日産が突きつける「サプライヤー大淘汰時代」 部品70%削減! 現場に突きつけられる技術・コストの残酷な現実

日産改革が迫る国内サプライヤー淘汰

 日産自動車のイヴァン・エスピノーサ社長は、「私のことを『イヴァン』と呼んでほしい」と語り、親しみやすさを演出しているという(『FACTA』2025年9月号)。協力的な姿勢を示す意図があるとみられる。

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 しかし一方で、抜本的なサプライヤー改革を進める方針も明らかにしている。部品の種類を

「70%削減」

し、サプライヤーも見直す計画だ(同紙)。限られたサプライヤーにより多くの仕事を集約し、コスト削減を狙う。

 この方針を受けて、日本国内のサプライヤーは不安を強めている。従来の国内サプライヤー群は淘汰される可能性が高い。さらに、中国現地部品の活用も視野に入っていると考えられる。この現実を各社はどう受け止めるべきか、今後の戦略が問われている。

日産を突き動かす中国基準

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日産・イヴァンエスピノーサ社長(画像:日産自動車)

 中国は電気自動車(EV)市場で世界最大のシェアを握り、存在感をますます強めている。2024年の中国自動車販売は約3144万台に達し、そのうちEVは約772万台で、国際市場全体の約24.6%を占める。EVとプラグインハイブリッド車(PHV)の合計では市場シェアは約40.9%に達する。

 中国政府は電動化技術を積極的に推進しており、最大2750ドルの補助金をともなう下取り制度も導入した。充電インフラも急速に整備され、2024年には公共用EV充電器が350万台に達し、世界の急速充電器の約80%を占める。中国ブランドの

・BYD

・NIO

・シャオペン

・理想汽車

などもEV・PHEV市場で勢力を拡大し、世界的に安定化している。バッテリー市場でも、リン酸鉄リチウム(LFP)の生産や豊富な鉄鉱資源を活用し、グラファイトでは世界シェアの90%以上を占める。

 こうした状況を踏まえ、日産は競争基準を国内ではなく中国市場に合わせざるを得なくなった。コストや技術水準は中国によって規定されつつあり、開発力の低下も考えると、中国との共存は現実的な選択肢となる。

サプライヤー経営圧迫

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サプライチェーンのイメージ(画像:Pexels)

 日産系サプライチェーンの1.9万社のうち、7割は売上高10億円未満の小規模企業である。日刊工業新聞2025年5月20日によると、ユニプレス、ヨロズ、ファルテック、アルファ、パイオラックスの5社の2025年3月期営業利益は、前期比26.4%減の181億円に落ち込み、2026年3月期も前年比15.7%減の153億円と低迷が続く。中小サプライヤーの4割が減益、15%は赤字で、状況はさらに悪化する見通しである。要因は、

・中国をはじめとする世界市場での競争激化

・日産の販売不振

にある。加えてマレリ破綻や河西工業の赤字、二次下請けの倒産などが連鎖し、中小企業を直撃する現実がある。国内の労働力不足や少子化も重なり、事業維持が困難なサプライヤーも少なくない。日産はこうした状況から脱却する必要に迫られている。

 コスト競争も厳しい。BYDの自家用EVは税込み360万~450万円程度で販売され、日産リーフの408万~584万円と比べ安価である。車種の違いはあるものの、気軽に乗ってもらうという意図は共通であり、価格差は無視できない。BYDは独自開発のバッテリーで優位性を確保しており、電池の寿命や容量によるコスト差も大きい。日産には中国メーカー並みのコスト競争力が求められ、中堅・中小のサプライヤーは影響を強く受ける構図となっている。再編や淘汰は避けられず、サプライヤーは日産の動きを恐れている。

 日産は2024年3月、下請法違反にあたるリベート課金で公正取引委員会から勧告を受けた事例もある。今回の状況も含め、日本のサプライヤーは不信感を抱きつつも、事業継続のために耐えざるを得ない。こうした不健全な関係のなかで、サプライヤーは生き残りをかけた厳しい日々を送っている。

中国基準に揺れる国内市場

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中国(画像:Pexels)

 政府の基本方針は、市場の原理に委ねる姿勢にある。補助金や金融支援は延命策に過ぎず、持続可能な解決策とはいえない。支援があっても、労働力の減少や国内生産規模の縮小は避けられない。市場の競争原理が基本であり、中小企業庁が淘汰や再編をやむなしとするのも理解できる。

 電動車時代の到来にともない、中国サプライヤーの技術や製品を取り込むことは、国民生活の観点からも必ずしも悪いことではない。日本は人手不足で多くのサプライヤーが存続困難になる可能性がある。

 世界的にコストパフォーマンス重視の時代となり、中国勢を巻き込んで電動車市場を拡大する方向は否定できない。メーカー側も車種拡大を止めることはできず、

・開発力低下

・知財面

を考えれば海外勢を活用する方が長期的に有利だ。

 こうした状況を踏まえると、政策的に国内サプライヤーを保護することが最適とはいえない。自動車産業を取り巻く構造的現実は、電動車に強い中国を基準とした競争環境に向き合う必要性を示す。

 国内中小サプライヤーの淘汰は避けられず、政府の対応も淘汰を前提にしたものに限られる。日産自動車の現状は、日本の製造業が直面する冷徹な産業構造の実像を浮かび上がらせている。

高付加価値で生き残る道

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日産自動車のロゴマーク(画像:EPA=時事)

 とはいえ、日本のサプライヤーが戦々恐々とする状況は好ましいものではない。

 いくつか解決の道筋は考えられる。まず国際分業の再設計だ。日本のサプライヤーが得意とする高付加価値分野に集中し、中国勢と棲み分けを図る方法がある。

 中小企業の共同化や再編も可能で、地域単位や業界単位で統合を進めることで効率化が見込める。政策や制度による介入も考えられ、戦略的ファンドが再編を主導する方法もある。

 さらに販路を多様化し、日産依存から脱却して海外市場を取り込む手段もある。日本は少子化や人口減少に直面しており、サプライチェーンの縮小と再編は避けられない。しかし、構造を再設計すれば新たな競争力を生むことも可能だ。

 淘汰の痛みはともなうだろうが、今は日本が新しい基盤を築けるかどうかの岐路に立つ時期である。日産以外の事例でも同様で、日本のサプライヤーに厳しい環境が続くのは確かである。