「人」に対してやさしい企業とは? 鍵は「つながりと余白」業界を越えて企業の担当者が語り合った

■人生を見つめ直す時間, ■多様な人が認め合う, ■住民と来訪者が交わる, ■やさしさの連鎖生む力, ■未来や次世代のために

 AERA「やさしくなりたいプロジェクト」の2025年度の集大成として、主な協賛企業が参加して「やさしい社会」のために何が大事か、話し合った。参加者はローソンリスク統括部部長・石合大悟さん、日本イーライリリー企業広報課課長・川副祐樹さん、東邦レオプロデュース事業部ディレクター・三田豊さん、独立行政法人都市再生機構広報室室長・松尾知香さん、ソニー生命保険調査広報部広報課統括課長・山口真里さん、総合学院テクノスカレッジ経営戦略統括室統括ディレクター・井上万成さん(※所属部署・肩書は取材当時)。AERA 2026年4月20日号より。

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木村恵子(AERAブランドプロデューサー):まずは「人」に対してやさしくあるために、企業としてどんな取り組みをしていますか。

■人生を見つめ直す時間, ■多様な人が認め合う, ■住民と来訪者が交わる, ■やさしさの連鎖生む力, ■未来や次世代のために

川副祐樹(日本イーライリリー):多様なバックグラウンドのある社員一人一人が安心して意見を言えること、その声を経営陣やリーダーが受け止めて施策に反映する仕組み作りに取り組んでいます。ジェンダー、障害、性的マイノリティー、若手社員活躍の観点から有志の社員が集まり、コミュニティーの形成や問題解決への打開策の提案などを進めています。たとえば車いすの社員から、通常のコピー機だと高すぎて使いづらいという声が上がりました。その高さを低くするなど、小さなことかもしれませんが、声をしっかり聞く。やさしい社会を作るには、まずやさしい会社を作ることが重要だと思っています。

■人生を見つめ直す時間, ■多様な人が認め合う, ■住民と来訪者が交わる, ■やさしさの連鎖生む力, ■未来や次世代のために

松尾知香(都市再生機構):私たちも多様な人材の活躍の場を作るため、2015年にダイバーシティ推進室を作りました。始業時間を変える、時間単位で有給休暇が取れる、サテライトオフィスを作るなど、時間と場所を柔軟にすることに取り組んできました。育児休業制度や介護休暇の制度を整えたりもしてきましたが、個別の状況に合わせた機会や支援の制度を整えること(エクイティ)に加えて、お互いの考え方や、置かれている立場や能力の違いを理解し合い、相手のことを考えて総合力を上げていくこと(インクルージョン)が、次に目指すところだと考えています。

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■人生を見つめ直す時間

山口真里(ソニー生命保険):なぜ社会がギスギスしてきているのかと考えたとき、自分の人生の余白が減っていたり、考え方が自分本位になりやすくなっているのではないかと捉えました。もし、自分の生きがいを見つけ、自分を愛することができれば、他人に対してもやさしくなっていける循環が生まれるのではないでしょうか。「生きがいを、愛そう。」をコーポレートスローガンに掲げていますが、日々の忙しさの中で、どうしても目の前のことだけで毎日が流れていってしまう。だからこそ、私たちはライフプランナーがお客さまと向き合い、どんな夢があるのか、この先どんな人生を送りたいのかを共に考える。そうした、ライフプランニング、つまり自分の人生を見つめ直す時間を作ることが、やさしさの起点になると考えています。

■人生を見つめ直す時間, ■多様な人が認め合う, ■住民と来訪者が交わる, ■やさしさの連鎖生む力, ■未来や次世代のために

井上万成(総合学院テクノスカレッジ):私たちはキャリア教育機関です。やさしくありたい「人」は学生、卒業生、教職員、協同する企業や地域の方々など多様です。学生に対しては、自分の未来もそのための学びも自分最適にできる学生支援をやさしさの中心に据え、プロティアンキャリアを実現する“卒後ビジョン”メソッドと、大学コースや海外大学との協同プログラムなど多彩なカリキュラムを自在にデザインできる仕組みを整備しています。学びと成長のためには、時にハードな課題や経験に挑戦する必要もあります。そんなことを求める強さや厳しさもやさしさに包含して取り組んでいます。

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■多様な人が認め合う

石合大悟(ローソン):当社は働いているメンバーが20万人を超えていますが、障害がある方も、外国人もいます。そうした多様なバックグラウンドを持つ人たちがお互いを認め合い皆が働きやすい環境をつくっていくことがとても大切なことと考えています。その一つの取り組みとしてアバターでの遠隔接客を始めています。たとえばセルフレジで操作に困るお客様にアバターを通して遠隔で操作を教えるのですが、このアバターには外国からも入れますし、障害のある方も働くことができます。社会とのつながりが生まれ、働きがいを提供できたら、少しやさしさにつながっていくのではないでしょうか。

