エーザイ【4523】株価は過去10年で最安値圏、今後のカギはアルツハイマー病治療薬「レケンビ」、EU承認で黒字化へ前進か?

10年来の安値圏 薬価の引き下げが米国でも懸念, 「チョコラBB」の医薬品メーカー 抗がん剤「レンビマ」が急成長, 次の柱「レケンビ」EUが一転して承認で主要市場をカバー 26年度に黒字化へ, 投資先行で利益には停滞感 今期は最終減益も株主還元は維持、配当性向108%

エーザイ【4523】株価は過去10年で最安値圏、今後のカギはアルツハイマー病治療薬「レケンビ」、EU承認で黒字化へ前進か?

10年来の安値圏 薬価の引き下げが米国でも懸念

エーザイの株価は安値圏に沈んでいます。21年6月は上場来高値の1万2765円まで買われますが、22年6月に5011円まで急落しました。23年6月に1万1250円まで反発したものの、買いが続かず、その後は右肩下がりの状況です。現在の株価4000円前後は、2014年10月の安値(4073.5円)を割り込みます。

株価が長期に苦戦する理由の1つが、薬価の引き下げ圧力です。従来は原則2年に1回だった薬価の改定が、2021年度以降は実質的に毎年実施されるようになりました(中間年改定)。また、米国では25年5月にトランプ大統領が薬価を引き下げる方針を示しています。売り上げの減少につながるとの思惑から、医薬品株には逆風となっています。

【エーザイの株価チャート(過去5年間)】

・株価:4001円(2025年6月5日終値)

10年来の安値圏 薬価の引き下げが米国でも懸念, 「チョコラBB」の医薬品メーカー 抗がん剤「レンビマ」が急成長, 次の柱「レケンビ」EUが一転して承認で主要市場をカバー 26年度に黒字化へ, 投資先行で利益には停滞感 今期は最終減益も株主還元は維持、配当性向108%

出所:Tradingview

エーザイはPBR(株価純資産倍率)基準で「JPXプライム150指数」に選ばれています。純資産に対して株価が高い、つまり投資家の支持が厚いことが評価されている格好です。医薬品の主要銘柄だけに、今後が気になっている人は多いと考えられます。

今回はエーザイに焦点を当てます。同社の概要と、次のけん引役となる新薬「レケンビ」を押さえましょう。さらに、足元の業績と見通しについても解説します。

「チョコラBB」の医薬品メーカー 抗がん剤「レンビマ」が急成長

エーザイは大手の医薬品メーカーです。1941年に日本衛材として設立し、1955年に社名をエーザイへと改めました。医療用医薬品はがん領域と神経領域で強みを持ちます。また、一般用医薬品「チョコラBB」のメーカーでもあります。25年5月には高齢者見守りのエコナビスタを買収しました。

主要製品は抗がん剤の「レンビマ」です。2015年にリリースされた比較的新しい製品ながら、25年3月期はレンビマだけで3200億円超を売り上げ、連結の4割超を占めました。レンビマを巡っては、25年5月に米国での特許侵害訴訟に勝訴したことから、独占的な販売期間の延長が期待されています。

【エーザイの主な製品の売上収益(2025年3月期)】

<がん領域:計3658億円>

・レンビマ:3285億円

<神経領域:計1999億円>

・デエビゴ:538億円

・レケンビ:443億円

・アリセプト:251億円

出所:エーザイ 決算参考資料

かつてはアルツハイマー型認知症の治療薬「アリセプト」が主力でした。しかし特許切れを迎えたことから、現在はレンビマがエーザイの屋台骨となっています。また、近年は「レケンビ」や「デエビゴ」が順調に立ち上がっており、売り上げの貢献が始まっています。

10年来の安値圏 薬価の引き下げが米国でも懸念, 「チョコラBB」の医薬品メーカー 抗がん剤「レンビマ」が急成長, 次の柱「レケンビ」EUが一転して承認で主要市場をカバー 26年度に黒字化へ, 投資先行で利益には停滞感 今期は最終減益も株主還元は維持、配当性向108%

出所:エーザイ 決算参考資料より著者作成

セグメントは主に地域別で整理されています。利益はアメリカス(北米)が中心です。主力のレンビマは売り上げの7割をアメリカスが占めており、重要な市場となっています。先述のとおり、米国はトランプ大統領が薬価の引き下げを表明しており、影響が懸念されています。

【エーザイのセグメント業績(2025年3月期)】

10年来の安値圏 薬価の引き下げが米国でも懸念, 「チョコラBB」の医薬品メーカー 抗がん剤「レンビマ」が急成長, 次の柱「レケンビ」EUが一転して承認で主要市場をカバー 26年度に黒字化へ, 投資先行で利益には停滞感 今期は最終減益も株主還元は維持、配当性向108%

