飲みニケーションなんて要らない!「たった3分の雑談」で生産性を高める北欧流チームワークとは?

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仕事仲間と腹を割って話すには、やはり飲み会に限る――今でもそう信じているビジネスパーソンも多いだろう。しかし、世界的にも生産性が高いデンマーク人は短時間の雑談や朝食会で事足りるのだという。彼らに学ぶ、職場での人間関係の築き方のコツとは?※本稿は、針貝有佳『デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

社員同士の雑談こそが

イノベーションの要だった

「雑談」がある職場では、イノベーションが起こりやすい。

 リーダー育成や企業コンサルをしているテアは、こう指摘する。

「上司がみんなの『雑談タイム』を大事にしてる職場では、イノベーションが生まれやすい」

 たとえば、みんなで雑談をしているときに部下が何気なく話したことに、上司が「あ、それいいね」と反応して、そのアイデアを拾う。そんなところから、イノベーションの火種が生まれる。

 デンマークの職場では、こういった「雑談のチカラ」を最大化させるために、ちょっとした会話をしやすい遊び心のある空間づくりや仕組みづくりをしている。

 デンマークを代表する大企業である製薬会社ノボ ノルディスクの本社を例に挙げよう。

 コペンハーゲンの北西にあるノボ ノルディスク本社の入口を入ると、まず目に入ってくるのが、吹き抜けのロビーだ。

 中央には数本の木がそびえていて、天窓からは明るい陽が差し、まるでオアシスのような空間が広がっている。

 ロビーの奥には、カフェスペースのほか、ちょっとした雑談ができるソファやベンチなどがある。また、廊下にもカウンターテーブルやハイチェアが置かれ、立ち話ができるスペースがある。

ノボ ノルディスク本社には、立ち話できるハイチェアがある 同書より転載

 オープンで開放的で、軽い爽やかな空気が流れていて「仕事感」がない。

週1回の朝食会を

「雑談タイム」に

 ノボ ノルディスク本社の職場カルチャーづくりを担当しているオーレは、同社日本法人の社長を務めていたこともある。すらっと背が高く、丸型のメガネをかけた、誠実で紳士な方である。訪問すると、ジーンズにワイシャツとセーター姿で迎えてくれた。

「日本で仕事をしてたときは、仕事帰りによく社員と外食してました。夕食を食べた後、さらにハシゴして飲んだりもしてましたね(笑)」

 懐かしそうに、日本で働いていた頃のことを振り返る。その語り口調からは、賑わう路地裏の夜の雰囲気が彷彿とするようで、この方は日本にどっぷり浸かってきたのだなぁ、となんだか嬉しくなる。

 だが、デンマークの本社では、勤務後に飲み会などはしないと言う。その代わりに、部署ごとに年に数回のイベントや交流の場を設けている。

 それから、週に1回、同じ部署のみんなで朝食会を開く。

 オーレの部署では、毎週金曜日、オフィスで30~45分の朝食会を開催する。朝食を用意する担当者は毎週替わり、上司であっても部下であっても、同じようにその担当が回ってくる。

 朝食会では、ちょっとした雑談をする。

 ある人が「最近、運転免許を取得した」という話をすると、別の人が「自分は高齢になってから運転免許を取得して苦労した」という話をする。

 こういった雑談をすることで、お互いの人柄や近況などがわかって親近感が湧くし、何よりも話しやすくなる。

飲みに行かなくても

腹を割って話せるデンマーク人

「社外でないと話しにくいこと」はないのだろうか、と思って尋ねてみると、こんな回答が返ってきた。

「そういえば、デンマークでは、飲みに行かないですし、飲みに行く必要性も感じないですね。なんででしょう。不思議ですね……。

 もしかしたら、普段からプライベートなことも報告しあっているからかもしれません。週末に参加した誕生日会のことなんかも含めて、なんでも話してます。

 あと、デンマーク人は仕事上の反対意見も面と向かってストレートに伝えるので、飲みに行かなくても済むのかもしれませんね(笑)」

 どうやら、デンマーク人のコミュニケーションは、想像以上にシンプルなようだ。なんでもストレートに話すから、水面下で細かい根回しをする必要もなければ、終業後に愚痴大会を開く必要もないのだ。

 デンマーク人の人間関係は、軽くあっさりしている。職場の人とは、飲んでディープに話すのではなく、勤務時間中に「軽い雑談」をして、お互いのことをサクッと知る。

 それだけで十分、コミュニケーションは取れるのだ。

非日常空間で

「役」を脱ぐ効用

 洗練されたオシャレなノーハウン地区に、家具・インテリアブランドAudo Copenhagen(オドー・コペンハーゲン)がある。シックな紅色のペンキで塗られた建物の中に入ると、カフェラウンジが広がり、その半階上には明るい陽が差すショップ兼ギャラリーがある。落ち着いていながら視覚的に刺激があるAudoのスペースは、ちょっとした「非日常空間」だ。私のお気に入り空間でもある。

