こうした製品と整合性がとれないのが理由だという。

 政府が再生可能エネルギーの主力電源化を進めるのであれば、廃棄を含めた制度の構築は不可欠となる。このままでは屋根置きを含め太陽光発電拡大へのブレーキとなる懸念があり、対応が急がれる。

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 私たちの暮らしを支える電力や燃料などエネルギーの在り方が大きく変わろうとしている。政府の新たなエネルギー基本計画では再生可能エネルギーを将来の最大電源とし、原発も活用する方針が明記された。化石燃料から再生可能エネルギーへ。脱炭素の現在地と真価を、シリーズで追う。