「アップルはAIで出遅れている」は本当か。WWDC 25で感じた「対グーグル&OpenAI」の真の狙い

基調講演の冒頭で挨拶した、アップルのティム・クック(Tim Cook)CEO。

アップルの開発者会議「WWDC 25」が、アメリカ・カリフォルニア州クパティーノにある同本社でスタートしている。

毎年、初日に実施される基調講演ではアップル製品に使われるOS群の更新が発表され、アップルが今後どの方向に行くのかを占う、重要なイベントになっている。

今年2025年に関しては、OSのデザインを久々に大幅刷新し、多数の新機能を追加したことが主軸になっている。

一方で、今年のアップルの発表は、ある種「期待はずれ」と受け止められた側面もある。グーグルやOpenAI、Anthropicなどの「AI最先端組」が発表する変化に比べると、地味で小さなジャンプに見えるからだ。

その見方は「ある側面で正しく」、別の方向から見れば「ズレのある論評」とも言える。アップルの狙いと他社とのズレ、そしてそれがもたらす意味を現地から考えてみたい。

久々の「デザイン刷新」の意味

新デザインは「Liquid Glass」。

前述のように、WWDC 25ではアップルのOS群でデザイン刷新が行われたのが最大のトピックだ。

透明でガラスを重ねたような「Liquid Glass」という表現を採用。動作や向きに合わせて自然に色彩が変化し、立体的かつ美しいデザインが実現されている。

2025年秋投入の「26」シリーズOSから採用。

こうした半透明デザインは過去からある。アップルがこうした手法を今になって採用したのは、アプリにしろOSにしろ、多彩な要素で画面内が構成され、「コンテンツや情報の上に操作ボタンやアイコンが重なる」ことが増えたためだ。

そのため、以前から「半透明なメニュー」を採用するOSやアプリは少なくなかったが、それぞれ独自に機能を搭載していたため、統一感は出にくかった。

アップルはiPhoneやMac、そしてApple Watchに至るまですべての製品でLiquid Glass表現を採用する。

アプリを作る側ではデザイン変更への対応が出てくることもあるだろうが、少なくとも「イメージを刷新する」という意味ではプラスだし、基調講演でのイメージを見る限り、確かにかなり魅力的だ。

コンテンツの上に重なるUIが増えた昨今は、透明で位置関係を把握しやすいものが有利。

過去、アップルがiOSのデザインを刷新したのは2012年の「iOS 7」まで遡る必要がある。

そう考えると、思った以上に長く使われたデザインがついに変わるわけで、本来は大きなインパクトを持って迎えられてもいいはずのものだ。

これは予想だが、2025年秋に出る次のiPhoneも、Liquid Glassのイメージを持った色や広告デザインになってくるだろう。

AI競争の中での「Apple Intelligence」

しかし、特にテクノロジーやデザインのディテールに興味がない人から見ると、新OSのデザイン変更は小さなことに思えるかもしれない。

テック業界はいま、AIによる変化の真っ只中にある。生成AIを中心に新しい技術が、「比喩ではなく」毎日のように現れる。グーグルやOpenAIはそこで戦っている。

一方で、アップルは2024年に「Apple Intelligence」を発表したものの、「Apple Intelligenceがあるからスマホを買い替える」ほどの価値を提供できていない。

Apple Intelligenceはいまだ明確な価値を打ち出せずにいる。

「クラウドで起こるAIの進化に対し、アップルはついていけていない。2024年の発表から後退している」という意見も否定はできない。

2024年に発表され、本来は今年から本格化するはずだった音声アシスタント「Siri」のApple Intelligenceによる本格的なアップデートは遅延しており、本格的なアップデートは2026年以降になる見込みだ。

そのことは確かに大きな課題だ。

他方で、Apple Intelligence自体にアップデートがないかというとそうではない。

例えば、メッセージやビデオ通話などでの「ライブ翻訳」。このうちメッセージの自動翻訳には日本語も含まれ、日常的な「言語の壁」対策に有用だ。

通話中・メッセージ利用中の翻訳を助ける「ライブ翻訳」。

画像認識技術である「Visual Intelligence」も、カメラの画像だけでなく、スクリーンショットの認識にも拡大された。

日常的にスマホで扱う画像から、AIの力を借りて情報を取り出しやすくなったわけで、これもプラスである。通話を文字化して「出るかどうか」を判断する機能や、迷惑メッセージを排除する機能なども強化される。

Visual Intelligenceはスクリーンショットにも対応。

これらの機能の中にはグーグルなどのライバルを後追いしたような機能も多いが、iPhoneなどの日常的な使い勝手を上げるにはプラスの要素と言える。

それでも、Apple Intelligenceだけでアップル製品の使い勝手を激変させるまでには至らない。やはりそれには、2026年以降登場すると言われている「改良されたSiri」を待つ必要がある。