チャイナマネーが日本株を爆買い?中国・上海の株式市場で起きた「異例の事態」

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近年の超円安傾向は、多方面に影響を及ぼしている。訪日外国人客の増加と観光地の混雑が注目されるなか、海外投資家も熱視線を送っているという。市場を賑わす新たなマネーの波は果たしてチャンスなのか、それともリスクとなるのか。個人投資家の天海氏が次なる相場の行方を読み解く――。※本稿は、天海源一郎『株と金の大投資術』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。

昨年の訪日外国人客数は過去最高

2025年はさらに増える見込み

 訪日外国人客の消費=インバウンド消費が日本経済に大きく貢献していることはすでにご存じだと思います。

 都市部にお住まいの方なら、過去には見られなかったくらい多くの外国人観光客が繁華街に押し寄せる姿を目にしていることでしょう。その規模は驚くべきものです。たとえば、都市部の飲食店に入ったところ、自分以外の客がすべて外国人だったという経験をしたことがあります。さまざまなグッズやアイテムにあふれているドン・キホーテでは物珍しそうに商品を選び、有名デパートの化粧品売り場や高級ブランド店のレジには長蛇の列、新幹線車内で、あっという間に過ぎ去る景色をスマホで撮影したりする外国人の姿が多く見られます。

 有名観光地でも同様のことが起きています。ホテルや有名旅館の宿泊料金は、おいそれとは泊まれないほど高騰しているのです。外国人観光客の財布を狙って、東京の豊洲市場にオープンした、とある飲食店の1万5000円の海鮮丼が話題になりました。日本人ならまず頼まないようなメニューですが、外国人観光客からすれば、それも思い出の一つになるのでしょう。

 日本政府観光局(JNTO)によると、2024年の年間訪日外国人客数は、12月までの累計で、3686万9900人と過去最高を記録しています。2023年4月の「水際措置撤廃」以降、訪日外国人客数は右肩上がりで回復しています。

同書より転載

 訪日外国人客数は2014年前後から急速に増え始め、2016年には2000万人の大台を、2018年には3000万人の大台を突破しました。2012年が840万人程度だったことを考えると、驚異的な増加率です。

 ご存じのように、2020年には新型コロナによって約410万人にまで激減し、その状況は2022年まで続きましたが、前述の「水際措置撤廃」以降、コロナ前の水準に戻りました。単月では、2023年10月に初めてコロナ前の2019年10月に比べて100%を突破。年間の累計でも、2019年比で78.6%、8割程度まで回復が進みました。

 この勢いが続き、2024年は過去最高となりました。2025年はさらに増える見込みです。

訪日外国人客が渡航先として

日本を選びやすくなった理由

 コロナ後の経済活動の回復に加えて、「円安」が外国人観光客を呼び込む一因になっています。2025年1月現在、ドル/円相場の水準は1ドル=155円近辺で推移していますが(一時1ドル=160円もありました)、2019年はおおむね110円前後でした。2019年の水準からは、依然として4割程度、円安に振れているわけです。

 これは、外国人からすると「物価が4割も安くなった」ということ。渡航費から滞在費、土産物に至るまで、すべてが割安になっています。

 そうなれば、「日本にいこう!」と考える外国人が増えるのも納得がいきます。

同書より転載

日本人の国内旅行も増加傾向

観光市場の規模は拡大の一途

 実は、地理的に日本に近く、コロナ前は「爆買い」などで話題となった中国人の観光客については、まだ回復の途上にあります。中国では、ゼロコロナ政策によって行動制限が長引いたことや、日本への団体旅行が解禁された時とほぼ同時期、日本政府が福島第一原発の処理水の海洋放出を開始し、中国政府が激しく非難したことから、日本への渡航が自粛されました。これらが中国人観光客が十分に回復していない背景です。

 つまり、「以前はインバウンド消費の主力だった中国人観光客が回復していないのに、他の国や地域からの観光客が押し寄せている」ということです。

 ただ、その後日本政府は中国人向けの査証(ビザ)発給に関する緩和措置を打ち出しています。団体旅行で取得するビザは滞在可能な日数をこれまでの15日から30日に延長するとし、65歳以上の中国人に限り、個人向けのビザで在職証明書の提出を不要にする措置も始めます。2025年4月13日から半年間開催される「大阪万博」への誘致や、長い旅程を組めるようになることで、訪問先の選択肢が増え、中国人観光客が地方を訪れる機会の増加を見込んだものと思われます。

 一方、日本人が海外旅行をする場合、円安は不利に働きます。これまでより明らかに割高になるからです。ニューヨークでは、有名ラーメンチェーン「一蘭」のとんこつラーメンが3000円くらいすると話題になりました。

 それならば、「海外旅行はやめて国内旅行に切り替えよう」と考える日本人が増えるのは当然です。つまり、観光地には訪日外国人客と日本人客がダブルで押し寄せることになるわけです。

