次期iPhoneの新機能が日本で使えない可能性

「スマホ新法」を研究し、機能制限について検討も, EUへの回答期限は6月26日、独自のビジネスモデルが競争を阻害と指摘, WWDC25では、これらの件への言及がなかった, 消費者は置いてけぼり、だからこそ開発者との対話を, アップルのプラットフォームを開放する動きも

WWDC25の基調講演で新しいソフトウェアに関連する発表を総括する、アップルのティム・クックCEO(筆者撮影)

秋に発表されるiPhone向けの新しいソフトウェア「iOS 26」は、物理的な検証を経て作られた美しいガラスの新デザインや、最新のAI機能、電話の文字起こしや自動翻訳、自動車との連携体験など、さまざまな機能が搭載される。

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もし、これらの期待の機能が、日本でも使えなかったら? ユーザーからすればかなりがっかりすることになるだろう。

すでに、アップルの最新機能が制限されている国もあり、日本でも同様の措置が取られる可能性がある。日本でも2025年12月に始まるスマホ新法(スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律)の影響は、意外と大きなものになるかもしれない。

「スマホ新法」を研究し、機能制限について検討も

2025年6月9日から開催したアップルの開発者会議「WWDC25」で、アップルの幹部にスマホ新法について聞くと、新たに12月から施行される日本の規制に対して、理解を深めるよう努めているとし、精査していることを明らかにした。

そのうえで、法令に遵守しながら、可能な限り多くの機能を提供できるように努めるとしている。裏を返せば、いくら発表済みの新機能であったとしても、法令の影響で提供できない可能性も存在しているということだ。

実例がある。EUでは、iPhoneの画面をMacに表示・操作可能とする「iPhoneミラーリング」機能が提供されていない。

EUでは、iPhone向けソフトウェアのiOSのような指定プラットフォーマーに対して、他社が機能のオープン化をリクエストすることができる制度があり、これに応えなければ、競争環境を阻害していると見なされ、課徴金の対象になり得る。

iPhoneミラーリングを提供することで、この機能もオープン化の対象とされ、iPhone内の情報に対する重大なセキュリティ懸念が生まれる。つまり、認証が取れていないデバイスから、iPhoneを操作するセキュリティ上の「穴」を開けることになるからだ。

加えて、現在指定プラットフォームとされていない「macOS」も、競争を阻害するプラットフォームに認定されるリスクが生じる。これらを懸念して、EUでの機能を制限することになった。

前述のように、スマホ新法がEUのデジタル市場法(DMA)に似ていることから、アップルが日本市場向けに、セキュリティやプライバシー上、極めて危険となり得る機能の開放を求められないために、機能提供を制限する可能性が出てきている。

EUへの回答期限は6月26日、独自のビジネスモデルが競争を阻害と指摘

アップルは電子機器の製造業でありながら、サービス部門の売上高が四半期ごとに4兆円に上る、特殊な存在だ。消費者がiPhoneなどの製品を買い、開発者がそれ向けのアプリを作る。アップルはアプリを販売する場を提供し、有料アプリにのみ、15〜30%の手数料を課す。そんなビジネスモデルを構築した。

しかしアプリ販売を行うApp Storeは、アップルがコントロールしており、これが競争を阻害しているのではないか?と法律で制限したのが、EUのDMAだった。

現在アップルは、iPhoneやApp Storeが、EUにおいて競争を阻害している点が指摘され、すでに800億円もの制裁金が課されている。回避策が認められなければ、6月26日以降、日次制裁が課され、追加の反論の機会を経て、10月から12月までにDMAへの非準拠が認定されれば、全世界の売り上げの10%にあたる最大390億ドルが課されることになる。

同様に制裁金を課されている企業は、同じく競争を阻害する巨大プラットフォームと認定されたFacebookやInstagramを運営するメタだ。EUは、マイクロソフト、グーグルと、アメリカのテクノロジー企業から莫大な制裁金を獲得してきた経緯があった。EU委員会自体のある種の「有望な収益源」の一つ、と見ることができる。そのため、「競争阻害」に対する純粋な行動との評価が難しい側面がある。

アメリカでは、アプリからアップル以外の課金サービスを利用しようとする際に警告画面を出している点に対して、排除するよう決定され、外部課金問題でApp Storeを閉め出されていたゲーム大手のエピックが、人気アプリをApp Storeに復活させた。

App Storeのビジネスモデルそのものが問題視されているわけではないが、過剰な自社決済への誘導が問題視される結果となった。

前述の「スマホ新法」は、原則としてEUのDMAにならっており、独占的なビジネスを展開するプラットフォーム企業を指定し、競争環境を保つよう監視していくことになる。なお、スマホ新法で指定されたのは、アップル、iTunes株式会社(アップルの日本におけるサービス部門を運営)、そしてグーグルだ。

アップルは、「App Storeによる経済圏」を定義したうえで、経済圏における売り上げの90%からしか、アップルは手数料を得ていないと指摘する。つまり、90%に対して15〜30%の手数料を課しているに過ぎず、経済圏全体からすれば、わずかなパイしか得ていない、と反論している。

さらに開発者向けに、アプリ制作のためのAPIを整備し、アプリ配信のプラットフォームを提供し、無料アプリに対してもすべての審査を行うなど、アップルの支出も多い。

アップルは、独自に開発した技術とビジネスから、適切な収益を得る自由が保たれるべきだと主張しており、同時に開発者がプラットフォーム利用の際に得られるメリットから、手数料率の妥当性を評価すべきとしている。