川副:弊社は製薬会社として医薬品開発に加え、医療やヘルスケアを取り巻く社会のエコシステム全体に目を向けた取り組みにも力を入れています。具体的には、認知症や肥満症といった疾患の正しい理解を促し、偏見やスティグマの解消を目指す活動です。正しく理解することで、病気があっても働き続けられる、自分らしく生きられる環境が整い、より豊かな社会の構築につながることを期待しています。また、将来の日本社会を担う存在でもあるヤングケアラーに着目し、その存在や取り巻く環境を知ってもらう活動を少しずつ広げています。

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■住民と来訪者が交わる

木村:「環境や街」に対するやさしさはどうでしょうか。

三田豊(東邦レオ):私たちは緑化技術で災害や環境など都市の課題を解決に導くグリーンインフラを提唱しています。たとえばこれだけ暑くなった日本で、いかにクーラーなどを使わずに冷やせるかを日々考えていて、集中豪雨の水をそのまま流さずに、街を冷やすために使えるような技術を開発しています。ただ、都市開発などにより街の姿が変わり、コミュニティーが分断される懸念もあります。その課題に挑むのが「築地JAM」です。代々商売を営む方々と共に築地の文化を継承しつつ、音楽という新要素を加えて街をアップデートします。食と音楽が交差する場で、古くからの住民と新たな来訪者が自然に交わる。築地を「食と音楽の発信地」へと進化させ、地域が再びつながる未来を目指しています。

石合:ローソンでも店を拠点とした街づくりを考える「ハッピー・ローソンタウン」に取り組んでいます。店舗をハブとしたコミュニティーを作ることで、特に地方ではつながりが生まれ、社会問題解決の糸口になったり、地域創生にもつながるのではと考えています。また災害支援ローソンとして、災害発生時に被災者の方々への支援ができるような店舗も作っています。ただ、災害が起きてから救援物資が届くまでには時間がかかります。もちろん店で多めに水の在庫を持つなどの備えもしていますが、すべてのものをまかなえるわけではありません。だからローリングストックでお客様に備えていただくよう啓発したり、長期保存できる食品をお知らせしたりと、「有事の際に自立して対応できる、その自立した人がほかに困っている人がいたら助ける」という真のやさしさの循環を発揮できるような店の在り方も考えています。

■やさしさの連鎖生む力

三田:昔は空き地があったり、結構遊べる場所があったものです。僕は「余白」が大事だと思っているんですけど、仕事でも、嫌なことがあったら喫煙所で憂さ晴らししたり、飲み屋に行って発散したりしていた。そんな逃げ場、つまり心の余白みたいなものが失われていっていますよね。さらにAIも発達して、より効率化が進むなかで、いかに逃げ場のようなものを作れるかが、都市開発で考えるべきことではないかと思います。来年行われる「GREEN×EXPO 2027」で、我々は「やさしくなりたい。STUDIO」と称してパビリオンを出展するのですが、緑を利用した景観を作りつつも、逃げ場のようなものを提供できるんじゃないかと思っています。

木村:「未来や次世代」につながる取り組みは、どんなことをされていますか。

井上:本学では25の専門学科に学ぶ学生たちが企業や行政などと連携したプロジェクトで、商品開発や防災対策など実社会の課題に実働的に挑戦しています。市民結婚式もその一つです。小金井市、国分寺市との協同事業ですが、結婚式をあげたいカップルの募集から式の企画、演出まで、学生がプロデュースします。学生たちが地域や社会に参画する活躍は、街や企業に活気を生み、やさしさの連鎖を生む力を感じます。次世代へのやさしさは次世代が育んでくれるのではないでしょうか。

松尾:災害に強い街づくりの一環で、密集市街地の整備もしています。細い道路を広げたり老朽建物の建て替えを進める中で、移転先が必要になる人のためなどにあらかじめURが土地や建物を買い、保有することがあります。そういう土地建物を、例えば豊島区と連携し、区へ無償で貸し出し、区がその土地建物を若者の居場所作りや就労支援をするNPOのほか、若い妊産婦さんの生活支援の活動をしているNPOに貸し出すことで、活動をサポートしています。事業から広がり、様々な企業やNPO、個人などをつなげる「場」をつくることも、未来につながる取り組みではないかと感じています。

■未来や次世代のために

山口:ライフプランについては若い人にも考えていただきたく、弊社のライフプランナーが講師として中学や高校などを回り、ライフイベントをシミュレーションしながら、学生たちにお金や人生との向き合い方を教えています。すでに2500校以上を回りました。私たちは生命保険を「ラストラブレター」と呼んでいますが、それは大切な人に最後に想いを届けるラブレターでもあります。だからこそ、その前提として人と人のつながりや、やさしさがないとラブレターなんて書けない。今日お話をうかがいながら、やさしい社会というのは分断しないことが大切で、違いがあっても、人と人とがつながり続けられる関係が大切だと改めて感じました。

川副:社員が転勤で新しい土地へ行き、会社だけの生活となると分断を感じる可能性もありますね。でも、そこではたくさんの企業が、地域とつながれるような取り組みもされていて、本当に心強く感じました。今後、皆さんと一緒に活動ができれば、次世代の成長、日本の成長につながるのではないかと思いました。

一同:未来や次世代のため、手を取り合えるといいですね。

(構成/編集部・大川恵実)

※AERA 2026年4月20日号

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