100円台も登場! 過熱するスーパー激安弁当競争 “バグる金銭感覚”、200円台でかつ重も 安さと味を両立?

■「激安弁当は“攻める商品”」, ■段ボール陳列の裏にある“食”への執念, ■トライアル西友でも広がる激安弁当, ■激安弁当は“つかの間のオアシス”

 昨今の物価高のなか、200円台は当たり前で、100円台の弁当も売られているスーパーがあるという。今、なぜ激安弁当なのか。売り場を取材し、圧倒的な安さを支える戦略に迫った。

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「買い物は宝探しだ」「いつでも安く」「幸せは解凍できる!」「安いと時短のその先へ!」――。

 関東圏で15店舗を展開するディスカウントスーパー「マミープラス」。さいたま市のマミープラス東大宮店に足を踏み入れると、天井からつり下げられた掲示板の熱を帯びたフレーズが目に飛び込んでくる。

「宝探し」「安」「幸」「解凍」「時短」といったキーワードは、いずれも赤字で強調されていた。「エブリデイ・ロープライス」を掲げる同店の総菜コーナーの一番奥には、物価高に逆行するかのような“別世界”が広がっていた。ちくわ磯辺天丼(税抜き199円)▽ぶっかけ信州そば(同199円)▽2色そぼろご飯(同199円)▽本気じゃがコロッケ弁当(同222円)…‥‥。

■「激安弁当は“攻める商品”」

 担当者によると「昼間から売れ、夕方には棚がすっからかんになる」という。記者の近所のスーパーやコンビニとは価格帯にあまりにも格差があり、金銭感覚がおかしくなりそうだ。

 あまりの安さに目を奪われていると、同行してくれた広報担当の女性が「私が好きでよく買う」と、ある弁当を手に取った。「熟成もろみ醤油で仕上げた鮭はらこ飯」(同399円)だ。199円や222円が並ぶ空間では399円でさえ高く映るが……。

「ほぐしたサケがご飯の上にたっぷりのっていて、おいしいんですよ。もろみ醤油につけたサケを埼玉県の川越にある自社工場で焼いて。おにぎりに使っているサケと同じものを使っているんです。それでコストを下げているんですよ」

 記者も「熟成もろみ醤油で仕上げた鮭はらこ飯」を食した。ご飯の上には、大きくほぐされたサケの身がのる。一口ほおばると、サケの味とはらこご飯がマッチし、多幸感に包まれる。

 弁当の圧倒的な安さとおいしさを現場で両立させているのは、総菜バイヤーたちの力と徹底したコストカットだという。女性バイヤーはこう話す。

「お弁当はサンドイッチ、デリカ、ピザも含めて180種類くらいあります。鮮度が必要なものは店内で作りますが、それ以外は自社工場からマミーマート(埼玉県さいたま市)のグループ各店に直送している。それが低価格の秘密ですね」

 199円や222円という価格で採算は合うのか心配になるが、バイヤーはこう続けた。

「どこよりも安い価格でというのが会社の姿勢です。ほかの売り場と比べたら利益率が低いのは事実ですが、激安弁当は“攻める商品”。ほかの商品で利益を得て全体で採算を取っています」

■「激安弁当は“攻める商品”」, ■段ボール陳列の裏にある“食”への執念, ■トライアル西友でも広がる激安弁当, ■激安弁当は“つかの間のオアシス”

■段ボール陳列の裏にある“食”への執念

 マミープラス東大宮店のフロアを見渡すと、段ボール箱に入ったまま武骨に積まれた食品も目立つ。陳列の手間すら省く、徹底したローコストオペレーションだ。

社長からバイヤーへ受け継がれる“食”への探求心もあるという。商品開発において象徴的な存在が、同社の名物社長・岩崎裕文氏だ。

 本社には本格的なキッチンがあり、料理好きな社長自らが定期的にバイヤーや社員、取引先を集めて手料理を振る舞うそうだ。

「社長自身が本当に料理好きで、幼少期からさまざまな食材に触れ、知識も豊富。社長自ら旬のものを食べさせてくれるんです。こないだは蕗の薹(ふきのとう)を料理してくれました。調理しながら、バイヤーたちの“舌”を育てているんですね。取引先も呼ぶので、すごく喜ばれますよ」(前出の広報担当者)

■トライアル西友でも広がる激安弁当

 続いて向かったのは、東京都小平市のスーパー「トライアル西友」花小金井店だ。入り口にはトライアルホールディングス(福岡市)の企業アンバサダーを務めるドジャース・山本由伸投手の等身大パネルが置かれ、「いつも、トライがある。」の文字とともにガッツポーズを決めている。「トライアル西友」は、格安スーパー「トライアル」を中核とするトライアルHDが2025年7月に西友を買収して生まれた。トライアルグループのSTリテール(同市)が運営する。買収により、西友の約240店舗のうち、来期から3年間で30店舗を「トライアル西友」に業態転換する計画だ。

 ここで目を引くのが「枕崎産かつお節使用 ロースかつ重」(同277円)だ。総菜売り場の目立つ場所に約100個が山積みされ、2個、3個とまとめ買いする客も少なくない。聞くと、この商品はトライアルで18年の発売以来、年間1500万食を売り上げるメガヒット弁当だという。

「職人の味をデータ化し、かつ重専用の調理マシンを開発したことで、各店舗で職人の味を安定的に提供できるようになりました。工程を徹底的に機械化した結果、お求めやすい価格が実現できています」(トライアル広報)

■「激安弁当は“攻める商品”」, ■段ボール陳列の裏にある“食”への執念, ■トライアル西友でも広がる激安弁当, ■激安弁当は“つかの間のオアシス”

 味へのこだわりも徹底されている。

「ロースかつ重は、グループ会社・こはく本舗の職人によって開発。(こはく本舗は)和・洋・中に精通した職人が約40人在籍し、商品開発から製造まで統括しています」(同)

 だしには、品質基準をクリアした枕崎産の高品質なかつお節を使用。肉もかつ重に最適なロースを厳選しているという。

 記者もあまりの安さに、つい3個買ってしまった。知人の女性(57)とその娘(21)と一緒に食べたところ、「この値段が信じられない」と、娘から声が上がった。母親も深くうなずいた。

 一般的なカツ重より小ぶりなサイズ感で、腹八分にするのにちょうどいい。ランチタイムにお弁当を食べて「苦しい」と眠気に襲われ、後悔することなく、「おいしかった」という幸せな余韻のまま完食できるボリュームだ。だしもしっかりと利いていて、カツには厚みと歯ごたえがある。王道のカツ重の味だった。

■「激安弁当は“攻める商品”」, ■段ボール陳列の裏にある“食”への執念, ■トライアル西友でも広がる激安弁当, ■激安弁当は“つかの間のオアシス”

■激安弁当は“つかの間のオアシス”

 激安弁当でいえば、大黒天物産(岡山県倉敷市)が運営するディスカウントスーパー「ラ・ムー」では、「中華弁当」「巻きずし鮨」「デミグラスハンバーグ弁当」「から揚げ弁当」など約20種類が税抜き199円前後で販売されているという。岡山県を拠点に西日本を中心に約160店舗を展開する「ラ・ムー」は3月に甲府市に出店されるなど、全国展開を本格化させている。

 激化する低価格弁当戦争。インフレが進み、食料品への税負担も重くのしかかるなか、200円前後の弁当コーナーは、消費者の心と財布を癒やす“つかの間のオアシス”となっている。

(AERA編集部・上田耕司)

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