日経平均「7万円」到達も決して夢物語ではない

日経平均株価が7万円に到達する日は来るのでしょうか?(写真:chachacha / PIXTA)
「日経平均7万円」のシナリオ
株はインフレに強い資産で、日本においてもインフレ下で株価が上昇する可能性が高いと私は考えます。
【グラフで確認】日経平均7万円のシナリオ
これまでの30年間は日本がデフレだったので株価が上昇しなかったのに対して、これから何十年も続くインフレ下では、日経平均は上昇する可能性が高いということです。では、そのインパクトをどのように見ればよいのでしょうか?
三井住友DSアセットマネジメントが2024年に提唱した「日経平均7万円」シナリオが分かりやすいので、ご覧ください(下図)。提唱されてから少し時間が経っているので、足元の日経平均をベースに調整したうえで、その内容をご紹介します。

(出所:『投資の超プロが教える! カブ先生の「銘柄選び」の法則』)
世界の株式市場の過去30年間の年間の平均上昇率が8%程度ですので、1株当たり利益が9%ずつ増加して、その分だけ株価が上昇するという、このシナリオは、決して荒唐無稽な数字ではありません。
むしろ私たちは30年間のデフレを過ごしているうちに、大事なことをひとつ忘れていました。それは、インフレで企業の売上は拡大し、それに伴って利益も拡大するという点です。
JR東日本の値上げの歴史
なぜインフレで企業業績は増加するのでしょうか? 身近な事例としてJR東日本を取り上げてみましょう。
JR東日本は2024年12月に値上げを発表しました。値上げ率は7%で、26年3月から実施予定とのことです。値上げが実施されると、どのようなことが起こるでしょうか?
値上げが行われても、おそらくJR東日本の利用者数は変わらないでしょう。なぜなら、首都圏の住民は世界最大の鉄道利用者だからです。世界最高峰の「乗り鉄」ともいえます。
世界の駅別の乗降客数を見てみましょう。1位から3位は日本が誇る不動のトップスリーで、順に新宿、渋谷、池袋です。4位が梅田(大阪)で、そのあと横浜、北千住、東京、名古屋と続き、9位にようやくインドのハオラ駅が登場します。そして10位は品川です。トップ10に海外の駅は1つだけで、JR東日本の駅が上位7駅を独占しているわけです。
JR東日本圏内の住民は車やバスなどの移動手段をあまり使わず、私鉄や東京メトロでの代替も限定的だと考えられます。値上げで利用者数が減らないのであれば、値上げ分の多くがそのまま利益として残ります。
JR東日本の売上は2.8兆円程度です。会社の2024年3期の営業利益計画は3700億円です。JR東日本は駅ビルなどの鉄道以外の事業もありますので、JR東日本が7%の値上げを行ったときのインパクトは、900億円程度の増益効果といわれています。25%近い利益押上げ効果になるわけです。値上げ=増益効果が大きいことがご理解いただけるでしょう。
インフレを忘れてしまっているという人も多いと思います。その観点からJR東日本の値上げの歴史を見てみましょう。
JR東日本が発足したのは1987年です。発足後の値上げは4回しかありません。値上げ率も1.9%〜2.8%と、ほとんど気づかれないような値上げです。
国鉄時代までさかのぼると、目立つところでは、1981年の9.7%の値上げ、1984年の8.2%の値上げがあります。こうして見ると、JR東日本の今回の7%の値上げは、少なくとも国鉄時代のインフレ期なみの値上げであることがわかります。
しかし、1981年は昭和56年です。1984年は昭和59年です。当時の記憶が残っている人はほとんどいないでしょう。
2000年代のドイツと驚くほど似ている
「日経平均7万円」説を提唱しているのは三井住友DSアセットマネジメントですが、私が唱えているのは、「株式持ち合い解消で日経平均7万円」説です。
日本は先進国では珍しく、株式持ち合いを行っている国です。上場企業同士がお互いの株を保有し合います。その目的は、互いに株を保有し合うことによって買収対象になることを避け、互いに株主総会で賛成投票を行うことで株主の批判をかわす狙いがあります。
実は、株式持ち合いを行っていた国が日本以外にもう1カ国ありました。ドイツです。
ドイツは日本と似たような株式の持ち合いを行っていました。しかし弊害が多く、2000年代に株式持ち合いのほとんどを解消しました。当時のドイツと現在の日本があまりにも似ているので、ポイントをまとめます。
順番が前後しますが、今の日本と驚くほど似ていませんか?
②の持ち合い解消は現在進行中です。③は同意なき買収の指針を経済産業省が2023年にまとめました。④は日本でも2015年に導入になっています。
ドイツの株価指数を見てみましょう。下図のとおり、改革が始まった1998年から2年間でDAX指数(ドイツ株価指数)は2倍になっています。日経平均がドイツと同じような株価形成になったとすると、日経平均は持ち合い解消が積極化した時期の日経平均3.5万円から、2年間で7万円まで上昇することになります。

DAX指数(ドイツ株価指数)の動向(出所:『投資の超プロが教える! カブ先生の「銘柄選び」の法則』)
なぜドイツ市場は大幅に上昇したのでしょうか?
その背景には、上場企業による株主価値の拡大、すなわち時価総額の最大化への取り組みがありました。具体的には、投資家やアナリストの評価を意識し、「事業の集中と選択」を積極的に進めたのです。
企業は競争力を失った事業を売却し、不採算事業を縮小する一方で、自社の強みがある分野に経営資源を集中させました。これらの取り組みの結果として、株価が上昇したのです。
日本企業にもできる?
日本企業にそんなことができるのか、という疑問の声が聞こえてきそうですが、すでに立派な前例が存在します。日立です。
日立は2016年以降、日立化成や日立金属など8社の上場企業を売却しました。その際の判断基準は明確でした。たとえ黒字事業であっても、一定の収益基準を下回る場合や、コア事業でないと判断された場合は売却対象となったのです。
一方で、コア事業においては積極的な買収を展開しました。一例として、米国のIT企業「グローバルロジック」社を1兆円で買収しています。
日立の株価を見てみましょう。2016年に500円前後だった株価は、現在では3500円程度まで上昇しています。約7倍です。経営改革の成果が如実に表れていることがわかります。
現在の日本企業は、2000年代のドイツと同様の経営環境に置かれています。今後、事業の集中と選択を進める企業が増えれば、第二、第三の日立が誕生する可能性は大いにあります。
そしてその結果、ドイツと同じ道をたどって、日経平均株価が7万円に到達することも決して夢物語ではないと考えています。