※EMEA…欧州、中東、アフリカ、ロシア、オセアニア

※イーストアジア・グローバルサウス…韓国、台湾、インド、アセアン、中南米、南アフリカ等

※その他事業はライセンス収入および医薬品原料などにかかる事業

出所:エーザイ 決算短信

次の柱「レケンビ」EUが一転して承認で主要市場をカバー 26年度に黒字化へ

エーザイの次の主力として期待されるのがレケンビです。米バイオジェンと共同開発したアルツハイマー病の治療薬で、23年に米国や日本で承認を受けました。両地域で先行して販売したほか、24年6月には中国でも販売を開始します。

レケンビの売り上げは急拡大しています。25年3月期は前期比400億円増の443億円となりました。期首で掲げた目標565億円には到達しなかったものの、修正後の目標425億円は上振れています。増加はアメリカス(北米)が中心で、増収額は主力のレンビマ(同309億円増)を上回ります。

【レケンビの売上収益(2025年3月期)】

・全体:443億円(前期比+400億円)

・日本:127億円(同+123億円)

・アメリカス:261億円(同+223億円)

・中国:47億円(前期はゼロ)

出所:エーザイ 決算参考資料

レケンビの売り上げは引き続き増加が見込まれます。承認を獲得した地域が拡大しているためです。25年4月には欧州委員会から承認を受けたことで、欧州30カ国が加わりました。26年3月期の下期にはドイツとオーストリアでの販売を計画します。現在、承認は44カ国に達し、12カ国で申請中です。今期(26年3月期)はグローバルで765億円の売り上げを目指します。

レケンビについては当初、欧州は承認に否定的な見解を示していました。しかし、一転して承認されたことから、主要市場のすべてで販売できる体制が整いました。さらに、一部の地域は需要の拡大期に入るとエーザイは見込みます。エーザイはレケンビへ経営資源を集中させ、27年3月期までの黒字化を計画します。

投資先行で利益には停滞感 今期は最終減益も株主還元は維持、配当性向108%

最後に業績を確認しましょう。

エーザイは20年3月期に最高益を達成しました。レンビマの拡大が本格化し、利益が大きく増加しました。ただし、翌21年3月期はコロナ影響で減収となったこと、研究開発や販売関連の費用が増加したことから、大きめの減益となりました。以降、売り上げは持ち直したものの、レケンビなどの先行投資に伴う高い費用水準が続き、利益は停滞の傾向にあります。

直近の25年3月期は増収増益でした。レンビマが堅調に推移したなか、ドライバーのレケンビやデエビゴが大きく成長し、業績の改善が進みました。前期比で売り上げは6.4%増、営業利益が1.8%増と、期首予想をそれぞれ4.7ポイントと1.6ポイント上振れて着地しています。

10年来の安値圏 薬価の引き下げが米国でも懸念, 「チョコラBB」の医薬品メーカー 抗がん剤「レンビマ」が急成長, 次の柱「レケンビ」EUが一転して承認で主要市場をカバー 26年度に黒字化へ, 投資先行で利益には停滞感 今期は最終減益も株主還元は維持、配当性向108%

出所:エーザイ 決算短信より著者作成

なお、売り上げは今期(26年3月期)に停滞する予想です。レケンビやデエビゴは引き続き好調(それぞれ前期比72.8%増、同7.9%増)を見込みますが、主力のレンビマは各国の価格抑制策や為替影響から同5.0%減と見積もっており、連結では前期並みにとどまる計画です。

営業利益も前期並みの想定です。効率化で研究開発費や販管費の減少に取り組みますが、販売構成比の変化に伴い売上原価の増加を見込みます。純利益は、金融損益の悪化から前期比10.6%減の予想です。

【エーザイの業績予想(2026年3月期)】

・売上収益:7900億円(+0.1%)

・営業利益:545億円(+0.2%)

・純利益:415億円(-10.6%)

※()は前期比

※2025年3月期時点における同社の予想

出所:エーザイ 決算短信

配当金は前期と同額の1株あたり160円の計画です。エーザイは成長投資と安定配当の両立を掲げており、近年の配当性向は100%前後、今期も108.7%を予想します。財務の健全性は維持しつつ、レケンビを軸とした成長を通じて配当にも資金を振り向けます。

10年来の安値圏 薬価の引き下げが米国でも懸念, 「チョコラBB」の医薬品メーカー 抗がん剤「レンビマ」が急成長, 次の柱「レケンビ」EUが一転して承認で主要市場をカバー 26年度に黒字化へ, 投資先行で利益には停滞感 今期は最終減益も株主還元は維持、配当性向108%

出所:エーザイ 決算短信より著者作成

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。