【遺族年金】2028年から遺族厚生年金が5年で打切り?「共働き前提」の制度改革で「遺族厚生年金の見直し」影響がある人・ない人
《遺族厚生年金に新たな加算》「有期給付加算」で現行の年金額の約1.3倍に

【遺族年金】2028年から遺族厚生年金が5年で打切り?「共働き前提」の制度改革で「遺族厚生年金の見直し」影響がある人・ない人
「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が6月13日に成立しました。
日本社会や経済の変化に伴い、家庭での男女の役割や家族のあり方は急激に変化しています。社会の実情を反映させた年金制度を構築し、より安定した生活や老後を送れるよう、さまざまな制度が改正されています。
なかでも注目されている改正点のひとつに「遺族年金の見直し」があります。遺族年金支給における男女格差の解消のため、一部の項目が大きく変更されています。
そこで今回の記事では、「遺族年金の見直し」について、遺族厚生年金制度がどのように変わったか、詳しくお伝えします。さっそくみていきましょう。
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遺族厚生年金とは?おさらい
遺族年金とは、国民年金や厚生年金の被保険者が亡くなったとき、遺族が受け取ることができる年金です。
遺族年金は、老齢年金と同じ「2階建て構造」になっており、受給要件に合致すると、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方、もしくは遺族厚生年金が受け取れます。
とくに遺族基礎年金の対象者は限定的で、子、もしくは子のある配偶者が受け取れます。2つの年金について具体的に見ていきます。
遺族基礎年金
遺族基礎年金を受け取るには、死亡した方が以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

遺族基礎年金
・国民年金の被保険者である間に死亡したとき
・国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有していた人が死亡したとき
・老齢基礎年金の受給権者であった人が死亡したとき
・老齢基礎年金の受給資格を満たす方が死亡したとき
上記の条件を満たし、下記に該当する遺族は遺族基礎年金を受け取ることができます。
・死亡した方に生計を維持されていた「子のある配偶者」
・死亡した方に生計を維持されていた「子」
※子とは、18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方
※子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子に遺族基礎年金は支給されない。
遺族厚生年金
遺族厚生年金を受け取るには、死亡した方が以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

遺族厚生年金
・厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
・厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やケガが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
・障害厚生(共済)年金(※1級、2級)を受給している人が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給権者であった人が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき
上記の条件を満たし、死亡した方に生計を維持されていた下記の遺族の方のうち、最も優先度の高い方に遺族厚生年金が支給されます。
・子のある配偶者
・子
・子のない配偶者
・父母
・孫
・祖父母
※子、孫は、18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方
※子のある妻や夫(※55歳以上)が遺族厚生年金を受け取っている間は、子に遺族基礎年金は支給されない。
遺族厚生年金の場合、妻以外の遺族には年齢要件があります。子や孫は遺族基礎年金を受給できる「子」と同じ要件ですが、夫や父母、祖父母は55歳以上であることが要件になります。ただし、受給開始は60歳からになります。
また、夫の死亡時に30歳未満で子のない妻は、給付を受けられる期間は5年間に限定されています。
「遺族厚生年金の見直し」その背景とは?
遺族年金制度は「男性は外で働き、女性は結婚したら家庭に入る」という、長らく日本で続いてきた慣習を反映して制度設計がなされています。
たとえば、男性(夫)は妻と死別しても生計が立てられるとの考え方から、55歳以下の夫は遺族厚生年金が受け取れません。また、夫を亡くした妻に支払われる「中高齢寡婦加算(※)」も男性は対象外です。※今回の改正で女性だけの加算は段階的に縮小し、廃止される予定です。
一方、夫と死別した妻は、夫の死亡時に30歳以上であれば、遺族厚生年金を終身にわたって受け取れます。ただし、妻が30歳未満の場合、年金の受給は5年間に限定されます。
このように、遺族年金制度には男女格差があることが明らかで、問題点は以前より指摘されていました。
現在の日本では、男性と女性が平等に働く社会を目指し、共働き世帯数も増加しています。専業主夫として家庭を支える男性も昨今は珍しいことではありません。
一方で、離婚や未婚による「ひとり親世帯」も増えています。結婚しても子を持たないことを選択するカップルなど、家族の形が多様化するなかで、子どもが遺族基礎年金を受け取れないという事態も生じています。
このような背景を踏まえ、今回の改正は遺族厚生年金の受給における男女差を解消し、子どもが遺族基礎年金を受け取りやすくすることを目的としています。
「遺族厚生年金の見直し」改正点は?
それでは、具体的に今般行われた改正点について、とくに「遺族厚生年金の見直し」について見ていきましょう。
なお、遺族厚生年金の見直しに関しては、2028年4月から施行予定です。

遺族厚生年金の見直し
現行制度では、子のない妻が夫と死別した場合、30歳未満の妻であれば、5年間の期限付き給付、妻が30歳以上であれば生涯にわたって給付が受けられます。
また、子のない夫が妻と死別した場合だと、夫が55歳未満であれば給付はなく、55歳以上で死別すると60歳から生涯にわたって給付を受けられます。
この男女差を解消するため、今回の改正では、60歳未満で配偶者と死別した子のない妻と子のない夫は、いずれも「5年間の有期給付」を受けることになります。また、遺族厚生年金には新たな加算がなされ(有期給付加算)、現行の年金額の約1.3倍になります。
さらに、5年間の給付が終了しても、配慮が必要な場合は引き続き、増額された遺族厚生年金を受給することができます(継続給付)。
また、以前は850万円以上の方は給付を受け取れませんでしたが、今回の改正でこの年収要件が撤廃されます。男女差や収入に関係なく、遺族厚生年金を受け取ることができるようになります。
「遺族厚生年金の見直し」影響がある人は?ない人は?
それでは、今回の年金制度改正で影響がある人、ない人を見ていきましょう。
見直しの対象者
・18歳年度末までの子がいない、2028年度末時点で40歳未満の女性
・18歳年度末までの子がいない60歳未満の男性
女性に関しては、今回の改正による影響が大きくならないように、20年かけて段階的に引き上げられていきます。
具体的には、2028年4月から無期給付の対象を30歳以上から40歳以上に引き上げ、その後、20年をかけて対象年齢を1歳ずつ引き上げていきます。最終的には無期給付の対象者は60歳以上となるようにします。
今回の見直しの影響を受けない方
①既に遺族厚生年金を受給している方
②60歳以降で死別された方
③18歳年度末までのこどもを養育する間にある方の給付内容
④2028年度に40歳以上になる女性
既に遺族厚生年金を受け取っていたり、18歳未満の子がいる人は見直しの影響はありません。
まとめにかえて
今回の記事では、「遺族厚生年金の見直し」について、お伝えしました。
遺族厚生年金が5年の有期給付に変更されたことで、5年で打ち切られるように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、低収入など特段の配慮が必要な場合は、5年を過ぎても給付が継続されます。
子のない妻や子のない夫に関しては、大きく内容が変更することになった今回の「遺族厚生年金の見直し」ですが、今までにも指摘されていた「男女の給付格差」を解消することを目的として改正されました。
給付期間が5年に短縮されることで、配偶者と死別した場合のライフプランに影響が出る可能性があります。今一度、ライフシミュレーションをおこなって、家計にどのような影響があるか確認しておきましょう。
必要であれば保険などに加入して、万が一に備える対策をおこなうことも一案です。
参考資料
・日本年金機構「遺族基礎年金」
・日本年金機構「遺族厚生年金」
・厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
・厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」