【親の預金】死亡届前ならATMで引き出してOK? 元銀行員が解説する相続対策と「相続預金の払戻し制度」

遺産分割前の「相続預金の払戻し制度」活用も視野に

【親の預金】死亡届の提出前ならATMでお金を引き出してもOK?, 相続トラブルは年々増加傾向にある, 【親の預金】遺産分割前の「相続預金の払戻し制度」活用も視野に, 【相続対策】年間110万円の基礎控除を活用した生前贈与も活用検討を, 【相続対策】GWの帰省では相続準備について話し合ってみましょう

【親の預金】死亡届前ならATMで引き出してOK?元銀行員が解説する相続対策と「相続預金の払戻し制度」

ゴールデンウィークが近づき、久しぶりに家族が集まる機会が増える季節です。

帰省の際に、ふと「もし親に何かあったとき、お金のことはどうすればいいのだろう」と考える方もいるのではないでしょうか。

ここでは、元銀行員の筆者が多くの相続に関わってきた立場から、適切な相続手続きの流れや生前からできる対策方法について解説します。

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【親の預金】死亡届の提出前ならATMでお金を引き出してもOK?

親が亡くなると、葬儀代や病院での医療費の精算、残された家族の当面の生活費などさまざまな支払いが発生します。まとまった金額の支払いになることも多く、「親の口座から引き出したい」と考える方も多いかもしれません。

銀行へ死亡届を提出しておらず、口座が凍結されていなければ、キャッシュカードを使ってATMで引き出すことは物理的には可能です。

しかし、だからといって被相続人(亡くなった方)の口座からお金を引き出すことはおすすめできません。被相続人名義の預金は亡くなった時点から相続資産となり、相続人の共有財産となるためです。

もし他の相続人から「勝手に引き出した」とみなされてしまうと、深刻な相続トラブルに発展してしまうこともあります。「葬儀代に使っただけ」という事情があっても、金額や使途の説明が不十分であれば争いの火種になりかねません。

相続トラブルは年々増加傾向にある

「我が家は仲が良いから相続で揉めることはない」「トラブルになるほど資産がないから大丈夫」と考える方もいるでしょう。

しかし、最高裁判所の司法統計によると、2024年に家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件数は1万5379件となっています。2000年は8889件でしたので、約25年でおよそ1.8倍にまで増加している状況です。

さらに、2024年の司法統計によると同年中に家庭裁判所で解決した遺産分割事件のうち、遺産額が5,000万円以下の案件が約78%を占めています。相続トラブルと聞くと「遺産が多い家庭の話」というイメージを持ちがちですが、実は一般家庭で財産の分け方をめぐって意見が対立するケースが多いのです。

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遺産分割事件数(新受件数)

【親の預金】遺産分割前の「相続預金の払戻し制度」活用も視野に

葬儀代の支払いや当面の生活費などを被相続人の口座から引き出したい場合は、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を利用することができます。

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「ご存知ですか?」遺産分割前の相続預金の払い戻し制度

遺産分割前の相続預金の払戻し制度とは、遺産分割協議が終わっていなくても相続人が単独で一定額の預貯金を払い戻せる制度です。

払い戻しができる金額の上限は、以下の式で計算されます。

・相続預金の残高 × 3分の1 × 払い戻しを求める相続人の法定相続分

ただし、一金融機関あたり150万円が上限です。

たとえば、残高300万円の口座があり、相続人が配偶者と子ども2人の合計3人のケースで考えてみましょう。この場合、配偶者の法定相続分は2分の1、子ども2人はそれぞれ4分の1です。

配偶者が払い戻せる上限額は、300万円×3分の1×2分の1となり50万円。子ども1人あたりは、300万円×3分の1×4分の1で25万円となります。

払い戻しの手続きは金融機関によって異なる場合があるため、まずは窓口で「遺産分割前の払い戻し制度を使いたい」と相談してみるとよいでしょう。

【相続対策】年間110万円の基礎控除を活用した生前贈与も活用検討を

亡くなった後は、葬儀の手配や行政での手続き、相続財産の調査など、やるべきことが次々と押し寄せます。そのようなときにお金の心配までせずに済むように、生前から準備しておくことが大切です。

たとえば、生命保険なら受け取る人や金額を指定して遺すことができます。受け取り手続きも比較的シンプルですので、「葬儀代を生命保険で遺しておく」といった方法で活用することができます。

また、元気なうちから生前贈与で少しずつ財産を渡しておくのもよいでしょう。暦年贈与では年間110万円の基礎控除がありますので、そうした仕組みを活用しながら万が一の事態に備えることも検討してみてください。

【相続対策】GWの帰省では相続準備について話し合ってみましょう

今回は、親の死亡後の預金の扱いと相続トラブルを防ぐポイントについて解説しました。被相続人の口座からの無断引き出しは、たとえ善意でもトラブルの原因になる可能性があります。実際に相続トラブルは増加しており、特に一般家庭でも起こりやすい点は見逃せません。

また、遺産分割前でも利用できる払戻し制度など、正しい手続きを知っておくことが重要です。今のうちに家族でお金の話をしておくことで、いざというときの混乱を防ぐことにつながります。

相続の準備は「縁起でもない」と後回しにされがちですが、元気なうちだからこそ話せること、聞けることがあります。今年のゴールデンウイークに家族が集まる機会がある方は、ぜひ相続について話し合ってみてください。

参考資料

・国税庁「財産をもらったとき」

・最高裁判所「令和6年 司法統計年報 3.家事編」

・最高裁判所「平成12年 司法統計年報 3.家事編

・一般社団法人 全国銀行協会「遺産分割前の相続預金の払い戻し制度」」

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