電気自動車は「最も多い年でも3%」しか選ばれない! データが暴く、日本人の車選びの「本音」とは?

ニュースやSNSでは「次は電気自動車だ」と盛り上がる。だが実際の日本の新車販売の5割以上はハイブリッド車(HEV)で、電気自動車(BEV)は最も売れた年でもわずか3%にすぎない。しかも「次もBEVを買いたい」という意向は、2024年に入って急落し2020年水準を下回った。「HEVで十分満足している」という生活者心理がBEV普及の最大の壁になっている実態を、毎月約70万人からデータを集めるインテージの「Car-kit」が鮮明に映し出します。最新刊『なぜ日本人は、それを選ぶのか?』から一部を抜粋・再編集してお届けします。
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■日本人は「自動車」をどうやって選んでいるのか?
私たちは毎日の暮らしの中で、さまざまなモノやサービスを選び購入(契約)しています。
思わず衝動的に買ってしまうものやあまり意識せずに選択するものもあれば、じっくり時間をかけて検討するものもあります。
商品価格が高く、人生の中での購入頻度がそう多くはない耐久消費財の代表格として、ここでは自動車を取り上げていきます。
自動車業界では近年、世界中で電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)が大きな注目を集めています。ニュースやSNSでは「次のモビリティはガソリンを使わないBEVだ!」と盛り上がりを見せていますが、日本の道を走る自動車はどうなっているのでしょうか。
その他の観点では、昨今話題の尽きない物価上昇が自動車購入においてどのような影響を及ぼしているのかを確認します。
ここからは、インテージが毎月約70万人から回答を集める、自動車に関する調査「Car-kit」のデータをもとに、日本の自動車市場の「リアル」をひも解きます。
「Car-kit」は10年以上の運用実績があるため、重厚長大でありながら、変化が多い自動車業界を現在だけでなく過去からのトレンドを含めて見ていきます。
話題のメガトレンドと実際の市場のギャップ、購入検討プロセス、そして価格上昇と購入時の選択の関係──これらを整理することで「耐久消費財を買うとはどういうことか」を、自動車を例に考えていきます。
さあ、ニュースや公的機関からの情報だけでは伝わらない、日本の車選びの実情を一緒に見ていきましょう。
■電気自動車は、どれだけ売れているか?
世界中で注目の電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)ですが、日本国内では実際のところどれくらい売れているのでしょうか。
「Car-kit」は個人利用を対象としてデータ取得しており、社用車としての商用利用やタクシー、レンタカーのためなどの購入は含みません。そのため純然たる自家用車としての、BEVの購入割合を把握することができます。
企業では環境意識の高さなどからBEVを営業車両などとして多数導入するケースがあり、個人の購買行動とは異なるため、本分析のスコープからはそれらを外しています。
図8に直近10年超の新車販売状況をパワートレイン別にまとめました。パワートレインとは、自動車の動力を生み出し、それを車輪に伝える一連の機構のことです。

主な種類には、ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車、ガソリンハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車、燃料電池車などがあります。
BEVは最も多い22年でもわずか3%にすぎず、話題の割には存在感が小さいことが明確です。一方24年時点で5割以上を占めるHEVの強さが際立ちます。充電できるHEVである、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)も1~2%と少ない状態です。
過去からのトレンドでは、ガソリン車の構成比が減りHEVが増えていることが見えてきます。実にガソリン車は、約10年間で約7割から約4割まで構成比を落としています。
日本国内は着実に「電動化」は進んでいるものの、ガソリンを一切使わないBEVではなく、HEV中心に回っていることがわかります。詳しくは「なぜ日本では『ハイブリッド車』ばかり走っているのか?」で論じます。
■電気自動車をどのくらい欲しがっているのか?
自動車は高額耐久財です。衝動的に買うことはほとんどなく、数週間から数か月、場合によっては数年単位の検討期間を経て購入に至ります。
そのため販売実績だけでは生活者が次に何を選ぶかは見えてきません。そこで参考になるのが「次回購入意向」です。
このデータを先行指標として先々を見通してみましょう。BEVは今でこそまだ売れていないだけで、「次の買い替えの際にはBEVを買おう」と思っている人は多いのでしょうか。
結果を図9に示します。

唯一意向が高まったのは、軽自動車のBEVの登場時。日産自動車「サクラ」、三菱自動車工業「eKクロス EV」が両社から同時に発売されたタイミングです。
実際、サクラは登場時の22年度には3万台以上も売れました。その翌年の23年度も3万台以上の販売実績がありますが、その後は需要が落ち着き24年には2万台ほどに。22年は意向の値も上昇傾向となっています。
しかしその後は横ばい、そして24年に入ると一気に減少し、20年時点よりも下回っています。
振り返ってみれば、日本でBEVが普及するかどうかの分水嶺はこの22~23年の時期だったのではないでしょうか。
他のメーカーからも後を追うように新型モデルが相次いで登場していれば……とアナザーストーリーを想像してしまいます。
■何が「電気自動車」の普及を妨げているのか?
日本でBEVがまだ広がらない理由として、以下の5点が挙げられます。
1.航続距離への不安
2.充電インフラの未整備
3.車両価格の高さと補助金のバランス
4.車種ラインナップの不足
5.日本ではHEVが強すぎるため、生活者としては十分であること

結果は、HEVを購入した人は次回の購入候補としてHEVを選択し続ける傾向が強いことが見えてきます。「ガソリン車→ガソリン車」が61%、「BEV→BEV」は78%、「PHEV→PHEV」は75%であるので、「HEV→HEV」の85%は高いことがわかります。
同時に、「HEV→BEV」(18%)、「HEV→PHEV」(19%)のルートが細いことも浮かび上がってきます。
つまり、HEV保有者のうちBEVやPHEVに移行する割合はまだ限定的です。HEVが「買い替えの標準」として強固に存在し、HEVで十分満足しているため無理に他に移行する必要がない状態なのです。
逆の観点として、HEV以外のパワートレインからのHEV意向に目を向けると、「ガソリン車→HEV」(52%)、「BEV→HEV」(26%)、「PHEV→HEV」(36%)とHEV以外のパワートレインからのHEV意向の高さも同時に見えてきます。
次からは、こうしたHEV中心の市場構造と並行して、物価上昇や価格変動が生活者の購入行動にどのような影響を与えているかを分析します。
(執筆:自動車アナリスト 三浦太郎)
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