ベンツ・レクサスを抑えて「ダントツ1位」――経営者164人が選んだ愛車ブランドの正体
観測:都市の経営者は「高級外車で節税」していない
経営者が高級外車を買い、それを巧みに決算対策へと組み込む――かつて、あるいは今もなお、世間に根強く残る「経営者とクルマ」のステレオタイプだ。しかし、そのイメージは、現代のビジネスの最前線に立つ人々が抱く実感と、少しずつ乖離し始めているのかもしれない。経営者向け会員制プラットフォームを運営するBlueBank(東京都品川区)が、2026年4月17日に発表した調査結果は、そうした固定観念に一石を投じるものとなった。会員である経営者164人を対象に行われた「自動車の保有・運用に関する実態調査」からは、意外なほど質実剛健な経営者の姿が浮かび上がる。
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回答者の多くは、東京都をはじめとする都市部に拠点を置く経営者で、じつに84.9%が自動車を保有している。その業種別の内訳を覗いてみると、建設業が25.0%と最も多く、次いでサービス業が18.9%、卸売・小売業が17.6%と続く。いずれも、自らが現場へ足を運び、直接手を動かすことで事業を形作っている分野だ。
こうした背景を鑑みると、経営者にとっての自動車とは、ステータスを誇示するための道具ではなく、事業を円滑に進めるための「実利的な足」としての性格が強いことがうかがえる。
それを裏付けるように、調査では「決算対策(節税)には活用していない」と答えた経営者が64.02%に達した。かつての“節税の代名詞”としての自動車選びは、今や主流ではない。彼らが実際に選んでいるブランドの顔ぶれを見ても、その傾向は明らかだ。保有ブランドの順位は、以下のとおりとなっている。
1位:トヨタ
2位:メルセデス・ベンツ
3位:スズキ
4位:日産
5位:ホンダ
6位:レクサス
7位:BMW
8位:三菱
9位:アウディ
10位:ダイハツ
11位:フォルクスワーゲン
12位:マツダ
13位:スバル
14位:ポルシェ
15位:ボルボ
16位:MINI
17位:フェラーリ
18位:ランボルギーニ
19位:DSオートモビルズ
20位:アストンマーティン
21位:アバルト
22位:キャデラック
23位:テスラ
24位:フォード
25位:プジョー
26位:マセラティ
27位:ランドローバー
28位:ルノー
2位のメルセデス・ベンツや6位のレクサスを大きく引き離し、トヨタが31.05%という圧倒的な割合で首位に立った。この数字が物語るのは、今の経営者が抱く極めて現実的な視点だ。
建設業や卸売業といった、文字とおり現場を抱える経営者にとって、自動車はもはや「見せる」ための道具ではない。むしろ、事業の歩みを止めないためのインフラとしての性格を強めている。故障や修理によって現場が止まる。その際に生じる目に見えない損失を考えれば、ブランドの威光よりも、明日も間違いなく動き続けるという信頼が選ばれるのは、ある種、当然の帰結といえる。
高級外車が選ばれなくなりつつある現状をどう見るべきか。そこには、経営者がクルマという存在に託す価値が、より実利に根ざした形へと移り変わっている背景がある。
節税活用の限定性

自動車の保有・運用に関する実態調査(画像:BlueBank)
64.02%が「決算対策(節税)には活用していない」と答えた一方で、将来の売却価格であるリセールバリューについては、同じく64.02%の経営者が意識を向けている。
興味深いのはここからだ。出口戦略ともいえる売却価格を気にかけながらも、71.34%もの経営者が
「感覚的に判断している」
「試算したことはない」
という。売却時にかかる税金にまで意識が回っていない層も58.54%にのぼる。その一方で、64.63%が売却価格や減価償却、税金をまとめて把握したいと望んでいるのが実情だ。
こうした数字の背後にあるのは、決して経営者が節税を軽視しているわけではない、という事実だろう。むしろ、
・会計上の減価償却
・中古車市場の激しい価格変動
が頭の中で切り離されており、経営判断の材料として一体化できていない。
中古車相場の動きは読みづらく、事前に細かくはじき出すのは骨が折れる。結局のところ、複雑な計算を重ねるよりも、値崩れの恐れが少ないブランドを選ぶことで、不確実なリスクをあらかじめ抑え込もうとしているのではないか。今の市場環境において、節税という仕組みを経営判断の武器として使いこなすのは、想像以上に高いハードルとなっているようだ。
判断の負担軽減