 すでに、有名な観光地では「オーバーツーリズム(観光地への訪問客の著しい増加により、地域住民の生活や自然環境、景観などに対して負の影響が生じたり、観光客の満足度を著しく低下させたりするような状況)」が懸念されています。

 こうして、観光関連の需要は訪日外国人客の増加を引き金に、私たちが経験したことがないレベルにまで膨れ上がる公算が大です。今後、新たなホテルが建設されたり、これまであまり外国人が訪れなかった観光地がPRされたりして、外国人客の地方への誘致が進むでしょう。観光客の分散によって、特定の観光地などの混雑は解消される見通しですが、観光市場の規模は今後も膨らみ続けるでしょう。

観光・レジャーだけじゃない

「インバウンド関連株」

 株式投資の視点からも、インバウンド関連は大いに注目されています。以下は、訪日外国人客の増加で恩恵を受ける代表的な銘柄です。

オリエンタルランド(4661・東証プライム)

 入園者数で世界有数の多さを誇る東京ディズニーリゾートを運営。ホテルや商業施設などを含めた「都市型リゾート」を展開しています。テーマパークの入園料を値上げしたものの、客足は衰えず、2024年3月期は2019年に記録した利益を超え、過去最高の売上、利益となる見通しです。

藤田観光(9722・東証プライム)

「ワシントンホテル」「ホテルグレイスリー」などのホテルチェーンが主力で、高級宴会場・ホテルの「ホテル椿山荘東京」も経営しています。箱根で展開する旅館「箱根小涌園 天悠」、温泉テーマパーク「箱根小涌園ユネッサン」といった箱根リゾートでも知られています。

クスリのアオキホールディングス(3549・東証プライム)

 北陸最大手のドラッグストア。生鮮食品を含め、食品と調剤薬局の併設を強みとしています。ポイントは、ドラッグストアが訪日外国人が買い物をする場所としての地位を確立していること。今後、地方への誘致が増えれば、この会社にとってメリットになるでしょう。都市部のドラッグストアでは「マツモトキヨシ」などを展開する「マツキヨココカラ&カンパニー(3088・東証プライム)」に強みがあります。

日本株上場投資信託(ETF)に

多額の資金が流入している理由

 日本株の上場投資信託(ETF)に、2024年の年初からの5週間で、4000億円を超える資金が流入しました。これは約半年ぶりの規模です。従来からETFを売買している欧米の機関投資家に加えて、今回は中国を中心としたアジアの個人投資家の買いも含まれるとされています。一部では、株式市場における「インバウンド(訪日外国人)需要」と表現されており、他の主要国の株式市場よりも日本株のパフォーマンスが良い状況が続けば続くほど、こうした資金流入は増えることが考えられます。

 金融商品の調査会社である米EPFRのデータによると、外国籍の運用機関が運用している日本株のETFには、年初からの5週間で合計31億ドル(約4600億円)が流入したとのこと。ある経済紙は「5週間の流入額としては2023年6~7月(33億ドル)以来の大きさ」と報じています。

 中でも、米国のブラックロックが運用する、外国籍のETFとして世界最大の日本株ETF「iシェアーズMSCIジャパン」には、同期間で7.9億ドルの資金が流入し、運用残高は1月31日時点で152億ドルにまで膨らんだとのことです。

 海外の市場に上場する日本株ETF全体の残高は777億ドル。EPFRでデータを遡れる2002年以降で最大となっています。

日本のインバウンド需要に

海外投資家も注目している?

 中国・上海の株式市場でも、異例の事態が起こりました。

 2024年1月17日午前、中国・上海市にある上海証券取引所は、上場する日経平均株価に連動する上場投資信託(華夏野村日経225ETF)の売買を一時停止しました。同取引所によると、投資家の売買が過熱し、ETFの基準価額(1口当たりの価格)が急上昇し、「投資家が不利益を被る可能性があった」ことを考慮しての措置だそうです。この後も、複数回にわたって同様の措置が講じられました。

 最初にこの「売買停止」の一報が届いた際には、東京市場の日経平均株価はネガティブな反応を示しました。その理由は、中国のローカル投資家がこれほどまでに日本株に高い関心を持っている認識がなかったため、この売買停止の措置が「政治的な対立」から生じたとの懸念が広がったからです。

 詳細がわからない情報について、株式市場は「ひとまずネガティブに反応する」ことがあります。

『株と金の大投資術』 (天海源一郎、幻冬舎)

 中国の日本株ETFの純資産残高は、まだ数百億円規模。規模は小さいものの、このニュースは中国マネーが日本株への影響力を高める可能性を感じさせるものです。

 当然、いまは株式市場にとって好材料と認識されるようになっています。

 国内の消費や観光市場の拡大要因としての「インバウンド消費」に加え、日本の株式市場において、海外の投資家が日本株を買う「インバウンド需要」も、株価を押し上げる要因として注目されるようになっているのです。