次の「ロードスター(NE)」がEVになる正当性

4人の歴代主査に問うた「ロードスターの未来」, ロードスターのEV化はいつ行われるか?, パーパス(目的)ではなくソリューション(解決方法), ロードスターがどんな世界を与えてくれるのか

ロードスターの未来をロードスターに乗ってロードスターのミーティングで聞いた(筆者撮影)

次期「ロードスター」がEV(電気自動車)になる。

【写真】毎年、注目度を高めているロードスター「軽井沢ミーティング」

そんな話が、現実味を帯びてきた。

マツダ・ロードスターは、いわずとしれた、日本を代表するライトウェイトスポーツカー。

初代(NA)が登場したのが、いまから36年前の1989年。その後、2代目(NB)が1998年に、3代目(NC)が2005年に、そして現行4代目(ND)が2015年に発売となっている。

つまり、フルモデルチェンジまでの1世代当たりの期間はそれぞれ、9年、7年、そして10年で、現行のNDは登場から10年目を迎えたわけだ。

このタイミングで5代目(NE)に関する情報がマツダから出てきても、おかしくはない。

そうした中、ロードスターファンが自ら企画運営するファンイベント「軽井沢ミーティング2025」を取材した。軽井沢へは、マツダ本社から借りたNDの最新モデルで向かった。

4人の歴代主査に問うた「ロードスターの未来」

軽井沢ミーティングは近年、参加応募者が3000人を超えており、会場である軽井沢プリンスホテルスキー場駐車場と、その周辺の駐車キャパシティを考慮し、抽選で1100台の参加としている。

心配された雨も早朝にはあがり、昼過ぎには青空に。気温は20度を超えて、実に爽快だった。

4人の歴代主査に問うた「ロードスターの未来」, ロードスターのEV化はいつ行われるか?, パーパス(目的)ではなくソリューション(解決方法), ロードスターがどんな世界を与えてくれるのか

全国各地から集まった参加者は、約3割が「軽井沢ミーティング」初参加(筆者撮影)

筆者は近年、軽井沢ミーティングを定常的に取材しているが、そのたびに現在のロードスター担当主査である齋藤茂樹氏はもちろんのこと、歴代主査の貴島孝雄氏、山本修弘氏、中山雅氏にも「ロードスターの未来」に関する問いかけをしてきた。

今年の問いかけは「現時点で、ロードスターの未来をどう思うか?」である。

それに対して、齋藤主査は次のように私見を述べた。

「楽しみにしてください。EVに近々なると思いますよ」

齋藤氏が“NE”開発にどの程度関与しているかは不明だが、現ロードスター開発総責任者の見立てとして、実に重い発言だ。

続けて「ただ、ピュアガソリンエンジンのロードスターは、できるだけ長く売りたいというのが本音なので、これから先、厳しい規制対応にどれだけ耐えられるか。少なくとも、(四輪車加速)走行騒音規制フェーズ3は対応できる。国内はあまりハードルが高い規制はないので、当分いける」という。

4人の歴代主査に問うた「ロードスターの未来」, ロードスターのEV化はいつ行われるか?, パーパス(目的)ではなくソリューション(解決方法), ロードスターがどんな世界を与えてくれるのか

200台限定発売「マツダスピリットレーシング・ロードスター12R」と齋藤茂樹主査(筆者撮影)

「四輪車加速走行騒音規制(R51-03)」は、国連欧州経済委員会・自動車基準調和世界フォーラム(WP29)によって定められており、2016年のフェーズ1から段階的に規制が厳しくなっている。

2026年からのフェーズ3は対応が難しく、ピュアガソリンエンジンを搭載するスポーツカーの生産継続を諦めるメーカーもいるほどだ。

ロードスターのEV化はいつ行われるか?

そのうえでNDの先、つまり「NEをEV化するべき」という見解の理由は何か?

これについて齋藤氏は「ハイブリッドにすると、モーターやバッテリーを搭載する必要があるが、それは多分、いまのプラットフォームではできない。それをやるくらいなら、世の中が(大きく)EVになるタイミングで、一気に変えるほうがいいんじゃないかと僕は思っている」と言い切る。

これまで齋藤氏とは、さまざまな機会にロードスターの進化について意見交換してきたが、ここまではっきりとEV化に言及したのは初めてだ。

4人の歴代主査に問うた「ロードスターの未来」, ロードスターのEV化はいつ行われるか?, パーパス(目的)ではなくソリューション(解決方法), ロードスターがどんな世界を与えてくれるのか

先の「ロードスター12R」の運転席に座る齋藤茂樹主査(筆者撮影)

一般的にNEの可能性としては、マツダがワークス体制で参戦しているレースシリーズ、「スーパー耐久」参戦マシンに採用するカーボンニュートラル燃料を採用した内燃機関、またはモーターをエンジンのアシストに使うマイルドハイブリッド(MHEV)を想定する話が、メディアでは主流である。

では、仮にNDをできるだけ長く生産し続け、そしてNEへと大転換するのはいつか?

