シベリアの「巨大な穴」が急速に広がっている…温暖化を加速させる可能性も

5月の衛星データに基づくグーグル・アースに表示された「バタガイ・クレーター」。

  • 衛星画像によって、シベリアにできた巨大な穴が急速に拡大していることが示された。
  • 「バタガイのメガスランプ」は北極の気温上昇にともない、凍土が融けて形成された。
  • これは、気候危機の加速によって変わりつつある北極の風景を示す際立った例となっている。

巨大な穴がシベリアの陸地を切り開いている。宇宙から撮影した衛星画像によって、それが急速に成長していることが示されている。

「バタガイ・クレーター(Batagay crator)」と呼ばれるその穴の形は、エイやカブトガニ、巨大なオタマジャクシに似ている。1965年に撮影され、その後、機密解除された衛星画像では、確認するのが困難なほど小さな穴だった。

だが今では、急峻な崖のある大きな裂け目となり、宇宙からでももはっきりと見えるようになっている。

アメリカ地質調査所によると、1991年から2018年の間に穴の大きさは3倍になった。

1965年に撮影された衛星画像は、「バタガイ・クレーター」が広がりはじめた当初の様子を捉えている。

1999年(左)と2017年(右)の衛星画像は、バタガイ・クレーターの成長(そして衛星の撮影機能向上)を示している。

「バタガイカ」や「地獄の入り口」と呼ばれることもあるバタガイ・クレーターは、地球全体に影響を及ぼす重大な問題を象徴しており、その問題はしばしば目に見えないことがある。

シベリアにあるこの穴は何なのか

北極圏は地球の他の地域よりも急速に温暖化が進んでおり、以前は永久に凍っていると考えられていた「永久凍土」までもが急速に融解している。

バタガイ・クレーターは、実際にはクレーターではない。世界最大の「後退的融解スランプ」と呼ばれる穴で、永久凍土が融解することで地面が崩れ、周囲の土がその穴に滑り込んで地滑りを引き起こすことで形成される。

北極圏には何千もの融解スランプがある。しかし、バタガイ・クレーターはその巨大さからメガスランプと呼ばれるようになった。バタガイという名は、近郊の町の名前にちなんでいる。

ドローンで撮影したバタガイ・メガスランプのふち。

セントルイス・ワシントン大学の地球物理学者、ロジャー・ミカエリデス(Roger Michaelides)がBusiness Insiderにこう語っている。

「永久凍土は、最もフォトジェニックな被写体というわけではない。というのもほとんどが地下の凍った土壌であり、このメガスランプのように何らかの方法で露出しない限り、見られないからだ」

だからこそ、バタガイ・クレーターは有名になり、未来を予兆するものだと考えられている。

地球の未来の解読に、バタガイ・クレーターが役立つかもしれない

2020年に撮影されたバタガイ・クレーターの近赤外線画像。

永久凍土が融解すると、何世紀にもわたって凍りついていた動植物の分解が始まり、二酸化炭素とメタンが大気中に放出される。

これらは強力な温暖化ガスであり、気温上昇をますます進行させ、永久凍土の融解を加速させる。

この悪循環は深刻な影響を及ぼすだろう。永久凍土は北半球の陸地の15%を覆っており、大気中の2倍の二酸化炭素を含んでいるからだ。

ある研究によると、産業界や各国政府が温暖化ガス排出量を積極的に抑制し、気温上昇を抑えなければ、永久凍土の融解により2100年までに排出される温暖化ガスは、大規模な工業国と同じ量になると推定されている。

「このフィードバックループや、それがどのように作用するのかについては、わからないことが多い。しかし、地質学的に非常に速い時間スケールで気候システムに極めて大きな変化が起きる可能性がある」とミカエリデスは述べている。

つまり、永久凍土の融解は、気候危機を急速に悪化させる可能性があるということだ。だがそのプロセスについては解明されていない。バタガイ・クレーターのような極限の環境を研究することで、永久凍土の融解を理解し、将来を見通す手がかりが得られるだろう。

衛星画像とドローンのデータを用いてバタガイ・クレーターの3Dモデルを構築し、その拡大速度を計算した研究論文が、2024年6月15日付で『Geomorphology』に掲載された。

研究チームは、バタガイ・クレーターで融解した氷と永久凍土の量が、ギザのピラミッド約14個分に相当し、クレーターの体積が毎年約100万立方メートル増加していることを明らかにした。