伐り子の目利きぶりが地域の「竹林再生」に貢献…伝統的で現代的なものづくり
嵐山から続く西山連峰の麓、向日市、長岡京市、大山崎町からなる乙訓地域。古くから竹工やたけのこ栽培が盛んなこの地で、近年、放置竹林が社会問題化し、宅地化が進むなど、昔ながらの景観が失われつつある。美しい景観と文化を後世に残す方法とは? 地域で竹を扱う企業を訪ねた。
一貫生産によって築き上げた伝統的で現代的なものづくり
竹工芸・高野竹工

竹がうっそうと繁るなかで、黙々と作業する伐り子さん。竹材加工にも精通し、自社の製品に適した竹材の目利きぶりには一目置かれている。「夕方、西日が差し込んで、竹藪が一面、黄金色に輝く瞬間が、何よりのごほうびです」。
竹や木で茶道具や日用品をつくる高野竹工は、竹の伐採や製竹も行う会社だ。取材に訪れて最初に目にしたのは、屋外の作業場で背丈の倍はあろうかという竹に向き合い、黙々と作業する若手の職人。取締役で企画営業の井澤葉子さんによると、従業員の半数は“職人”なのだという。
「工芸の会社は分業制をとるところも多く、製造工程ごとに違う業者に外注するんですが、創業者である先代が品質や効率を考えて、現在の形になりました」

伐採後3ヵ月ほど自然乾燥させた竹を火であぶり、浮いてきた表面の油分を拭き取る「油抜き」。このあと、さらに数年寝かせてやっと竹材になる。
茶杓や花入れなどの茶道具づくりから始まった高野竹工には、茶道具や竹工芸の職人のみならず、木の細工を手掛ける指物師、漆職人、金粉や銀粉で装飾性の高い作品を手掛ける蒔絵職人など、高い技術をもつ職人が複数在籍する。

茶杓をつくるのは、この道50年の職人・堺元博さん。湿らせた竹材を火にかざして曲げ、水で冷やして形状を固定する。
「茶道具づくりには、素材のシミや模様といった個性を景色に見立てる美意識が求められます。職人たちにその力量があるから、古民家や寺社の修繕で出た腐食とか虫食いのある古材を、唯一無二の工芸品に再生できるんです」

竹の節をつかったブローチづくりでは、熟練のワザで銀箔を貼る職人の姿も。4.花入れをつくる野崎博之さん。一つひとつ違う竹材の個性に合わせた加工を考えるのが、難しさでもありおもしろさでもあると教えてくれた。
地域の人びとが地元を誇りに思えるように
高野竹工は、竹林の持ち主に代わって竹林を管理・伐採し、竹材を得るという仕組みを築いてきた。その竹林管理と竹材調達を主導するのが、伐り子という竹を切る職人だ。
「竹は加工前に長期間乾燥させて、割れや虫食いが出るものを選り分けます。後世に残したい製品や作品の材料になる竹を探し、見極めるうえで、伐り子の存在は本当に心強いです。また、竹材屋さんは需要のある樹齢の竹を多く切ることになるんですけど、うちはさまざまな樹齢を製品や用途に合わせてつかい分けますから、景観林としての樹齢バランスも考えて伐採できるのが強みです」

漆職人歴23年の青木健一さん。形や節の模様だけでなく、漆の染み込み具合もそれぞれ違うのだそう。
トレーサビリティの確立が製品への信頼性を高め、竹林再生や維持管理が地域の景観の向上につながるという三方よしの仕組み。地元の名刹の竹林も管理していることから、地域での信頼の厚さがわかる。
竹工文化を幅広い層に広めるため、各方面との協業や地域貢献活動にも積極的だ。
「ロングライフデザインをテーマにしたセレクトショップ〈D&DEPARTMENT KYOTO〉と開催する企画展はもう5年になります。また近隣の企業や大学とヒメボタルの棲む竹林を再生させる活動や、乙訓地区の高校で開催する竹箸をつくるワークショップなども継続してます。地元を誇りに思うきっかけになればいいですね」

青木さんの拭き漆の工程。漆を塗るごとに漆室で1週間ほど乾かし、数回繰り返してようやく完成。
社会貢献や協業などのさまざまな取り組みによって、地域との信頼関係を築いてきた高野竹工。伝統と革新の両面から新たな可能性を模索する真摯なものづくりの姿勢に、地元のみならず多くの注目が集まる。

Info
https://www.instagram.com/takanochikko/
https://www.instagram.com/chikubuen/
https://www.takano-bamboo.jp/
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Photo:Nobuki Kawaharazaki Illustration:Satoshi Ogawa Text:Knax
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