「半分は旅行関係者…」 万博の大阪で相次ぐ海外ビジネスイベント、好機生かせない理由は

大阪・関西万博に合わせてオランダ政府が開催したシンポジウム。ハイテク分野での日蘭連携を訴えた=5月、大阪市内
158カ国・地域が参加する大阪・関西万博は国際的なビジネスチャンスの場でもある。これまで関西との経済関係が比較的希薄だった欧州をはじめ各国は大阪で相次ぎ経済イベントを開催し、日本、関西の企業との貿易、投資分野での関係強化を図ろうとしている。ただ、準備の遅れで十分な参加者を集められなかったり、日本企業も「言葉の壁」から参加をためらったりするなど、好機を最大限生かせていないのが実情で、国境を越えた関係づくりへの支援策が求められている。

大阪ヘルスケアパビリオンを視察するタイ政府関係者(中央)=6月、大阪市内
「信頼できるサプライチェーン(供給網)はさらに重要となる。私たちはともに、次世代通信サービスを開発できる」
5月22日、大阪市中心部の高級ホテルでオランダ政府が開催した「日蘭ハイテクDXシンポジウム」で、同国のベルイヤーツ経済相は参加者にそう訴えた。会場には万博に合わせて来日したウィレム・アレクサンダー国王も出席し、国としての意気込みの大きさを感じさせた。
この日、オランダは富士通や産業技術総合研究所などと連携強化で合意。オランダは日本への最新の半導体製造機器輸出に成功するなど、電子機器分野で対日関係を強化しており、万博を機にその機運をさらに高める狙いが伺えた。

ほかにも、ポーランド北部ポモージェ県が5月27日に大阪市内で開催した経済セミナーには、ノーベル平和賞受賞者のワレサ元大統領が登壇。造船業や豊富な観光資源などが紹介された。チェコは6月4日、名産のビールをテーマにしたフォーラムをパビリオンで開催。終了後には両国企業関係者をマッチングさせるために、ビールをふるまう交流会が開かれた。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の庄秀輝大阪本部長は、万博に合わせたフォーラム開催などについて、5月末までに「約140件の相談があった」と明かす。特に欧州諸国が力を入れているといい、米政権の関税引き上げ政策で「日本との関係強化に関心が高まっている」ことが背景にあるとみる。
大阪商工会議所の根来宜克国際部長は「今まで大阪に来てもらうことができなかった国賓や閣僚が来阪している。大阪は東京に比べ国際社会からの認知度が低いが、直接大阪を知ってもらえる意義は大きい」と語る。
ただ、関西との関係が希薄だった国々が、情報も人脈も足りない大阪で商談につながる経済イベントを開催することは容易ではない。
パビリオンで企画されたある国のイベントでは、会場の入場ゲートからパビリオンまでの距離を考慮せず、開催時間と同じ時間にゲートに集まるよう周知していた。
この国に関係のある旅行代理店が「このままではイベントが成り立たない」と懸念し、あらかじめ社員を派遣したが、「参加者の約半分が、ビジネスとは関係がない旅行代理店関係者」という結果に。同様の事例は複数の国であるという。
各国は万博出展の「成果」として経済イベントを成功させたい思惑があるが、多くの国は資金力にも限界がある。関係者によれば、PRなどの準備が遅れて参加者を集められなかったり、予算不足で小さな会場しか使えない例が目立つという。
そこで大商は、万博出展国の相談に応じて会員企業に情報を発信し、関係性が見込める地元企業にイベント参加を直接呼び掛けるなどの取り組みを行っている。
一方、日本企業の側にも課題がある。ジェトロの庄氏は「外国語ができないからなどの理由で、及び腰になる企業が少なくない」と指摘する。
「スマートフォンのアプリを使った対話だけでも、多くのきっかけを得られる。これほどの人々が大阪に来てくれるチャンスは他にはない。行けば何とかなるという思いで、貴重な機会を生かしてほしい」
日本企業に積極的な動きも 海外政府招待や協定締結
万博でのビジネスチャンスを巡っては日本側も必ずしも受け身ではなく、積極的に海外と経済交流を図る動きもある。
6月中旬、万博会場で大阪府市が出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」をタイ政府関係者らが訪れた。府内を中心とした中小企業などが健康増進などのための技術を出展する「リボーンチャレンジ」というゾーンで「日本もタイも高齢化が進む。とても興味深い取り組みだ」などと述べ、熱心に見入っていた。
同ゾーンを運営していたのは大阪シティ信用金庫(大阪市)で、全国の信用金庫が会員となった金融機関、信金中央金庫(東京)がタイ政府関係者を招待した。海外政府と出展企業を引き合わせることで、企業の海外事業を支援する狙いだ。
また、阪急阪神不動産(大阪市)は5月、シンガポールパビリオンで同国の2つのスタートアップ(新興企業)支援機関と相次ぎ協力に向けた協定を締結。阪急阪神不動産は協定を通じ、大阪に進出する海外企業のオフィス需要を開拓したい考えだ。
万博は「未来の技術」をみせるだけでなく、世界の人々が集まることで、社会をよりよくしていくための具体的な動きにつなげていく舞台も提供している。それを生かすための企業の意欲が問われている。(黒川信雄、写真も)
藤山光雄・日本総合研究所関西経済研究センター所長「万博閉幕後を見据えた仕組みづくりを」
万博をビジネスマッチングの場に使う取り組みは、前回のドバイ万博で本格化したとされる。各国はパビリオン出展を通じて社会課題の解決策を提示する。多様な人々が来場する万博は、新たな人のつながりを通じてそれらの解決策をビジネスの商材として売り込む絶好の機会ともなり得る。海外の出展国が経済イベント開催に注力するのはごく自然なことだ。
それは当然、関西の経済界にとってもチャンスだ。海外企業は東京への関心が高いが、万博を通じ彼らの目を関西に引き寄せることができ、さらに従来のビジネス上の関係が深かった国々とは異なる、新たな国の企業とも関係を構築できる。特に中小企業にとっては、海外の新市場の開拓は困難だが、万博でそのような機会が提供されれば、その意義は少なくない。
万博で生まれたビジネス上のつながりをさらに強固にするには、万博閉幕後も見据えた取り組みが重要だ。ものづくりをテーマにした国際イベントを開催するなど、関西企業が長期的に海外との関係を維持できる仕組みづくりが必要だろう。(聞き手 黒川信雄)