「終わった」はずの三菱自動車がプレミアムブランドとして復活するこれだけの理由

2023年から東南アジアや中南米、アフリカに順次投入されたエクスフォース。三菱が次の10年を見据えて送り出したSUVだ。
かつて「エンジンの三菱」とまで呼ばれた三菱自動車。だが、リコール隠しや燃費偽装、そして日産傘下入りという逆風を受け、「三菱自動車」は停滞の代名詞のように語られてきた。販売網は縮小され、商品は限られ、プレゼンスは年々薄れていった。
だが水面下では静かに復活への布石が打たれていた。三菱は国内市場から一歩引き、主戦場を東南アジアへと移行。その結果、20%近いシェアを獲得した。SUVに経営資源を集中させ、プラットフォームや電子制御には日産とのアライアンスを活用することで、開発力を合理化した。そして何よりも、デザインという「見た目の力強さ」を取り戻すことにも成功した。
アウトランダーPHEV、トライトン、そしてデリカミニ—— いずれも、明確なストーリーとキャラクターをもった「選ばれる商品」として成立している。
私は、いまの三菱は、プレミアムブランドへの進化を本気で目指すメーカーと見ている。
「大SUV時代」という追い風

もともと三菱は、タフネスを売りにしてきたメーカーだ(写真はパジェロ)。
言うまでもなく、SUV全盛時代が到来している。世界中のメーカーがセダンやハッチバックを縮小し、SUVとクロスオーバーに経営資源を傾けている。ユーザーもそれを望んでいる。高い運転視点、タフな印象、使い勝手のよさ──いま乗りたいクルマの要素をすべて備えているのが、SUVというフォーマットだ。
この変化は、三菱にとってまさに追い風が吹いた瞬間だった。もともと三菱は、タフネスを売りにしてきたメーカーである。パジェロ、デリカ、ランサーエボリューション。そのどれもが、過酷な環境や競技の現場で育てられ、4WD技術や駆動制御で確かな評価を積み上げてきた。無骨で、頑丈で、走破性がある。三菱がずっと作ってきたのは、そういうクルマだった。
SUVというジャンルが主流化するにつれ、各社は「らしさ」を求めてデザインや商品性を調整するようになった。だが、三菱にとってはそれが特別な演出ではなかった。最初から、SUV的な文脈に馴染んでいたのだ。市場が求めるスタイルが、自分たちのホームグラウンドに近づいてきただけだ。
とはいえ、2010年代の三菱は、信頼失墜や開発リソース不足により、車両のレベルが時代に追いついていなかったのも事実だ。技術や車体には強みがあっても、内装の質感や電動化、安全装備の面で後れを取り、「らしさはあるが、選ばれにくい」存在だった。
アライアンスがもたらした「見えない進化」

アウトランダーPHEVは、日産の「CMF-C/D」プラットフォームを用いている
それを変えたのが、2016年に締結された日産・ルノーとのアライアンスだった。当初は、燃費偽装で揺れる三菱を救済する色合いが強く、購買統合やコスト削減といった“経営的合理化”が注目された。だが、その真価はむしろ別のところで発揮されることになった。