"オーケー進出"で激化した「関西圏スーパー」の今

2024年11月に関西第1号店を出店したオーケー(写真:今井康一撮影)
関東の“食品スーパーの雄”「オーケー」が関西に進出してから、およそ6カ月が経とうとしています。
【写真】「オーケー関西第1号店」の“強すぎる店内”を見る 陳列もラインナップも工夫がいっぱい!
関西1号店となった大阪の高井田店を訪れた筆者は、東京にあるオーケー以上に集客している現場を見て、同社の経営力とともに、「やはり関西でも支持される店だ」とその強さを再認識しました。

オーケーが関西第1号として出店した、大阪の高井田店(筆者撮影)
同時に競争状態が激しくなればなるほど、関西を地盤とするスーパー各社は、「独自固有の長所で勝負する」ことが求められてくるという経営の本質に気づかされることとなりました。
オーケーの経営力、それを支える商品力、同時にそれに対抗する競合店の独自固有の長所の磨き方。「関西圏スーパーの戦国時代」から見えてきた、これからの日本の流通小売業のあるべき姿を整理します。
「オーケー関西進出」の成功によってわかったこと
オーケーは37期連続増収を続ける優良企業です。2024年9月期の中間期も2桁増収増益で、客数も11%伸びており、38期連続増収は確実と言えます。

出典:同社IR数値をもとに筆者作成
2024年11月には「オーケー高井田店」(大阪府東大阪市)、2025年1月には「オーケー西宮北口店」(兵庫県西宮市)と2店舗を関西地区にオープンしました。そのいずれも「スタートは順調に推移」(同社)しています。
競合店は、西200メートルに「ライフ高井田店」、北西300メートルに「万代 森河内店」、南600メートルに「スーパーマルハチ高井田店」などがひしめいています。
オーケーとともに競合店も視察しましたが、オーケーよりも明らかに客数が少なく、同店の影響を受けていることがはっきりとわかりました。とはいえ、競合店では、かごいっぱいに買い物をする近隣客の姿があり、やはり関西地盤のスーパーの強さも実感しました。
オーケーの関西初進出から半年が経過し、改めてわかったことがあります。
【「オーケー」関西初進出で明確になったこと】
1. オーケーの強さは「EDLP」を徹底する経営法にあり
2. EDLPを貫きながら、カギになる単品で地域密着を行い、ファンが増加
3. 関西のスーパーがオーケーに勝つには、独自固有の長所に磨きをかけ新業態を開発すること
この3点を軸に、オーケー進出で見つけた「関西地区のスーパー経営」のポイントをまとめます。
1980年代から「EDLP」を徹底
オーケーの経営方針は「高品質・Everyday Low Price(EDLP)」です。これは企業理念と言ってもいいほど同社の核となっているものです。
「EDLP」とは、その日限りの目玉商品や特売価格を設定する代わりに、ほとんどの商品を毎日同じ低価格で販売するやり方のこと。アメリカの小売業最大手・ウォルマートの経営理念から生まれて1980年代から使われてきた用語です。
同社のEDLP導入は早く、1986年には経営方針に加えています。そして2001年に特売チラシを廃止しました。オーケーは店内でチラシを配布することはあっても、他スーパーのように定期的に折り込みチラシを配布することはありません。結果的に販促費もかからず、経費も抑えられます。
同社の販促費率は0.03%(2021~2024年)。無駄な経費を徹底的に削り、その分をお客様に低価格・高品質の商品という形で還元する。これがオーケーのEDLPであり、創業者の故・飯田勧氏がこだわり抜いた一点になります。

オーケー高井田店の第3弾商品情報。チラシではなく商品情報という記載がポイント(筆者撮影)
一方で、関西のスーパー経営は「ハイ&ロー」と評されます。高いか、安いかという業態が関西には多く、特に、価格を切り口にした店が多いのが特徴です。
しかしここにきて、各社の戦略に変化がでてきました。
オーケーを迎え撃つ「関西の競合たち」の特徴
「ライフコーポレーション」(大阪府)が力を入れているのは、「同質化競争からの脱却」。オーガニックなど自然派商品の品揃えを充実させたPBブランド「BIO-RAL(ビオラル)」を創設しています。「オーガニック・ローカル・ヘルシー・サステナブル」をコンセプトにした同ブランドの単独出店も増やしているところです。
2025年3月には、グラングリーン大阪南館に初のカフェ併設型「ビオラルうめきた店」をオープンしました。2030年に50店舗、売り上げ400億円を狙っています。
品揃えは高品質、高価格商品が多く、従来のライフ店舗とは異なります。しかしこの価値訴求PBの「BIO-RAL」と価格訴求PBの「スマイルライフ」を両輪にして同社は成長戦略を描いています。

グラングリーン大阪南館地下1階の「ビオラルうめきた店」(筆者撮影)
「万代」(大阪府)は関西圏で169店舗(2025年3月時点)を展開している地場のスーパーで、関西には「万代ファン」が多くいます。
同社はハイ&ロー文化の中でも特売を軸にした「価格訴求型」を志向。さまざまな販促企画、集客策に定評があり、「低価格だけど品質がいい」という商品政策によって地元客に支持されています。

