丸紅が「10兆円クラブ入り」狙い“投資支援専門”の新組織。三大商社に並べるか

丸紅。この春に新社長が就任し、さらなる成長に向けて新組織を設置した。
2024年の収益は7兆円超。2025年3月期には純利益で5000億円を見込む。時価総額も約4兆円と、国内ではトップ50に入る巨大企業——。それでも業界内では常に「4番手争い」を強いられているのが、総合商社・丸紅の立ち位置だ。
丸紅はこの4月、2019年から社長を務めた柿木真澄氏の後任として大本晶之氏が新社長に就任。2月に発表した中期経営戦略では、2030年度までに「時価総額10兆円」を目指すと表明している。
伊藤忠商事、三菱商事、三井物産という三大商社に肩を並べるうえで、成長曲線をどう描くのか。注目したいのが、この春から一部を除き全ての営業部門に新設された投資支援の専門組織である「成長投資マネジメント室」の存在だ。
丸紅で経営企画部長を務める若山美奈子執行役員に、時価総額10兆円実現に向けた新組織の役割と投資戦略を聞いた。
これまでの「つまずき」を繰り返さない

丸紅、経営企画部部長の若山美奈子執行役員。
—— 新社長が就任し、時価総額10兆円を目指す方針が打ち出されました。新組織として成長投資マネジメント室を設置した意図は。
若山美奈子執行役員(以下、若山):時価総額10兆円という大きな目標を掲げる中で、丸紅のこれまでの成功や失敗、つまずきを分析してきました。その中で、やはり規模の大きな投資を計画通りに仕上げていくことや、企業価値の評価(バリュエーション)や交渉事を外さないように、領域を選びながらやっていくことがあらためて重要だと総括しました。
減損に至ってしまう投資を可能な限り減らし、成功する確率を上げていくには、事業領域に対する専門性だけではなく、「契約書に盛り込むべきこと」や「良い条件を勝ち取る交渉方法」といった投資実務の経験値も必要になってきます。ただ、これまでは部門の中でも経験値にばらつきがありました。
そこで、(各営業部に)専門の組織を設置して実務経験が豊富な人材を配置することで、投資の成功確率を上げていこうと、今回の組織改編を行いました。
—— 成長投資マネジメント室では、具体的にどういったタスクや数字を背負うのでしょうか。投資といっても、設備投資やロールアップM&A、新事業開拓など、さまざまな形があります。
若山:まず、営業部として追っている数値目標はありますが、成長投資マネジメント室自体に数値目標のようなものはありません。投資については、中期経営戦略の中で「戦略プラットフォーム型事業」に集中的に投資していく方針を打ち出しています。
例えば、既存の戦略プラットフォームのタックイン買収(小規模事業の買収、既存事業への統合)や、設備投資でビジネスを大きくしていくようなケースも投資です。難しい投資ですが、新たな事業の柱となる会社をM&Aすることもありえます。
営業部にいると、どうしても自分たちがやっている領域に集中して、どれも素晴らしい投資案件だと思ってしまいがちです。そこで、成長投資マネジメント室では、少し引いた目線から客観的に市場性や拡張性、付加価値の付け方などを分析して、投資をすべきかどうかを判断する役割を担います。
ほかにも、デューデリジェンスで何を潰していくべきかということから、契約交渉、バリュエーション算定などまで含めて、先導・伴走し、質の高い投資に仕上げていく。そんな役割を担っていきます。

この4月から丸紅の社長に就任した大本晶之氏。2月に発表した中期経営戦略の実現に向けて、丸紅を率いる。(撮影:2025年2月)