この点を考えるうえで、少しだけ時計の針を戻す。

2021年6月に行った「中期技術・商品方針説明会」で、マツダの最高技術責任者(CTO)の廣瀬一郎氏に対して、筆者は「ロードスターは永遠に不滅か?」と聞いた。

これに対して、廣瀬氏は「2030年までに全モデル電動化というロードマップにロードスターも含まれている」と答えている。

ただし、これ以降にヨーロッパを起点としたEVシフトが減速しており、また直近ではトランプ関税の影響も色濃い。

直近では、5月12日実施の「2025年3月期通期決算発表」で、毛籠(もろ)勝弘社長は、同期売上がマツダ史上初の5兆円超えとなったことを喜んだものの、2026年3月期の業績見通しについては「未定」とした。

背景として「アメリカ関税政策の動向および、市場の需要や販売価格の変動によるお客さまの受容度などアメリカビジネス環境を注視」するとの説明を加えた。

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2030年までの3つのフェーズが示された「マツダ マルチソリューション説明会2025」の様子(筆者撮影)

あわせて、これまで進めてきた「2030経営方針」の進捗についても触れ、これから迎える第2フェーズ(2025~2027年)では、技術戦略として「企業価値向上に向けたライトアセット戦略」を強調。

技術としては、電池・電動化技術・内燃機関(直列6気筒、SKYACTIV-Z、ロータリーエンジン)というこれまでの方針を継続する。

第3フェーズ(2028~2030年)の「バッテリーEV本格導入」という従来の方針に変更はない。

そうなると、EVになる可能性があるNE型ロードスター登場は、第3フェーズと考えるのが妥当だ。

NDがマツダ第6世代の「とり」を飾ったように、NEは第3フェーズの締めくくりとして2030年に登場するシナリオが似合うように感じる。

言い換えれば、NEが2030年代以降の「マツダの未来」に向けたキックオフになってほしいと思う。

パーパス(目的)ではなくソリューション(解決方法)

では、3人の歴代ロードスター主査は「現時点で、ロードスターの未来をどう思うか?」という問いにどう答えたのか。

デザイン部門を率いてきた中山氏は「(デザインとしての)見た目も(商品としての)コンセプトも、(ND登場から)10年経ったいまでも通用していると感じる」と、ロードスターミーティングの現場を見ながら実感を述べた。

4人の歴代主査に問うた「ロードスターの未来」, ロードスターのEV化はいつ行われるか?, パーパス(目的)ではなくソリューション(解決方法), ロードスターがどんな世界を与えてくれるのか

歴代ロードスターの主査を務めた中山雅氏(筆者撮影)

そのうえで「次に作る時に、軽くて小さくできるなら電動(EV)でもいいと思う。それが(さまざまな)規制や電池搭載などで重量が重くなるというのなら、なんとか(ND)を延命してほしい」と、NDベースの電動化は難しいという見方だ。

続いて、山本氏は「パワートレインはパーパス(目的)ではなく、ソリューション(解決方法)。ソリューションは時代の中で絶えず変わっていく。人々がロードスターに求めているのは、電動化かガソリンエンジンかではない。このクルマは移動の手段ではなく、人々を幸せにするクルマだから」と、EV化を否定しない。

4人の歴代主査に問うた「ロードスターの未来」, ロードスターのEV化はいつ行われるか?, パーパス(目的)ではなくソリューション(解決方法), ロードスターがどんな世界を与えてくれるのか

貴島孝雄氏(左)と山本修弘氏(右)も筆者の取材に応えてくれた(筆者撮影)

また、こんな話もしてくれた。

世の中で電動化の流れが始まった時、「ガソリンエンジンの音がするのがロードスターなんだ」という人が少なくなかったが、山本氏はこう説明したという。

「いやいや、ロードスターは社会の要請に応えなければならないし、社会からちゃんと支持されなければならない。電動化はソリューション。乗って幸せになるソリューションが電動化(EV)だから、『新しいロードスターの夢を見ませんか?』と言った」

すると、説明を聞いた人たちは「(私たちも)そんな夢を見てみたい」という反応があったという。EVになったロードスターが、どんな世界を自分たちに与えてくれるのかという、ロードスターユーザーにとっての世界観の話だ。

そして、貴島氏の答えだ。

ロードスターがどんな世界を与えてくれるのか

「(技術面では)ニュートラルステア。加速しても減速しても旋回半径が変わらないことを実現すること。エンジンがなくなりEVになっても、前後重量配分を50:50にすることで、ニュートラルステアができる」と、ロードスターがロードスターであるべき基本を改めて説明してくれた。

さらに「(ロードスターと)一緒に生活することが、楽しい。(だからこうして)ロードスターをメディア(媒介)として人が集まる。皆の幸せホルモンが出ている」と、改めてロードスターの商品意義を振り返る。

4人の歴代主査に問うた「ロードスターの未来」, ロードスターのEV化はいつ行われるか?, パーパス(目的)ではなくソリューション(解決方法), ロードスターがどんな世界を与えてくれるのか

オーナーたちの笑顔や愛車を見れば、“クルマと過ごすこと”の楽しさがよくわかる(筆者撮影)

貴島氏は、こうした“クルマと過ごすこと”の楽しさを工学的に翻訳する「感性工学」という分野を通じて、各大学で講義を続けている。

 

「なにも説明はいらない。乗ったらわかる」

それがロードスターの本質であり、あるべき姿だと貴島氏はいう。

果たして、NEはEVになるのか? 大きな期待を持って、その登場を待ちたい。