自動車の保有・運用に関する実態調査(画像:BlueBank)
こうした経営者の振る舞いをひも解いていくと、大きく分けて三つの側面が見えてくる。
まずは、判断に費やす手間を限りなく削ぎ落とそうとする姿勢だ。経営者の時間は、何よりも貴重な資源である。刻々と変わる中古車相場や複雑な税務処理をいちいち追いかけるのは、それだけで大きな負担になりかねない。結果として、手放す際の価格が予想しやすく、故障の心配が少ない、そして市場に広く流通している一台へと落ち着いていく。
この条件を過不足なく満たしているのが、首位のトヨタだ。一方で6位にとどまったレクサスのような、付加的な価値を積み増したブランドは、多忙な彼らにとって今は余計な考慮事項と映っているのかもしれない。
次に挙げられるのは、手元の現金を何より重く見る感覚だ。帳簿上の利益を削る節税という守りの姿勢よりも、いざという時にいくら現金が手元に残るかという実利を重視している。リセールバリューを意識する経営者が6割を超えている事実は、彼らが車を使い切りの経費ではなく、機動的に換金できる資産として捉えている証左だろう。価格の変動が激しい輸入車に比べ、市場で安定した価値を保ち続けるトヨタ車への信頼は、こうした現金重視の経営感覚と合致している。
そして最後は、ビジネスを支える道具としての原点回帰だ。今回の回答者には、建設業やサービス業といった、自ら現場を走り回る層が目立つ。こうした環境において、車に求められるのは華美な外装ではなく、実務を滞らせない信頼性に他ならない。壊れにくく、万が一の際もすぐに直せて、どんな場面でも気兼ねなく使える。そうした「道具」としての強みが、複雑な計算を超えたところで、多くの経営者を同じ選択へと向かわせている。
車の見方の変化

自動車の保有・運用に関する実態調査(画像:BlueBank)
こうした視点を重ね合わせていくと、経営者の自動車に対する向き合い方が、かつてとは似て非なるものへ変貌を遂げている様子が浮き彫りになる。
これまでの定石といえば、自動車を減価償却の仕組みに乗せ、いかに税を抑えるかという出口のない節税手段として扱うことだった。しかし、今の経営者たちの眼差しは、手放す際にいかに手際よく現金へ戻せるかという
「資産の流動性」
へと向けられている。判断の軸足は、帳簿上の数字を操作する税対策から、手元の資産をどれだけ無駄なく、効率的に回せるかという実利の側へと、明らかに映りつつある。
この変化は、彼らが日頃から抱いているもどかしさの裏返しでもあるのかもしれない。64.63%もの経営者が、売却時の価格や税をまとめて確認できる仕組みを欲している。その数字の背景には、現在の管理体制では資産の全体像が掴みにくい、という率直な実感が透けて見える。
将来の価値がどれほど動くのか、数字として把握しきれていない。だからこそ、今はあえて細かな計算を捨て、信頼のおけるブランドを選ぶことで自衛している。その一方で、本音では不透明な部分を
「見える化」
したいという欲求も根強く残る。自動車を実体の掴めない資産のまま放置せず、現金の流れとしてより鮮明に管理したい。そんな経営者たちの切実な意向が、今回の調査からはっきりと読み取れる。
現状維持の流れ

現代経営者のクルマ選び新常識。
今後の展望に目を向けると、大きく分けて三つの道筋が浮かび上がってくる。
まずは、現在の流れがそのまま定着する場合だ。このシナリオでは、トヨタの独走態勢に揺るぎはなく、経営者はこれからも自身の経験を頼りに、リスクを抑えた手堅い選択を積み重ねていく。資産管理を効率化する仕組みが浸透しなければ、これまでとおりの勘に基づいた判断が続くことになる。
一方で、変化の速度が一段と上がる可能性も否定できない。じつに64.63%もの経営者が求めている管理の仕組みが社会に広がり、情報の不透明さが取り除かれる未来だ。そうなれば、クルマは走行距離や状態に応じて刻々と価値が変動する、よりシビアな投資対象として扱われるようになる。ブランドのイメージで選ぶのではなく、車種ごとの損得を細かく精査する段階へと進むわけだ。こうなると、資産として極めて優秀な車と、純粋な趣味の車とに二極化し、その中間に位置する中途半端なモデルは淘汰されていくかもしれない。
あるいは、これまでの流れとは真逆の事態が起きることも考えられる。中古車相場が不安定になり、高く売れるという大前提が崩れ去ったときだ。そうなれば、経営者は再び、利益を圧縮して税を抑えるための、かつての節税手段へと先祖返りするだろう。
市場がどのような動きを見せるにせよ、これまでのなんとなくの判断から脱却し、数字を直視できるかどうかが、企業の利益を左右する分水嶺となるのは間違いない。