スズキの5ドア「ジムニー・ノマド」、4日で受注停止の人気爆発モデルの実力は? 後部座席に座ってわかった「シエラ」との差【試乗記】

ジムニー・ノマドFC/価格:4AT 275万円。 発表直後に5万台のオーダーが殺到したノマドは、ようやく納車が本格化。街で見かける機会が増えてきた Photo by Atsushi Harada
ジムニーノマドと
ジムニーシエラとの違い
2018年に登場した現行ジムニーは、あまりの人気ゆえ納車の遅れがたびたび話題になってきた。そのお騒がせぶりは歴代初の5ドア仕様のジムニーノマド(以下ノマド)も同様だ。2025年1月30日に発売されるや注文が殺到し、あっという間に5万台に達した。そしてわずか4日で受注停止となったのだ。5ドアのジムニーは、まさにユーザーが待ち望んでいたモデルだった。
ノマドはスズキのインド工場が生産する輸入車。メーカーは4月からスタートした納車迅速化のため、7月には日本向け生産台数を月間3300台に拡大。納車体制の立て直しを図った。今回の試乗車は、ナンバーが付いたばかりの個人車両である。
おさらいしておくと、ノマドはジムニーシエラ(以下シエラ)からホイールベースと全長を340mm延長してリアドアを追加したモデル。上級のFCのモノグレードで、価格は4速ATが275万円、5速MTは265万1000円。シエラJC比で26万~36万円ほど高い。
後席の居住性はシエラとは別物。後席着座点は後方に50mm、上方に20mm移動し、左右席間距離も90mm拡大。そしてクッション厚も増して快適性がグッと高まっている。ただし、乗車定員は5名ではなくシエラと同じ4名のままだ。
スペアタイヤを配した横開き式テールゲートを開けると広がる荷室の様子もシエラとは違う。4名乗車時の荷室長はシエラ比で350mm伸びて590mmとなり、2名乗車時には1240mmまで拡大する。荷室幅は1210mm、荷室高は960mmだ。格別に広いとはいえないまでも、シエラと比べると日常ユースはもちろん、アウトドアに繰り出す際にも便利な使い勝手を実現している。

ボディカラーは写真のアークティックホワイトパール(op2万5000円)が一番人気という

インパネはジムニー・シリーズ共通デザイン。室内幅はKカー規格と同様の1275mm。助手席が近い。造形はオフロードでも車両姿勢を把握しやすい水平基調。標準はオーディオレス仕様。先日ジムニー&シエラに新設定されたメーカーopディスプレイオーディオは選べない。

大型形状のシートは座り心地良好。後席は3ドア比で着座位置を50mm後方に移動しシート幅も90mm拡大。ヒップポイントも20mm高い。クッションは分厚くリクライニングも可能

ジムニー・ノマドFCリアシート

後席使用時の荷室長は590mm。シートバックを倒すと最大1240mmに拡大。リアゲートは横開き式

ジムニー・ノマドFC荷室
スペースの余裕とともに各部の洗練が印象的
本格ヨンクながらフレンドリーさも十分
ノマドは、街で目立つ存在だ。小柄だが周囲の視線を集める。とはいえ、運転席に座ったときの景色はジムニーそのもの。眼前には切り立ったウィンドウとインパネがあり、シフト回りにはスティック式のパーキングブレーキと副変速機が配されている。夜間はこのあたりに照明がないのが少々残念だが、社外品で対策できる。
室内は適度な広さ。シエラは運転席から振り返ると、リアシートとテールゲートがあまりに近くて驚くが、ノマドは常識的な距離感がある。もっとも、助手席は近いままだが。
走り始める。シエラとはだいぶ雰囲気が違っていた。ひと言でいうと上質である。まず乗り心地がいい。
ホイールベースが340mmも長いから、違うだろうとは思っていたが、やはり振動の仕方や受け止め方が断然、快適志向になっている。現行型ジムニーは、歴代モデルの中で最も洗練されているとはいえ、シエラでも、“道路はこんなにデコボコしていたのか”と再認識させられた。対してノマドは路面の不整を感じない。普通のクロスオーバーSUVに近いしっとりとしたフィーリングが印象的だ。これはホイールベースが伸びたことと、クルマ自体が進化していることの相乗効果に違いない。ノマドは、本格ヨンクという構えなしに、普通の感覚で乗れる。
高速巡行も快適だった。100km/hクルージングでもエンジン回転数が3000rpmに達してしまうのは少し興醒めだが、ピッチングはあまりなく、意外とフラット感のある走りが楽しめた。視線のブレも小さい。
市街地や駐車時には重さを感じたステアリングは高速道路では具合がいい。首都高速のタイトなコーナーでも切りすぎないので姿勢をグラッと乱すことがない。
1.5Lエンジン(102ps/100Nm)が生むパフォーマンスもなかなかだった。シエラより車重が100kgほど増え1190kg(AT)になっているので加速の鈍さを心配したが、走り出しは意外としっかりスピードが伸びる。4速ATは、3速のギア比が少し離れていて早めに4速に入る設定。走るとやはりATが4速というのは惜しいと感じる。エンジンパワーをフルに引き出しているとは言い難い。せめてもう1速あると違うだろう。どうにも加速力を物足りなく感じたときにはオーバードライブをオフにするとベターだ。
ノマドは、後席と荷室を
広げただけの5ドアではなかった
後席にも乗ってみた。やはりシエラとは居住性が段違いだった。着座点は前席よりもだいぶ高めで、前方の視界はワイド。しかも平均+αのパッセンジャーが座っても頭上にコブシひとつ分の余裕がある。ひざ前のスペース、ヒール段差も十分だ。
乗り心地はリジッドアクスルゆえ、それなりの振動と、大入力時には突き上げ系の動きが見受けられる。とはいえ、この点も想像以上に洗練されていた。クッションの厚いシートの効果も大きい。
先進運転支援装備はあまり充実しておらず、いまどきACCが40km/h以上でないと機能しないのはいただけない。ただし、つい最近、日本で生産されるジムニーとシエラに関しては、このあたりが時代の平均に追いついた。ぜひインド生産のノマドにも最新タイプが採用されるよう願う。
ノマドは、後席と荷室を広げただけの5ドアではなかった。すべてにわたって上質さが与えられていた点が印象的だった。後席にゲストを迎える機会が多いユーザーでも十分に満足できる完成度の持ち主である。納車を心待ちにしている人には、期待を裏切らない価値ある1台と伝えたい。
(CAR and DRIVER編集部 報告/岡本幸一郎 写真/原田 淳)

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