WWDC25では、これらの件への言及がなかった

今回のWWDC25で、個人的に気になっているのは、開発者向けに、世界中のプラットフォーム規制の動きに対して、アップルの考え方を述べなかったことだ。

「スマホ新法」を研究し、機能制限について検討も, EUへの回答期限は6月26日、独自のビジネスモデルが競争を阻害と指摘, WWDC25では、これらの件への言及がなかった, 消費者は置いてけぼり、だからこそ開発者との対話を, アップルのプラットフォームを開放する動きも

WWDC25の基調講演で新ソフトウェアを披露するアップルでソフトウェア開発のトップを担うシニアバイスプレジデント、クレイグ・フェデリギ氏。各国における競争法に関連する言及はなかった(筆者撮影)

世界中のアップルプラットフォーム向けにアプリを開発している開発者からすれば、自分たちのビジネスの基盤が変化したり、脅かされたり、余計な出費が増える可能性が出てきているわけで、今まで通りビジネスを続けることができるのか、「不安」を感じているのではないだろうか。

App Storeのビジネスが今後も維持される点について言及がなかったというのは、アプリの作り手であり、App Storeに商品を供給する役割を担う開発者の不透明感を払拭しなかった、と見ることができる。つまり対応が不十分だと思うのだ。

EUではDMAに対応するため、コア技術手数料という新しい手数料が開発者に課され、App Store以外のアプリストアを提供(サイドローディング)する場合、100万ダウンロードを超える有料アプリについて、1アプリあたり0.5ユーロが課金されることになった。

「スマホ新法」を研究し、機能制限について検討も, EUへの回答期限は6月26日、独自のビジネスモデルが競争を阻害と指摘, WWDC25では、これらの件への言及がなかった, 消費者は置いてけぼり、だからこそ開発者との対話を, アップルのプラットフォームを開放する動きも

アップルがEUの開発者向けに、DMAに関連した規約の変更を説明するサポートページ。開発者の対応や、新たにかかる費用などが説明されている(画像:アップル)

アップルは無料アプリからの収益が得られないが、有料アプリの手数料があるから、API開発や安全性を保つための審査などにコストを割いてきた背景がある。サイドローディングはそのモデルを壊すことになり、API開発のコストを回収するため、手数料を取る必要が出てきたのだ。

まだ開発者には回避策があるが、日本でもサイドローディングが義務づけられれば、アプリあたりの手数料をアップルが徴収する同様の措置を取り入れる可能性がある。その場合、アプリ経済圏の拡大の阻害や、開発者に対する追加の金銭的負担が生じ、特にスタートアップや個人の開発者にとって不利益となるかもしれない。

本来守るべきは、そうした新規参入を目論む小規模な開発者だったはずだ。

消費者は置いてけぼり、だからこそ開発者との対話を

EUの事例を見ても、競争法は一般的に、消費者の利益は加味されない。

競合する企業や市場環境が、正常に保たれ、固定の企業の独占や支配的地位の濫用が発生しないことに主眼が置かれる。

アップルは、DMAに対しても、スマホ新法に対しても、プライバシーやセキュリティ、ユーザー体験、適切なペアレンタルコントロール、課金の安全性、詐欺の防止など、消費者を守るために、App Storeの現在の環境を保つべきだと主張する。

ここが、どうにも議論が噛み合わないポイントだ。

アップルのプラットフォームを開放する動きも

いくらアップルがユーザーの利便性や安全性の保護を訴えても、競争法にとってはあまり効果がない、と見るべきではないだろうか。

他方、日本では、スマホ新法を後押しし、アップルのプラットフォームを開放する動きも出てきている。グーグル、メタ、クアルコム、ガーミンの4社が日本で設立した業界団体「オープンデジタルビジネスコンソーシアム」は、日本で50%のシェアを握るiPhoneにおいて、デジタルサービスの選択の自由やシームレスな接続性、相互運用性の実現を目指すとしている。

「スマホ新法」を研究し、機能制限について検討も, EUへの回答期限は6月26日、独自のビジネスモデルが競争を阻害と指摘, WWDC25では、これらの件への言及がなかった, 消費者は置いてけぼり、だからこそ開発者との対話を, アップルのプラットフォームを開放する動きも

『スマートフォンソフトウェア競争促進法の概要と期待される効果』の中で、公正取引委員会事務総局経済取引局総務課デジタル市場企画調査室室長補佐の曽田竜市氏が作成した、スマホ新法の消費者メリットの説明図。消費者にとっては、選択肢の確保と、良質で低廉なサービスの享受を挙げている(『国民生活』2025.02より引用)

クアルコムとガーミングは、iPhoneとシームレスに連携するAirPodsやApple Watchと同様のユーザー体験を実現するため、Bluetooth関連の機能開放を目論むとみられる。

しかしグーグルやメタは、プラットフォーマーでありながら、アプリ開発者としての立場もあり、アプリが取得可能なデータの拡大などを目論むことになるだろう。ここでも、消費者の「選択制の拡大」や、小規模開発者の「参入阻害の防止」といった目的が果たされていないことがわかる。

そのため、アップルは競争法に際して、小規模開発者が不利益を被っていない点をアピールするしかない。ゆえにWWDC25でのプラットフォームと競争法の問題への言及がなかったことが、「不十分だった」と指摘せざるを得ないのだ。