アップル「M5 Max搭載MacBook Pro」と「M5 Air」レビュー。AI時代の「ローカルLLM処理」テストで分かった圧倒的な差

M5 Pro/Maxが搭載されたMacBook Proが3月11日に発売する。
MacにしろPCにしろ、プロセッサーの性能は毎年向上するものだ。アップルの「M5」シリーズにも上位版の「Pro」「Max」が登場し、より高性能なMacBook Proへと買い替えを考えていた人々にとっては「ようやくのチャンス」と言えるかもしれない。
他方で、過去のハイエンド用プロセッサーに比べ、今回の「M5 Pro」「M5 Max」は少し位置づけが異なる。
グラフィックスや一般的な性能ももちろんだが、特に「オンデバイスAI性能」が上がっているのがポイントだ。
- MacBook Air……13インチ・M5搭載モデル、メインメモリー16GB
- MacBook Pro……14インチ・M5 Max搭載モデル、メインメモリー128GB
上記機種のレビュー機材を使い、「デバイスの中でAIを使うことが見えてきた時代」のMacのあり方を確認してみた。
外観に変化なし。ストレージは一気に「倍増」
先に外観や仕様の話をしておこう。
今回のモデルでは、搭載インターフェースからカメラ、本体色に至るまで、MacBook Air/Proともに変化はない。

MacBook Air(13インチ・M5搭載モデル、メインメモリー16GB)。

MacBook Pro(14インチ・M5 Max搭載モデル、メインメモリー128GB)。
Wi-FiやBluetoothをコントロールするチップは、他社製からアップル開発の「N1」に変わり、Wi-Fi 7とBluetooth 6に対応している。とはいえ、これは「新機種で対応しているとうれしい」ことではあるが、これだけで買い替えを選択するようなものでもない。
あくまで変更はプロセッサーなどにあり、それ以外はこれまでに近い、と考えていい。
大きく変化したのがストレージの考え方だ。
M4版のMacBook Airは256GBから最大2TBだったが、M5版では512GBから最大4TBになった。

M4版とM5版を比較。ストレージ容量は「512GBから」に倍増。
M5 Pro版のMacBook Proは512GBスタートだったものが1TBになり、M5 Max版については1TBスタートが2TBになった(最大容量は4TBで変わらない)。

M4 Max版とM5 Max版の場合、1TBから2TBへとこちらも倍増。
要は、各モデルでもっとも安価な製品のストレージ量が倍増している。これは2つの狙いが考えられる。
1つ目は、低容量機種をラインナップから外し、フラッシュメモリーのチップ利用効率を上げること。
2つ目は、折からのメモリー・ストレージの高騰から値上げは避けられないものの、容量を増やしてしまえば購入者の不満を回避しやすい、ということだろう。
実用性を考えても、ストレージの増加は正しい選択と思える。
M5とM5 Pro/M5 Maxは別物に。構造が大きく変化
大きく変わったのはプロセッサーの方だ。
M5自体は発表済みのM5と変わらない。大きく変化したのはM5 ProとM5 Maxである。

新たに登場した「M5 Pro」「M5 Max」。
従来、「Pro」「Max」系のプロセッサーは、CPUコアとGPUコアを多数搭載した巨大な1つの半導体だった。それが今回から、2つの半導体をつないで1つのプロセッサーとして構成している。
これをアップルは「Fusionアーキテクチャ」と呼んでいる。
プロセッサー内のCPUコアの構成も変化した。
従来、アップルのプロセッサーは高度な処理をする「Performance(高性能)コア」と、消費電力を重視する時に使う「Efficiency(高効率)コア」の組み合わせで構成されていた。
だが今回から、高性能コアは「スーパーコア」という名称に変わる。高効率コアはそのままなのだが、その間に新たに別の「高性能コア」ができる。これはスーパーコアからの派生版で、性能はスーパーコアの方が上。頭文字で言えば、「S」「P」「E」と3種のコアが使われるわけだ。
先ほど述べたように、スーパーコアは過去の高性能コアの名称を変えたもの。だから実は今回から、M5も「高性能コアと高効率コアの組み合わせ」ではなく、「スーパーコアと高効率コアの組み合わせ」に変わった。だが、M5自体が変わったわけではなく、あくまで名称変更だ。
ではM5 ProやM5 Maxはどうか?
M5 Pro/Maxでは、スーパーコアと新しい高性能コアの組み合わせだ。消費電力に特化したコアよりも性能の高い、新・高性能コアとの組み合わせで、全体の性能アップを図っている。
では、性能向上はどのようなものなのだろうか? Geekbench 6のベンチマーク結果で見ていこう。
過去に筆者が確認したベンチマーク結果から主要な機種を抜き出し、MacBook Air(M5搭載)とMacBook Pro(M5 Max搭載)をチェックしてみた。
CPUの結果で見ると、確かにM5 Maxの性能は高い。ここまで性能を上げるのは、チップ構成やCPUコアの見直しなどが必要になってきたということなのだろう。

