丸亀製麺がクリスマスイブのディナー営業を休み「家族や大切な人との時間」を優先させた理由とは?「目の前のお客様を喜ばせるには、まず従業員が幸せでなければ」

1年に1度の特別な日に、大切な家族や友人たちと温かな時間を過ごしてほしい――。そんな思いから、丸亀製麺は2025年12月24日、全国の店舗でディナー営業を休業しました。お店の運営よりも従業員が家族や仲間と過ごす時間を優先する判断は、どこから生まれたのでしょうか。執行役員でハピカン企画本部長の宇治川智大さんにねらいを聞きました。
■クリスマスイブを、大切な人たちと過ごしてほしい 「初めてイブに家族でチキンを食べられた」という声も
——2025年12月のクリスマスイブに、初めて「丸亀ファミリーナイト」を実施しました。内容ときっかけを教えてください。
一部の店舗を除き、12月24日をランチのみの営業とし、ディナー時間を含む15時半以降を休業としました。クリスマスイブならではの温かい時間を、従業員に過ごしてほしいという思いからです。
じつは、丸亀製麺ではこうした取り組みは初めてではありません。ファミリーナイトの実施に先駆け、2025年7月末にも「丸亀ファミリーホリデー」として1日半の休業を実施しました。さらに、年始である1月1〜2日も多くの店舗で休業にしています。
——思い切った決断ですね。社内ではどんな議論がありましたか。
クリスマスや年末年始、夏休みは飲食業界にとって重要な書き入れ時です。「休業した分の売上はどう達成しようか」という議論はたしかに持ち上がりました。
ただ、私たちは2025年9月から、グループ全体で「心的資本経営」という取り組みを進めています。「従業員の“心”の幸せ」と「お客さまの“心”の感動」をともに重要な資本ととらえ、どちらも満たし続けることで、持続的な事業成長を実現しよう、という新たな経営思想です。
従業員が幸福感(ハピネス)を持って働ける環境が整うことで内発的な動機が育まれ、その力がお客様の感動(カンドウ)体験を生み出し、持続的な成長へとつながる。この循環を「ハピカン繁盛サイクル」と定義しています。
短期的な数字だけを追うのではなく、従業員の幸せを追求することで、「目の前のお客様を喜ばせるには何ができるか?」と一人ひとりが主体的に働くモチベーションを保つことができ、長い目でみると本質的な企業成長の実現につながるはずだと考えています。
——実際に、社員やアルバイトの反応はどうでしたか?
前向きな声が多かったです。「働き始めて以来、初めてクリスマスイブに家族そろってチキンを食べられた」という声や、若い従業員を中心に「みんなでお店に集まってクリスマス会をしました」という声も寄せられました。ありがたいことに、従業員の家族の皆様にも喜んでいただき、お客様やSNSでも「いい取り組みだ」というポジティブな声が多かったのです。
一方、シフトが減ることで収入が減ってしまうのを懸念しているパートスタッフもいましたので、ショッピングモール内の店舗など、自社判断では休業が難しい店舗のシフトに入ってもらうなどの対応をしました。
■働く場所を家族に知ってもらうことで、仕事をより誇りに思えるように
——「家族食堂制度」という取り組みも発表されました。これはどういうものですか。
従業員の15歳以下の子どもを対象にした食事支援制度です。お子さんが丸亀製麺の店舗で利用できるプリペイドカードを会社が支給し、月額最大1万円まで、食事に使えるようにしています。正社員だけでなく、パート・アルバイトも全員対象です。
「今日はちょっとママの職場でお昼を食べようか」「パパの職場に行ってみようか」と店舗に足を運んでもらうことで、家族に仕事や働いている場所への理解を深めてもらう。家族の理解は従業員自身の仕事への誇りにつながる、大切なことだと考えています。
2月中旬に開始し、今後さらに対象となるお子さんを増やしていきたいと思っています。
じつは、丸亀製麺には、親子で働いてくれている店舗スタッフも少なくないのです。ご家族全員で丸亀製麺のファンになってくれたら、こんなに嬉しいことはないですね。

■AI時代だからこそ、人にしかできないことを
——シフト勤務や現場仕事も多い飲食業界で、子育て支援を進める難しさはどんなところにありますか?
店舗責任者が不在になると現場がスムーズに回らなくなるという現実があるため、まだまだサポート体制はこれから整えなければいけない部分も多い。それでも、男性従業員の育休取得率は、昨年ようやく5割弱まで伸びてきました。
また、育児中の従業員に、急な欠勤が発生することもあります。現場には子育て経験者も多く、「私が代わりにシフトに入るよ」「お店で代わりに子どもを見ているから大丈夫」と声をかけ合う文化が根づいていて、助けられています。
——外食業界では機械化も進んでいます。
配膳ロボットやタブレット注文など、外食の現場でも自動化や機械化はこれからますます進んでいくでしょう。背景には、人手不足もあります。ただ、丸亀製麺は「手づくり・できたて」を大切にし、すべての店舗で粉から打ち立ての麺を提供してきました。お客様が来てくださる理由は、便利さだけでなく、そこで生まれる感動体験にあると考えています。
予測できる進化はAIが担っていくこれからの時代、想定を超える感動を生み出す「人の力」を最大化したい。働く人が満たされているから、「想像を超えた気遣い」や「予測できない感動」といったサービスを提供する余白が生まれるのだと思います。そのために、働く人の内発的な動機を何より大切にしたいと考えているのです。
——「丸亀ファミリーナイト」や「家族食堂制度」といった家族向けの施策を通して、どんな会社でありたいと考えていますか?
私たちは、「食の感動で、この星を満たせ。」という理念を掲げています。ただお腹を満たす飲食業ではなくて、感動を生み出す「感動創造業」でありたい。もちろん、まだ行き届いていない部分もたくさんあります。チェーン店ではありますが、最終的には1店舗1店舗、従業員一人ひとりが、それぞれの地域に根ざしてお客様に向き合い、できることを一生懸命積み重ねていく。その土台として、これからもこうした取り組みを続けていきたいと考えています。
(取材/AERA with Kids+編集部 構成/中村茉莉花)

〇丸亀製麺
2000年に「丸亀製麺」1号店を兵庫県加古川市にオープン。讃岐うどんのセルフスタイルを全国に広げ、現在は国内に874店舗、国外13か国に327店舗を展開する外食チェーンへ成長。2016年、株式会社トリドール分割準備会社として設立。親会社である株式会社トリドールは「心的資本経営(Happiness Capital Management)」を経営理念に掲げ、従業員一人ひとりの幸福や成長を企業価値と捉える経営を推進。育児のための時短勤務を子が10歳になるまで利用可能とするなど、育児支援や多様な働き方の支援制度を、長く活躍できる職場づくりの一環として整備している。
本社:東京都渋谷区道玄坂1-21-1 渋谷ソラスタ19階
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