三菱マテリアル【5711】なぜ株価低迷? 5年前水準まで下落、PBR 0.4倍台 銅が高騰も大幅減益の理由とは

株価は5年前と同水準, 銅の大手サプライヤー 超硬工具・半導体はんだ材もトップシェア, 赤字から回復も停滞 今期は営業益70%減、マージン悪化が逆風, 市況の高値圏で減益のナゾ 銅価格の上昇が利益につながらない理由

三菱マテリアル【5711】なぜ株価低迷? 5年前水準まで下落、PBR 0.4倍台 銅が高騰も大幅減益の理由とは

株価は5年前と同水準

三菱マテリアルの株価は低迷しています。2023年には緩やかな上昇トレンドが出現し、24年5月には3352円の高値をつけました。しかし、以降は一転して下落傾向となり、25年4月には1930円の安値まで売られます。

現在はやや反発した2200円台で取引されていますが、株価の5年騰落率はプラス1.8%と、5年前と同水準にとどまります。同期間に日経平均株価は77.9%上昇しており、パフォーマンスの劣後が顕著です。

【三菱マテリアルの株価チャート(過去5年間)】

・株価:2267円(2025年7月10日終値)

株価は5年前と同水準, 銅の大手サプライヤー 超硬工具・半導体はんだ材もトップシェア, 赤字から回復も停滞 今期は営業益70%減、マージン悪化が逆風, 市況の高値圏で減益のナゾ 銅価格の上昇が利益につながらない理由

出所:Tradingview

純資産から見ても、三菱マテリアルの株価は低水準です。PBR(株価純資産倍率)は0.44倍と、株価は純資産の半額以下にとどまります。純資産は株式価値の裏付けであり、その半額に満たない株価は、一般に投資家の期待が小さいことを意味します。

【三菱マテリアルのPBR(2025年7月10日終値)】

・1株あたり純資産(自己株式除く):5183.34円

・PBR:0.44倍

・(参考)東証プライムPBR:1.4倍(2025年6月)

※純資産は2025年3月末

※東証プライムPBRは加重平均

出所:三菱マテリアル 決算短信、日本取引所グループ その他統計資料

三菱マテリアルの株価低迷は、業績の苦戦が背景にあると考えられます。今期(26年3月期)は減収減益見込みで、特に利益は大幅な悪化の予想です。

なぜ三菱マテリアルは苦戦しているのでしょうか。業績の推移から探ってみましょう。

銅の大手サプライヤー 超硬工具・半導体はんだ材もトップシェア

業績の前に、まずは事業内容を解説します。

三菱マテリアルは銅や金といった非鉄金属の大手です。1871年に三菱が炭鉱部門に進出し、1873年に吉岡鉱山(岡山県高梁市、1972年に閉山)の買収から金属鉱山事業へ乗り出します。戦後は金属部門が分離したものの、1990年に再び合流し、三菱マテリアルへ社名を変更しました。

主な事業は電気銅の生産です。銅鉱石を輸入し、国内の精錬所で純度99.99%以上の電気銅を生産します。また、鉱山への投資も事業範囲です。チリやカナダで権益を取得し、銅鉱石の安定調達に取り組んでいます。また、銅鉱山への投資に伴う配当収入は業績に比較的大きな影響を与えます。

銅の原料としては、廃棄された家電や電子基盤といった、いわゆる「都市鉱山」も活用されます。三菱マテリアルは、家電や基盤のリサイクル量は世界最大級です。また、銅以外では、金や銀なども生産しており、個人向けに金や銀の投資サービス「マイ・ゴールドパートナー」も手掛けています。

素材だけでなく、加工品でも大きな事業規模を持ちます。三菱マテリアルは生産した電気銅の大半を自社で板状や線状の伸銅品に加工しており、国内のシェアはトップクラスです。また、炭化タングステンやコバルトなどから作る超硬工具は国内首位、半導体向けのはんだ材は世界首位の座を占めています。

【セグメント情報(2025年3月期)】

株価は5年前と同水準, 銅の大手サプライヤー 超硬工具・半導体はんだ材もトップシェア, 赤字から回復も停滞 今期は営業益70%減、マージン悪化が逆風, 市況の高値圏で減益のナゾ 銅価格の上昇が利益につながらない理由

