収まらない“令和のコメ騒動” 巨大組織JAの役割と課題 民間の卸企業に買い負け?

 政府が新たに追加で放出する備蓄米の申し込み受け付けが、11日午前始まった。備蓄米を巡っては「JA全農」が落札した分の流通が滞っていると指摘されている。今、JAに求められる役割とは?

【画像】金融や保険に関する事業も…JAとはどんな組織?

■農家の“JA離れ”が加速か

JAが落札した備蓄米の現状

 まずは、備蓄米を巡るJAの対応から見ていく。課題が浮き彫りになっているとも指摘されている。

 3月から4月にかけて3回行われた政府備蓄米の競争入札で、「JA全農」は全体のおよそ95%にあたる29万6195トンを落札した。今月5日時点で、卸売り業者に落札分のおよそ49%、14万4595トンを出荷したという。

 ただ、先月下旬に随意契約で売り渡した備蓄米は、契約から数日で店頭に並んでおり、スピード感の違いも指摘されている。

 JA全農は販売するスピードについて「取引先の依頼に応じて出荷を進めている」と説明している。

農家の“JA離れ”が加速?

 また、コメの流通を巡っては、農家の間で“JA離れ”とも指摘される事態となっている。

 JAは、生産者から販売委託されたコメを、卸売り業者や小売り業者などを通じて消費者に安定供給することと、生産者の所得の向上などを目指しているという。

JA全農のコメ集荷量が減少

 ただ、「朝日新聞」によると、JAを通さず民間の卸企業に直接コメを売るケースもあるという。

 千葉県で農家を営むAさんの話では、今年の秋に収穫する分のコメ60キロを売る場合、地域のJAが提示する価格は例年2万円台だというが、民間の卸企業が提示する価格は最高で3万円台後半と破格だといい、卸企業にJAが買い負けてしまう状況もあるという。

 長期的なコメの確保を見据えて、民間の卸企業との複数年の契約を求める業者もいたという。

 こうしたなかでJA全農のコメの集荷量が減ってきているという。

 さらに、農林水産省によると、農家がJAを介さずにコメを直接販売するケースが増えているという。

■巨大組織JAの実態とは?

農協(JA)の成り立ち

 JAとはどのような組織なのか。そもそも、JAがどのように誕生したのか見ていく。

 「農林中金総合研究所」などによると、現在の農協の前身となるのが戦時下の1943年に発足した「農業会」という組織だ。国家統制の代行機関としてコメの配給など食料の統制を担ったという。

 そして敗戦後、1945年にGHQによる農地改革で、地主の農地を国が強制的に買い上げて小作農(=土地を持たない農家)に分配した。これによって小規模農家が急増していく。

 戦後の民主化のなかで、そうした小規模農家を守るなどの目的から1947年に「農協法」が制定され、共通の目的を持つ人々が相互扶助を行う「協同組合」として現在のJA=農協の基礎が築かれた。

 ただ、当時の農協は、戦時下の「農業会」の資産や事業が受け継がれ、戦後の食糧難のなかで国の食料統制の代行機関として機能したという。

米価引き上げで拡大する農協(JA)

 そして、時代が高度経済成長へと向かうなかで、コメの価格引き上げなどを掲げて組織が大きくなっていく。

 1954年までは政府が決めた価格でコメを買い上げていたが、農協はコメの価格の引き上げ運動を展開していき、農村を組織する農協の政治力に突き動かされて、政府・与党はコメの価格を引き上げるなどした。

 ただ、1970年前後にはコメの過剰生産を受けて政府が「減反政策」に方針転換すると、減反には反対しながらも政府からの補助金を受け入れて農家に生産調整を促すなど、国と農家の間で調整力を発揮していく。

 その後、農協は政権与党と「コメの価格と票を取引」していくと指摘されるようになり、農協と農林族議員、官僚のトライアングルで農政を動かしていったという。

 そして、1992年に農協は「JA(Japan Agricultural Cooperatives=日本の農業協同組合)」を愛称に使用するようになり、去年の組合員数は農業に従事する正組合員が389万人、農家ではないもののJAに出資している准組合員が630万人、合わせて1019万人に及ぶという。

巨大化するJA

 そんなJAは今事業を拡大させているという。

 JAは金融や保険に関する事業も行っている。

 農水省によると、2022年度のJA1組合あたりの損益を部門別でみると、特に好調なのは、貯金の受け入れや農業を行ううえで必要な資金の貸し出しなどといった「信用事業」で、4億3900万円の黒字。続いて、生命保険や損害保険などの「共済事業」が2億1000万円の黒字となっている。

 一方で、農産品の販売や農業資材の共同購入など、JAの本業ともいえる「経済事業」は2億6200万円の赤字だ。本業の赤字を金融や保険事業で補填している状況だという。

■小泉大臣が行った農協改革

農協改革の本丸は?

 小泉進次郎農林水産大臣がおよそ10年前に主導していた農協改革。当時は何を問題視していたのか。

 農協改革実施前のJAグループの組織図では、経済事業を担う「JA全農」や共済事業を担う「JA共済連」、信用事業を担う「農林中金」などの頂点に「JA全中」がある。JA全中は地域農協などの賦課金で運営され、各組織の指導や監査の役割を担っていた。

2015年 農協法改正

 2014年に安倍政権が打ち出した農協改革では、2015年から自民党の農林部会長を務めた小泉氏が党内の取りまとめ役を務めて、当時、農林部会は「JA全中」を問題視し、全中が経営指導で個々の農協や農家の創意工夫を縛っていると批判した。

 これに対して「農協解体につながる」とJA全中は猛反発したが、2015年に「農協法」は改正され、全中などが地域農協を指揮する指導権や農協が上部団体に納める賦課金が廃止された。

 そして「JA全中」が各組織を束ねて指導する形から、「JA全中」を「JA全農」「JA共済連」「農林中金」と同列に扱う形へと再編された。

JA全中元常務理事 福間莞爾氏の提言

 JA全中元常務理事でJA改革を提言している福間莞爾さん(新世紀JA研究会常任幹事)は、こうした組織の再編によって「JA全中が動けなくなった」といい、「JA全中を一度解体して、全国にある地域の農協をうまくまとめて動かす新たな司令塔をつくるべき」と指摘している。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年6月11日放送分より)

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