Geekbench 6でCPU性能を比較した結果。
GPUやAI性能を見ても、価格だけの違いはあると感じる。

Geekbench 6でGPU性能を比較した結果。

Geekbench AIで比較した結果。
オンデバイスAI重視な新型MacBook Pro
ここで重要になってくるのが、高い性能をどんなことに使うのか、という点だ。
これまで同様、CG製作やソフト開発には役立つだろう。他方、最近注目されることが多いのが「AIを使う」ことだ。
一般的なAIサービスはクラウド上で動作するが、その分、利用料がかかる。デバイスの中でAIを動かすことができれば、コストは電気代くらいになる。しかも、通信がつながっていなくても、好きな時に好きなところで使える。
以前より、メモリー128GB搭載のモデルを選ぶ人の中には、デバイスの中でAIを使う「オンデバイスAI」に惹かれて高価なモデルを選ぶ人は多かった。
アップルもその点を強く意識しているようで、ニュースリリースの中でも「AI画像生成」「LLMプロンプト処理」などのオンデバイスAI要素を打ち出すようになっている。

アップルのMacBook Proに関するリリースより抜粋。4つの性能比較のうち3つがAI関連(青い囲みは編集部による加工)。
では、そうした要素はどのくらい価値があり、大容量メモリーモデルはどう違うのだろうか?
今回はオンデバイスAIを使うためのツールである「LM Studio」を使い、グーグルが公開している「Gemma 3」とAlibaba Cloudが公開している「Qwen 3.5」を使い、写真の中に何が映っているかを質問してみることにした。オンデバイスAIのチェックとしてはとても簡単なものだ。
AIでは、賢さは「モデルの性質」に加え、「AIモデルの規模」に依存するところが多い。
小さいモデルは賢さに制限があるが、16GBなどの容量の小さな=一般的なPC/Macでも使える。一方で巨大なモデルは性能が高いものの、利用するには広大かつ高速にアクセスできるメモリー空間が必要になる。
オンデバイスAIの賢さはここまできている
まず、速度を別にして、賢さがどう違うかを見ていこう。
写真はアラブ首長国連邦・ドバイ近郊の砂漠に行った時のもの。ツアーで訪れたが、観光用のラクダがいた。その前で撮影した写真だ。
※編注:4B、27Bなどの数字が大きいほうが、より大規模なオンデバイスAI。数字が大きいほうが賢いケースは多いが、異なるAIモデル間で単純比較はできない

グーグルが公開しているGemma 3での実行例(黄色い囲みは編集部による加工)。
Gemma 3は、4B(40億パラメータ)のモデルでも27B(270億パラメータ)のモデルでも、同じように「インドのサム砂漠で撮影したもの」と判別している。手元のAIでちゃんと判別できるのはすごいが、地域を間違えているのは残念。

Qwen 3.5での実行例(黄色い囲みは編集部による加工)。
Qwen 3.5にすると、9B(90億パラメータ)でも「中東地域で撮影」と正しく判別している。さらに、35B(350億パラメータ)モデルの場合、服装が根拠であることや、ラクダに観光用のサドルがついていることなども言及している。
これらのうち、16GB程度のメモリーでも使えるのはGemma 3の4BとQwen 3.5の9B。それ以上の大きさのモデルは、メモリーがずっと大きなM5 Maxでないと使えない。
M5 Maxがもたらす圧倒的な速度。AIでは劇的な変化
ではスピードはどうか? AIの処理速度を、1秒あたりのトークン処理量(トークン/秒)で表してみた。
今回は筆者が日常使っている、M3 Pro搭載版MacBook Pro(メモリー18GB)と、新機種のM5搭載版MacBook Air(メモリー16GB)、そしてM5 Max搭載版MacBook Pro(メモリー128GB)で比較している。
違いは劇的だ。

LM Studioの実行結果。
そもそも大規模モデルはM5 Maxでないと動かないが、軽量モデルであっても、速度差は圧倒的。多くがGPUを使った演算だが、GPU性能の高さとメモリー量の多さとアクセス速度により、比較できないほどの差が生まれている。
今回使用したM5 Max搭載版MacBook Proは、84万8800円と非常に高価だ。だが、これだけの差があると、この機種を選びたくなる人がいるのもわかる。

今回テストしたM5 Max搭載版MacBook Proは84万8800円と非常に高価。
もちろん、現状のオンデバイスAIはクラウド上の先端AIに比べ性能が劣る。多くの人の場合、ここまでコストをかけてすぐに使えるようにすべきか、という議論はある。
高価なMacにつぎ込む分、クラウドAIの支払いに充てた方がいいと考えることもできる。
だが、Qwen 3.5が小型モデルでもかなり賢くなっている。技術は急速に進化しているので、「オンデバイスAIが性能的に厳しい」という評価も変わってくるかもしれない。
その前段階として、先行して最新のAIモデルを使い、ソフト開発を含む様々な用途を試すには、80万円を超える投資を考える人もいる。
その市場は無視できないものになっていることを、新しいMacBook Proは示している。そしてその流れはいつか、一般的なPC/Macにもやってくる。
編集部より:初出時、「Qwen 3.5」実行例の画像内で、実行したモデルを「Qwen 3.5 4B」としておりましたが、正しくは「Qwen 3.5 9B」です。お詫びして訂正致します。2025年3月10日 12:03