出所:三菱マテリアル 決算短信

一方、近年は事業の見直しにも積極的です。三菱マテリアルは、21年3月期から事業ポートフォリオの改革を開始しており、事業の選別が進んでいます。

例えば、アルミニウム事業からは22年に撤退したほか、多結晶シリコン事業は23年にSUMCOに売却しました。またセメント事業も、UBE(旧・宇部興産)と設立したUBE三菱セメントに承継させることで分離します。UBE三菱セメントは持分法適用会社としてグループに属していますが、同社は新規上場の準備に入ったことを明らかにしており、今後の貢献は縮小する見込みです。

赤字から回復も停滞 今期は営業益70%減、マージン悪化が逆風

では三菱マテリアルの業績を確認しましょう。

三菱マテリアルは20年3月期に最終赤字へ転落しました。収益性の悪化を認めた事業用資産の減損や不採算事業の再編損失といった特別損失が重なったことが主因です。

その後、半導体や自動車向けの需要が伸びたことから、業績は22年3月期にかけては回復します。しかし、24年3月期までは自動車や半導体向けが停滞し、売り上げが減少しました。これに伴い営業利益も減少します。経常利益は、鉱山配当の増加や持分法投資損益の改善から増益でした。

直近の25年3月期は増収増益です。タングステン製品メーカーの独スタルク社の買収費用を計上した一方で、円安影響や市況の上昇、金属事業の効率改善などが業績を押し上げました。

株価は5年前と同水準, 銅の大手サプライヤー 超硬工具・半導体はんだ材もトップシェア, 赤字から回復も停滞 今期は営業益70%減、マージン悪化が逆風, 市況の高値圏で減益のナゾ 銅価格の上昇が利益につながらない理由

出所:三菱マテリアル 決算短信

しかし、今期(26年3月期)は一転して減収減益の計画です。自動車や半導体の需要は堅調を想定しますが、円高および金属事業における粗利益(買鉱条件)の悪化を見込むことから、利益は大きめの減少を予想します。

【三菱マテリアルの業績予想(2026年3月期)】

・売上高:1兆8700億円(-4.7%)

・営業利益:100億円(-73.1%)

・経常利益:330億円(-45.2%)

・純利益:200億円(-41.3%)

※()は前期比

※2025年3月期時点における同社の予想

出所:三菱マテリアル 決算短信

市況の高値圏で減益のナゾ 銅価格の上昇が利益につながらない理由

先述のとおり、三菱マテリアルは今期(26年3月期)に大きめの減益を予想します。とはいえ、中核事業である銅は値上がりの傾向が続いています。代表的なLME銅先物は高値圏にあり、今期も前期並み想定です。なぜ三菱マテリアルの業績は苦戦しているのでしょうか。

株価は5年前と同水準, 銅の大手サプライヤー 超硬工具・半導体はんだ材もトップシェア, 赤字から回復も停滞 今期は営業益70%減、マージン悪化が逆風, 市況の高値圏で減益のナゾ 銅価格の上昇が利益につながらない理由

出所:三菱マテリアル 決算説明会資料より著者作成

銅の値上がりが業績に結び付きづらい理由は、精錬会社の取り分が減少傾向にあるためです。

銅はLME先物価格を基準に取引され、その取り分は銅鉱石を産出する鉱山会社と、銅を精製する精錬会社で二分されます。精錬会社である三菱マテリアルの主な取り分は、取引価格のうち、TC(トリートメント・チャージ:溶錬費)とRC(リファイニング・チャージ:精錬費)です。

このTCとRCを「買鉱条件」と呼びますが、買鉱条件は悪化の傾向にあります。2000年代に銅価格の変動影響を鉱山会社と精錬会社で分け合う仕組み(プライス・パーティシペーション)が廃止されて以来、銅取引の多くは鉱山側の取り分となりました。

背景には精錬会社の交渉力が相対的に弱まっていることがあります。中国といった新興国の台頭で銅の需要が拡大し、銅鉱石は売り手市場となりました。売り手である鉱山側は交渉で優位となりやすく、精錬会社の取り分は圧迫されやすくなっています。

つまり、銅の取引価格の多くは鉱山会社の収益となるため、銅価格が上昇しても、その恩恵は主に鉱山側に反映される構図です。精錬会社は市況影響を受けづらく安定的な操業ができる一方で、値上がりによる収益の押し上げは小さいといえます。

三菱マテリアルは、自ら鉱山を取得したり原料にスクラップを用いたりしているため、銅価格上昇の恩恵がまったくないわけではありません。しかし、鉱山会社と比べると限定的です。銅価格の上昇に期待した投資なら、鉱山会社の株式や、銅を原資産に持つデリバティブなど幅広く視野を広げる必要があるかもしれません。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。