手頃な料金、体験コーナーや飲食スペースも充実…この夏の穴場『企業の博物館・美術館』が面白い

蒸し暑く、物価高の節約生活が続くなか、夏休みなどの余暇は気分転換して楽しみたい。テーマパークなどの娯楽施設は利用料が高いのに対し、博物館や美術館は手頃で利用しやすく、学びの楽しさもある。特に企業がPRを主な目的に運営しているところは、入場は無料か低料金で、体験コーナーや飲食スペースなどが充実しているところも多く、子連れ家族も楽しめる。

日本を代表するグローバル企業…自分だけの「カップヌードル」、「トヨタ」の原点

インスタントラーメンは日本のみならず、世界の食文化を変えたとされる。その発明者で日清食品の創業者にちなんだ体験型食育施設「安藤百福発明記念館」も備えるのが【カップヌードルミュージアム】だ。大阪(大阪府池田市)と横浜(神奈川県横浜市)にある。

そこには、自分だけの「カップヌードル」をつくることができる工房がある。4種類のスープと、12種類の具材からトッピングを4つ選び、カップもデザインできるという。公式サイトによると、入館は無料で、手づくり工房は1食500円(消費税込み)、出来上がりまで45分くらいという。

カップヌードルミュージアムにはさまざまな展示やアトラクションがあり、世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を手づくりできる工房もある。チキンラーメン発明の秘話や、世界各国でどのように食されているのかなどを学べるスペースもある。

【カップヌードルミュージアム・ 大阪池田】「安藤百福発明記念館」があり、1958年、池田市で世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」が作られた研究小屋を再現

【カップヌードルミュージアム・横浜】大阪池田にあるものと同じような施設が東日本の横浜にも。オリジナルラーメンをつくれる「ファクトリー」のほか、インスタントラーメンにまつわるグッズを販売しているミュージアムショップも

世界的な企業となったトヨタ自動車のグループ企業が運営するのは【トヨタ産業技術記念館】(愛知県名古屋市)。公式サイトによると、昨年の入館者数は43万人を超えた。入館料は一般の大人1000円、小学生200円など。創業者が織機の研究開発をした試験工場の場所と建物を利用したという。

この記念館にはさまざまなコーナーがあり、繊維産業の発展をたどることができるほか、金属加工の実演もある。自動車館には年代モノの車など、さまざまな車が展示され、生産技術を学ぶことができるという。レストランや図書館も併設され、楽しみ方は自由だ。

【トヨタ産業技術記念館】トヨタ自動車グループ発祥の地で、繊維産業から自動車産業へと発展をとげたグループの移り変わりの歴史を、動画や展示などで学ぶことができる。実演コーナーもあるほか、飲食レストランや図書館なども

 

箱根、札幌…観光地での滞在にアートな思い出をプラス

日本を代表する観光リゾートの箱根には、【ポーラ美術館】(神奈川県箱根町)がある。公式サイトによると、化粧品でおなじみのポーラ創業家の2代目が収集してきた洋画や日本画、磁器やガラス工芸などを展示する。建物は箱根の森に溶け込むようになっているという。

ポーラ美術館にはレストラン・カフェやミュージアムショップなどもあり、ゆっくりとした時間を過ごせそうだ。入館料は大人2200円、中学生以下は無料など。強羅駅からは無料送迎バスもあるという。

【クロード・モネ「睡蓮」所蔵:ポーラ美術館】フランス印象派のモネは「睡蓮」を連作しており、その中の1点。自宅の日本趣味の庭園の池には日本風の太鼓橋がかかり、睡蓮の花が咲き、それを描き続けていたとされる

【ルノワール「レースの帽子の少女」所蔵:ポーラ美術館】ポーラ美術館の作品紹介によると、袖口のヴォリュームなどドレスの描写にもうかがえるように、ルノワールは衣装の質感を描き出すのが得意だったという

【サッポロビール博物館】は北海道札幌市にあり、北海道開拓の明治時代からのビールづくりの歩みを学ぶことができる。サッポロビール園には、ジンギスカン料理を楽しめるなど、いくつかのレストランやビアガーデンもある。

サッポロビール博物館の公式サイトによると、自由見学は無料で、予約が必要な有料ツアーもいくつかある。たとえば、プレミアムツアーは大人1000円などで、ビールの試飲を含めて約50分のコースになっている。

【サッポロビール博物館】明治期の北海道開拓事業から受け継がれ、サッポロビールが歩んできた歴史を紹介。要予約の有料ツアーでは詳しい説明付きで試飲もできる。併設のサッポロビール園では生ビールとジンギスカンを楽しめる

企業の美術館には、企業の創業者が巨額の財を成し、趣味で収集した作品を公開したものがある。ブリヂストン創業者にちなむ【アーティゾン美術館】(東京都中央区京橋)、紡績業などで成功した創業者にちなむ【大原美術館】(岡山県倉敷市)、最近の開設では事業家・投資家として成功した起業家の現代アートコレクションを公開する【植島美術館】(東京都渋谷区渋谷)など。

【アーティゾン美術館】ブリヂストン創業者が収集した美術コレクションをもとに、財団が管理運営し、所蔵作品をさらに充実させて展示公開している。作品は古代美術、印象派、日本の近世美術、日本近代洋画、20世紀美術、現代美術など

国公立の美術・博物館とは一味違う飲食や物販などの付帯サービスにも注目

こうした企業の美術・博物館について、博物館経営論の専門家、平井宏典・和光大学経済経営学部教授は次のように話す。

「その充実したコレクションをもとに、飲食や物販などの付帯サービスの質も高い企業美術館は業界内でも一目置かれています。そのような館は、財団法人化することで母体となる企業から一定の距離を置くなど、ガバナンス面も考えられています」

企業が設立にかかわっている以上、製品やサービスの売り上げ向上や知名度アップなど、本業への貢献を期待しているのは当然だが、運営が財団法人化されていると、本業の企業組織からは一定の距離を置いた存在になっているという。

一方、企業博物館は工場見学のPR施設など、製品やサービスを強く宣伝するものが少なくない。平井教授は「博物館は収集保存・調査研究・展示教育の基本機能を具備していることが求められます。その点で、博物館と言い難い館も少なくありません」と話し、企業博物館についての学術的な研究が遅れているという。

とはいえ、例えばビール工場の見学では、その歴史や醸造技術を知ることができるなど、利用者にさまざまな学びの楽しみを提供してくれる。

企業博物館については

「特有なコレクションと公立の枠に縛られない柔軟性があります。今後も時代に合わせてユニークな館が生まれるだろうという期待感があります」(平井教授)

こうした施設を訪ねる際には、必ず、公式サイトや電話の問い合わせなどで開館日時や入館料の有無、事前予約が必要か、交通アクセスや駐車場の有無、服装や手荷物などの注意事項を事前に確認しておきたい。特に、衛生管理の厳しい食品などの工場見学では服装や履物など、相応しくないものを避け、気持ちよく楽しめるようにしたい。

取材・文:浅井秀樹