万代のチラシは数量限定。「売り切れご免価格」が目立つ価格訴求型(画像:同社公式サイトより)
2021年にオーケーと「関西スーパー」争奪戦を繰り広げ、勝利した「関西フードマーケット」は、阪急阪神東宝グループのエイチ・ツー・オー リテイリング傘下で、関西のスーパー戦国時代を勝ち抜くための業態整理を進めています。
店舗を高付加価値型の「Aタイプ」と価格訴求型の「Cタイプ」に区分けし、リニューアルや新規出店を開始。今後の行方が気になるところです。
以上のように、各社は価格と価値のバランスをとった経営に力を入れようとしています。ではここで、関西地域のスーパー各社の経営数値を比較してみましょう。

出典:各社のIR数値を基に筆者作成。「オーケー」はテナント、不動産除く売上高、「関西フードマーケット」はイズミヤ・阪急オアシス、関西スーパーの合計数値
売上高は、ライフがもっとも高く、オーケーはそれに次ぐ規模。万代と関西フードマーケットが同等規模です。売上総利益率は、オーケーが断トツで低く、22.1%。他は31%を超えています。
粗利だけで見たらオーケーは低収益企業です。しかし、本業の儲けを示す営業利益は366億円とオーケーが断トツです。一時、買収を検討した関西スーパーの約10倍、親会社の関西フードマーケットの4倍以上の利益をだしています。
オーケーの脅威的な「経費率の低さ」
その理由は、同社の販売費及び一般管理費(販売業務や管理業務にかかる経費)率の低さにあります。何と販管費率が約16%と圧倒的に低いのです。結果的に営業利益率が約6%と、他社を大きく引き離す経営ができているのがわかります。
オーケー経営の最大の特徴は、この経費率の低さにあります。実は業界の大手企業と比較しても同社の経費率は断トツの低さです。ちなみに西友を買収したトライアルもローコスト経営で有名ですが、販管費率は17.5%。オーケーの低さが際立ちます。

出典:各社の2024年IR数値を基に筆者作成。営業収益はトータル数値、イオンの営業収益は全体、粗利率以下はイオンリテール数値目安
しかし、営業利益率は約6%出ているのですからオーケーは「高効率経営」を実践している企業なのです。
このモデル実現のポイントは、「店舗力」。だから店舗の出店立地は徹底してこだわり、家賃の高いところにも出店します。
高井田店のある商圏は大阪市からのアクセスが良く、単身世帯や子育て世帯が流入し、人口増加地域でもあります。ライフもここは重要商圏と見て、2024年10月に冷凍食品を従来の2倍の品揃えにしてリニューアルしました。
このような商圏ですから、土地を取得し建物に投資をしても十分に元がとれるとオーケーは考えているのです。
もちろん、キャッシュで1200億円ほど(2024年9月時点)を持っているから、出店立地については妥協しないでいいという強みもあります。借金をせずに新規出店していける体力がある。これがオーケーの独自固有の長所です。
同社の「高効率経営」のカギはどこにあるのか。それは、次の生産性指標で見るとよくわかります。

出典:同社のIR数値を基に筆者作成
オーケーの1店舗当たりの売上高は41億円。単店売り上げが高いのが特徴です。埼玉の高収益スーパー、ヤオコーの1店舗当たりの売り上げが約25億円ですから、ヤオコーの1.6倍です。立地や売り場面積も異なりますので単純比較はできませんが、オーケーの店舗効率は高いと言えます。
また、小売業の代表的な効率指標である年間1坪当たり売上高(年坪≒坪効率)に換算すると836万円です。日本の一般的な食品スーパーの坪効率が294万円ですから、2.8倍の効率です。
これを支えているのが、オーケーの商品力と売り場力です。
オーケーの商品力と売り場力「3つのポイント」
① 陳列には特に力を入れる
オーケーの陳列はどの店も比較的きれいですが、高井田店は特に陳列の美しい店舗でした。店内スタッフも既存店より多く、売り場メンテナンスにも力を入れている様子がうかがえました。

美しすぎるオーケー高井田店の陳列棚。整然と商品が並んでいる(筆者撮影)
② 生鮮の冷凍品や冷凍食品強化
生鮮三品(野菜・果物、鮮魚、精肉)は同社の売り上げの34%を占める主力部門ですが、中でも鮮魚に強く、産地からマイナス50度の超低温で運ばれてきた超低温冷凍本まぐろを関西でも強化しようしています。
冷凍食品は前年比115%と、オーケーの中でも特に伸びているため、冷食は強化していました。

オーケーが力を入れる「超低温」の冷凍シリーズ(筆者撮影)

超低温冷凍本まぐろ(筆者撮影)
③ 地域特性を踏まえた商品仕入れ
基本の品揃えは他のオーケーと一緒ですが、関西で勝つための勝負単品については地域色を出しています。
たとえばソースでは大阪のオリバーソースのアイテムを増やすなど、日配品は地場メーカーとの取引を増やし品揃えしています。
関西ではお好み焼きやたこ焼きを自宅で作る人が多いため、必要な商材がワンストップで買えるようにしたコーナーを導入。また、店内厨房に大型鉄板を導入して作っている「デラックスモダン焼き」(399円)を新規開発するなど、関西の食文化に合わせた商品展開をしています。

