テスラがフランスで販売「67%減」の衝撃――それでも欧州EV市場全体が伸びる理由とは
欧州全域で進む販売急減
テスラのフランスでの5月の販売台数はわずか721台だった。この数字は大きく報じられた。前年同月比で見るとマイナス67%。テスラの失速が際立っている。販売不振はフランスに限らない。電気自動車(EV)先進国とされるスウェーデンでも、Model3は前年比でマイナス80%を記録した。
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欧州自動車工業会(ACEA)のデータによると、テスラの欧州連合(EU)域内における1月から4月の新車登録台数は約3万6000台減少。前年比でマイナス46.1%となった。
過去2年の実績と比較してみる。
・2023年:27万9542台(前年比+89.2%)
・2024年:24万2945台(前年比-13.1%)
2023年はEV補助金の後押しもあり、大幅に販売を伸ばした。だが2024年は補助金の終了とともに約1割の減少となった。そして2025年はそれ以上に落ち込んでいる。欧州全体でテスラの販売は低迷を続けている。
テスラは、第1四半期の不振について「Model Yのアップグレード待ち」と説明していた。しかし、今ではそれだけが原因ではないことが明らかだ。
販売不振の背景には、イーロン・マスク氏による右派政党への支持表明など、政治的なスタンスが影響しているとされる。3月には、米国や欧州のテスラ店舗前でマスク氏に対する抗議デモも発生した。こうした動きから、テスラに対する不買運動が本格化していると見てよい。
欧州全体ではEV販売が対前年増

テスラ(画像:Pexels)
ACEAの1~4月のEU域内における新車登録データによると、テスラは約3.6万台の減少となった。一方で、EV全体では対前年比+26.4%の約11万台増となり、堅調な伸びを維持している。テスラの販売が減ったぶんを、他社のEVが補ったかたちだ。結果として、EV市場全体の販売台数はむしろ増加している。
欧州では、EVブームがなお続いている。そのなかで、テスラだけが取り残されつつある。動力別の販売台数は以下のとおりだ。
・EV:55万8262台(対前年+26.4%)
・プラグインハイブリッド車(PHV):28万7850台(+7.8%)
・ハイブリッド車(HV):128万5486台(+20.8%)
・ガソリン車:104万1176台(-20.6%)
・ディーゼル車:34万8050台(-26.4%)
明らかに、ガソリン車やディーゼル車からEV・PHV・HVへの移行が進んでいる。構成比で見ると以下の順となる。
・HV:35.3%
・ガソリン車:28.6%
・EV:15.3%
・ディーゼル車:9.6%
・PHV:7.9%
・その他:3.3%
ちなみに、2023年の構成比は次のとおり。
・ガソリン車:35.3%
・HV:25.8%
・EV:14.6%
・ディーゼル車:13.6%
・PHV:7.7%
・その他:3%
この2年で、購買傾向が大きく変化していることがわかる。HVは商品ラインナップや価格面で優位にあり、EVもわずかだがシェアを拡大している。
欧州では、世界経済の波に多少の影響はあるにせよ、今後もガソリン車からHVやEVへの流れが続いていくとみられる。
値下げと充電網が後押し要因

テスラ(画像:Pexels)
テスラが売れていないなら、どこのメーカーのEVが売れているのか。答えは、テスラ以外の多くのメーカーが前年より販売台数を伸ばしている。なかでも筆頭はフォルクスワーゲン(VW)グループだ。
VWグループの第1四半期決算によると、2025年の欧州におけるEV納入台数は15万8100台。前年の7万4400台から実に+112.6%という驚異的な伸びを記録した。主なEV車種の販売台数は以下のとおり。
・VW ID.4 / ID.5:4万3700台
・VW ID.3:2万8100台
・Audi Q4 e-tron:2万2800台
・Skoda Enyaq:2万200台
・VW ID.7:1万9100台
IDシリーズのVWや、アウディQ4、シュコダのエンヤクなどが主力となっている。クプラやポルシェを含むグループ全体で、欧州のEV市場を牽引している構図だ。
販売の伸び率では、BMWグループが+64.2%、ルノーも+87.9%と好調を維持している。ちなみに、世界的EVメーカーとされる比亜迪(BYD)は欧州進出が比較的新しい。しかし、それでも前年比+133%(約1.8万台)との報道があり、存在感を強めている。
EV販売好調の背景には、まず値下げ競争がある。2025年に入ってから、EVの平均割引率は3ポイント上昇し16.7%となった。中には最大30%の値引きもあり、平均で828ユーロ(約13万円)の価格下落に相当する。
2024年、EV補助金が廃止された際、専門家の間では「新型EVの投入によって価格競争が激化する」との見方があった。現実はまさにそのとおりになった。
もうひとつの要因は、充電インフラの整備だ。VWのID.3や、ルノーの新型「ルノー5」のようなコンパクトEVでも、充電設備の整備によって冬場の使用にも耐えると認識され始めている。
今後は、大型のスポーツタイプ多目的車(SUV)やセダンだけでなく、コンパクトカーサイズのEVもさらにシェアを伸ばしていくだろう。
テスラ離れと新勢力台頭

テスラ(画像:Pexels)
テスラは欧州の消費者からEVの選択肢として外れつつあり、新たな競争時代に突入したといえる。テスラ以外の自動車メーカーにとっては、テスラの自滅によってEV販売を伸ばす好機が訪れた形だ。
欧州に進出して間もないBYDにとっても、テスラが敬遠される今は絶好のチャンスと映っているはずだ。価格競争では中国メーカーが優位に立てる。一方で、知名度や信頼感では欧州メーカーに分があるともいえる。
テスラにとっては、イーロン・マスクへの反発感情の払拭と、コンパクトEVの投入が喫緊の課題となっている。ただし、マスクへの嫌悪感は根深く、短期間で解消することは難しい。巻き返しには相当な困難がともなうだろう。
さらにいえば、マスク自身がEV販売のためにスタンスを180度転換するとは考えにくい。とすれば、テスラは今後、コンパクトカー投入以外にどのような一手を講じてくるのか。注目すべき局面である。