米銀決算から読み解く5つのポイント

バンク・オブ・アメリカなどの幹部は、新たな規則案は自行にとってプラスに働き、資本バッファーを減らせるようになるとの見方を示した
メインストリート(実体経済)は堅調だ。ウォール街(金融界)に至っては、これ以上ないほど好調だ。
米銀大手各行は今週、米経済について安心感を誘う展望を示した。イラン戦争開始以降、ガソリン価格が急騰しているものの、消費者は依然として支出を続けているという。銀行業界は絶好調で、トレーディング部門は大幅な相場変動から巨額の利益を享受し、投資銀行部門は久々の多忙を極めている。
それでもなお、各行は警戒すべき理由を多く指摘した。
JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなどの1-3月期決算から読み解く五つのポイントを以下に挙げる。
1. プライベートクレジットはダイモン氏最大の懸念とならず
JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、プライベートクレジット(ノンバンク融資)市場の相対的な規模を考えると、それ自体がシステミックリスクをもたらすとは考えていないとし、「特に懸念していない」と述べた。
JPモルガンは、広義のプライベートクレジットへのエクスポージャーが約500億ドル(約7兆9500億円)に上ると明らかにした。同様のエクスポージャーについては、ウェルズ・ファーゴが約360億ドル、シティグループは約220億ドルを抱えている。だが、各行が帳簿上に保有する他の融資や預金は数兆ドルに上る。
ダイモン氏は、プライベートクレジットよりも、むしろ広範な信用サイクル、すなわち債務不履行(デフォルト)が増加して投資家が資金を引き揚げ、それが「システム全体にどのように波及するか」を懸念していると述べた。
「人々が予想するよりも悪くなるだろう」と述べ、予期せぬ業界で常に何かが起きるものだと付け加えた。「それはソフトウエア業界かもしれないし、別の業界かもしれない」
ゴールドマンのデービッド・ソロモンCEOは、(新型コロナ禍を除く)深刻な不況ないし景気後退から長い年月が経過していることを踏まえると、投資家やアナリストが信用サイクルに注目するのは正しいとの認識を示した。

モルガン・スタンレーなどはトレーディング収入が大きく伸びた
2. 激しい相場変動は銀行への大きな追い風
ドナルド・トランプ米大統領がホワイトハウスに返り咲きを果たしてから、ウォール街のトレーディング部門は巨額の利益を享受している。政策や地政学関連のニュースが相次ぎ、トレーダーらはポートフォリオの再調整に追われている。
米銀大手各行は1-3月期、トレーディング業務で過去最高水準の収益を記録した。同四半期中は、米国によるベネズエラ攻撃や、イランおよび湾岸地域で大規模な戦闘が展開された。米銀大手6行のトレーディング収入は、合計で前年同期比17%増の450億ドルに達した。
しかも、こうした業績は、S&P500種指数がここ4年近くで最悪の四半期を記録した中で達成された(株式相場は直近で反発しており、過去最高値圏に戻っている)。

米大手銀の四半期トレーディング収入
3. ガソリン急騰でも個人消費にブレーキかからず
BofAの顧客のガソリン支出は約16%増加した。だが、アレスター・ボースウィック最高財務責任(CFO)は、それが基調的な消費力に影響を及ぼすには至っていないとし、ガソリン代は通常、個人消費の3~5%程度を占めるに過ぎない点を指摘した。
JPモルガン幹部らも同様の認識を示し、ガソリンが支出全体に占める割合は比較的小さいと述べた。
両行とも、クレジットカードの支払い延滞者の割合はわずかに低下しており、消費者がさらに困窮している兆候は確認できない。
4. M&A活動は活発化
1-3月期もM&A(合併・買収)活動は引き続き活発で、銀行側はさらなる案件獲得に貪欲だ。
ゴールドマンのソロモン氏は、2025年末以降に数十億ドル規模の大型案件が相次いで成立したにもかかわらず、M&A案件候補(パイプライン)は当時の高い水準を維持したままだと述べた。
その上で、深刻な景気低迷に陥らない限り、M&A活動の鈍化は見込んでいないとしつつ、企業トップらはエネルギー価格の上昇による影響を注視していると指摘した。
5. 自己資本要件の緩和は大きな勝利だが不十分
業界の規制緩和に伴い、損失に対するバッファーとして保有を義務付ける自己資本が軽減されることは、銀行にとって大きな勝利だ。だが、全ての銀行がその恩恵を享受できると考えているわけではない。
BofA、シティグループ、ウェルズ・ファーゴの幹部らはアナリストに対し、新たな規則案は自行にとってプラスに働き、資本バッファーを減らせるようになるとの見方を示した。これで利用可能になる資金は、自社株買いや買収など、他の用途に充てることができる。
一方、JPモルガンは他行と異なる見解を示した。 ジェレミー・バーナムCFOは、同行は「新たな規則案に盛り込まれた要素に懸念を抱いている」と述べ、保有を義務づけられる自己資本額が増加するとの見通しを示した。
新規則案は現在、意見募集期間中にあり、最終決定までに内容が修正される可能性がある。