 Audoのデザイン&ブランドディレクターであるヨアキムは、社内の打ち合わせにも、ショップやラウンジを使用することがある。開放的で自由な空間では、普段とはちょっと違う会話が生まれるからだ。

Audo Copenhagenのカフェラウンジ 同書より転載

「会議室に座ると、どうしても職場での『役』を演じてしまうからね。こっちのラウンジやショップの方に来ると、いつもの仕事上の関係が崩れて、ちょっと違う感じでプライベートに話せるからいいんだよね」

 Audoのカフェラウンジやショップには、ビジネスマンから学生、年金生活者、デザイナーまで、色んな人が立ち寄る。

 普段の「役」を脱いで、ゆっくりできる「非日常空間」。私たちはそんな場所を求めているのかもしれない。公園のベンチ、静かな温泉宿、開放的なカフェ……。

 そんな空間では、いつもとはちょっと違う「良い雑談」ができる。

「外の風」を入れると

世界が広がる

 では、Audoはどうやって、良い雑談ができる「非日常空間」を生み出しているのか。

 ヨアキムは、心地良く刺激的なクリエイティブな空間づくりには「外の風」を取り入れることが大切だと言う。

 色んな人が行き交い、外から風が入ってくるところに「何か」が起きる。だからこそ、Audoは、色んな形で「外の風」を入れる。

「外の世界、違う世界で生きている人は、別の視点を持ち込んでくれる。僕はそれが好きなんだ。ここにひとりで座ってるだけだったら、僕らは自分たちの小さな世界に閉じこもって生きることになる。

 外の人と関わって、彼らからのインプットが入ることで、自分たちの小さな世界を超えていける」

 ヨアキムは、ダイナミックな「外の風」を入れるために、異世界の人との出会いやパートナーシップを大切にする。

 ラウンジでは、ヨガやワークショップ、講演会、出版イベント、近所の人を招待する夕食会まで、幅広いタイプのイベントが開催される。

 色んな人が行き交い、「外の風」が入ってくる場所は、刺激的な「非日常空間」になる。

 そんな空間で「良い雑談」は生まれるのだ。

ランチタイムの30分を

ちょっとした近況報告の場に

 シチュエーションを変えるだけで「いつもの関係性」を崩すことができる。

 あなたも体験したことがないだろうか。廊下やエレベーター、通勤中の道や駐車場などでバッタリ会って、ちょっとした会話をしたら、その人のいつもとは違う面が見えたこと。家族・日常生活・趣味などを垣間見て安心したこと。

「役」を脱いだ「顔」が見えると、それが、仕事のしやすさにつながることもある。

 趣味や関心を知ると、その人となりや、大事にしている価値観が見えてくる。そうなれば、チームで新しいことに取り組むときに「そういえば、あの人は?」と、その役にピッタリの適任者を思いつくこともできる。

 自分のプライベートや趣味・関心を他のメンバーとちょっと共有しておくだけで、自分が面白いと感じるタスクが、自分のライフスタイルにも合ったムリのない形で舞い込んでくる。

 デンマークでは、職場でのランチタイムも、「役」を脱ぐ時間である。

 30分の短いランチタイムは、上司も部下もインターンもごちゃ混ぜだ。みんなが適当な席に座って、フラットに会話を交わす。

 主な話題は、近況報告である。週末の出来事やら昨日の出来事やら、お互いの近況をアップデートして、息抜きをしながら、お互いの「状態」を感じ合う。

 初対面の人と同席したときは、簡単な自己紹介をする。そして、この人とはもう少し話せそうだなと思ったら、プライベートの近況や自分の関心事などもちょこっと話す。そうすると、お互いの「顔」が見えるようになって、次から気軽に話せるようになる。

『デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか』 (針貝有佳、PHP研究所)

 勤務時間中の「短い隙間時間」を、お互いをちょこっと知り、お互いの状況を軽く把握するために、最大限に活用する。それこそが、デンマーク人の大切にするコミュニケーションである。

 もし読者のなかで、そんなに積極的に話しかけるなんて自分にはムリだ、と感じている人がいたら安心してほしい。デンマーク人は、とてもシャイな国民だ。少々遠慮がちで、そんなに社交的でもないから、初対面の人になかなか自分からは話しかけられない。でも、みんな、話しかけられたら嬉しい(笑)。ちょっと日本人に似ていないだろうか。

 この人だったら話してもいい、そう思ったら自分のことを少し話すだけでいい。