ソースや粉ものが充実した商品棚(筆者撮影)

店内で調理している「デラックスモダン焼き」(筆者撮影)
関西に何としても入り込んでいくのだという意思を感じました。
関西のスーパーは「価格競争」から完全に脱するべき
オーケーの関西2店舗でも、生鮮三品や総菜の売り上げ構成が高いといった関東の既存店と同様の傾向が見られます。
特に好調なのがベーカリー。中でもピザは、銀座店出店時にも話題となりましたが、関西でも有効と感じているようです。オーケーのピザは全スーパーの中でも断トツにコスパの高い単品だと筆者は思いますので、差別化につながるでしょう。

オーケーのピザは安くておいしいと関西でも評判(筆者撮影)
また、太巻寿司などの巻寿司は、関西では必須ということで特に力を入れていました。

オーケーが強化する「太巻寿司(写真左340円)」と「鉄火中巻寿司(399円)」(筆者撮影)

ライフの自慢の「太巻(398円)」と「ねぎとろ中巻(398円)」(写真左)、万代名物の「おいしい巻寿司(398円)」(筆者撮影)
太巻寿司をオーケーは完全なる差別化商品として、商圏内最下限価格で投入し、一番商品にしようと目論んでいます。私もそれぞれの太巻を食べましたが、オーケーの太巻のレベルの高さに驚きました。
EDLPをベースにしながら、ピンポイントで勝つための単品を選定して、価格勝負に出るのもオーケーの得意技です。こうした策の1つひとつが同社の商品力の強さと言えます。
また、同社にはオーケークラブという会員組織があります。この会員組織は現金払いの場合、食料品(酒類を除く)が3%相当額割引になります。入会時にかかるのはカード発行費用200円のみ。細かい個人情報を入力する必要はなく郵便番号登録だけで入会できます。
気軽に入れる会員組織ということもあり、すでに会員は746万人(アプリ会員含む 2024年3月時点)です。高井田店ではオープン1週間で3000人が登録したといいますから、今後も継続利用したいというお客さんが多いことを意味しています。
オーケーにとってもキャッシュレス決済比率を抑えることができ、同社がカード会社へ支払う手数料も抑えられ、経費率を抑えることにもつながっています。
加えて、同社は毎日低価格であるとともに、競合店の特売価格がオーケーの通常価格を下回った際には同額まで値下げするという「競合店対抗値下げ」も仕組みとして持っています。
品揃えの幅自体は競合店のほうが多いのですが、仮に価格面で、特売で対抗したとしても、同じ商品なら競合店はオーケーに必ず同じ価格で並ばれてしまうのです。つまり、オーケーと価格だけで勝負するという「ハイ&ロー」のロー戦略では戦えないということになります。
関西のスーパーは価格競争から完全に脱して、各社が持つ本来の強みである「独自固有の長所」に磨きをかけるべきなのです。
多くの関西スーパーは中途半端なポジショニングだった
関西地区の食品小売企業を下記のマトリックスにまとめてみました。
【効率/非効率マトリックス(関西の食品小売業編)】

(筆者作成)
これまで関西地区には、効率やタイムパフォーマンスを徹底的に追求した小売業がほぼ存在しませんでした。低価格スーパーは今も数多くありますが、小規模スーパーが多く、効率は追求できていません。
また、百貨店の阪急うめだ本店や阪神、阪急オアシスやビオラルのように高付加価値や楽しさ、健康を売りにしたような付加価値型店舗も徐々に増えてきました。
しかし、多くの関西の食品小売業は中途半端なポジショニングだったことは否めません。ハイ&ローを両輪で行うこと自体が価値を曖昧にしているとも言えます。
一方で、オーケーやロピア(神奈川県)のように、今、関西に進出し始めているスーパーは超低価格を売りにしていて、高効率経営であり、何よりも「タイパ」を重視した商品構成、売り場づくりを徹底しています。関西の食品小売業が従来の立ち位置のままですと、オーケーの店舗数拡大によって立場がさらに微妙になっていく可能性もあります。
新業態の開発でオーケーに勝てるか
オーケーは2025年度に兵庫県で5店舗、2026年度には大阪府で7店舗の出店を計画しています。売り上げで言えば関西地区で500億円を射程距離にしています。このEDLPに価格で対抗するのは自社の利益を削るだけです。
オーケーという名前を命名したのは故・飯田勧氏のご両親で、「発音が簡単で世界中どこでも同じという理由から」とのこと。名前の通り、オーケーの経営は、場所はどこであっても、やることは同じです。
お客様にとって正直に商売をする会社はいつの時代もファンが増え、関東か関西かなどの立地の違いも超えていきます。だからこそ、関西地区のスーパーは、いかに「楽しさ・感動」を提供できるスーパーになれるか、そのような新業態を開発する必要があります。
オーケー進出後の関西地区スーパーの課題とあり方が見えた、この半年。これからのオーケーの出店動向と競合店の動向には引き続き注目していきたいと思います。