インデックスファンドが「退屈」を利益に変えた

退屈なものが素晴らしく、そして豊かなものになり得る。投資信託と上場投資信託(ETF)への長期投資によるリターンは、まさにそれが当てはまる。

ここで取り上げるのは「インデックスファンドの台頭」だ。個人向け金融の分野ではこの50年ほど、特に興味深いーーそして特に刺激の少ないーートレンドとして、同ファンドが広がりを見せてきた。

個人投資家にとってインデックスファンドは、1928年に投信を購入できるようになって以降で最も持続的・変革的なイノベーション(技術革新)だろう。

1976年に初の個人向けインデックスファンドが設定され、一般の人々にとって投資をよりシンプルで理解しやすいものにするプロセスが始まった。個別株を選定したり、投資判断を下してくれるファンドマネジャーを選んだりする必要はない。S&P500種指数のような、なじみのある名称の「市場全体」を買うだけでよい。

インデックスファンドはまた、ウォール街の秘密の一つを明らかにした。高給取りのファンドマネジャーが運用する高コスト投信のリターンは、長期的には市場全体のリターンをほとんど上回ることがない、ということだ。これに対してインデックスファンドは、少額の手数料を除けば、誰でも市場全体と同等のリターンを得ることができる。現在、手数料は資産額の100分の数パーセントだ。

しかし、1976年のインデックスファンド第1号の立ち上げはお粗末で、米資産運用大手バンガード・グループが募集を始めた時、まさに閑古鳥が鳴いていた。バンガードは「ファースト・インデックス・インベストメント・トラスト」向けに1億5000万ドル(現在のレートで約222億円)の獲得を目指したが、募集額は1130万ドルにとどまった。S&P500種指数の全構成銘柄を100株ずつ買うこともできないほどだった。

後に「バンガード500インデックス・ファンド」と改称された「ファースト・インデックス・インベストメント・トラスト」の年次報告書

それから50年近くがたち、インデックスファンドは人気の投資商品となった。ファンド調査会社モーニングスターによると、6月30日時点で、インデックスファンドの運用資産は米国のファンド運用資産全体の33.73%を占める。1993年2月は1.77%に過ぎなかったという(モーニングスターは同月、アクティブファンドおよびインデックスファンドを測定する「完全な」統計を初めて発表した)。

6月30日時点で、バンガード500インデックス・ファンド(1981年にファースト・インデックス・インベストメント・トラストから改称)とその姉妹ETFの運用資産総額は1兆5000億ドルだった。バンガードのトータル・ストック・マーケット・インデックスファンドとその関連ETFは同1兆9000億ドル。

全ては手数料次第

1974年にバンガードを設立したジャック・ボーグル氏は、個人投資家にインデックスファンドを提供できないか常に考えを巡らせていた。当時は、平均以上のリターン獲得を目指すファンドが大きく宣伝され、そこに投資マネーが一斉に流れ込んでいた。しかし、年単位で平均以上のリターンを挙げるファンドがあっても、長続きしないことがよくあった。

ボーグル氏の考えは、手数料が低いインデックスファンドの投資家リターンは、時間とともにアクティブファンドのそれを上回るというものだった。後者は相対的にコストが高く、それがリターンをむしばむためだ。

2018年のボーグルヘッド会議に出席したボーグル氏と投資家ら

筆者はインデックスファンドが設定された時にあきれたのを覚えている。80歳の筆者は、1957年にバルミツバー(ユダヤ教で13歳の少年が行う成人式)の贈り物を受け取って以来、市場にお金を投じてきた。そして、インデックスファンドというアイデアはばかげていると思った。人々はそれを「ボーグルの愚行」と呼び、非アメリカ的だとさえ言った。

最近では、筆者と妻のお金の多くはインデックスファンドで運用している。

ファースト・インデックス・インベストメント・トラストの最低初期投資額は1500ドルだった。これは現在の約8500ドル(約126万円)に相当する。その経費率は0.43%で、現在のバンガード500アドミラル株式クラスの10倍以上だったが、当時のアクティブファンドの経費率よりもはるかに低かった。

バンガードは、利益を求める外部者ではなく、そのファンドの投資家によって所有されているため、手数料の段階的削減を阻む要素は何もなかった。そして実際に経費率は年々削減された。

6月30日時点で、バンガード500アドミラル株式(最低初期投資額は3000ドルで、現在、新規投資家を受け入れている唯一のバンガード500株式クラス)の経費率は0.04%だった。これはファースト・インデックス・インベストメント・トラストの初期経費率の10分の1に満たない。バンガード500インデックスファンドのETF版の経費率は0.03%だ。

市場が拡大

インデックス事業が成長するにつれて、競争も生じた。

月間ニュースレター「モーニングスター・ファンド・インベスター」の編集者、ラッセル・キンネル氏は「バンガードが長年にわたりインデックスファンド事業を独占し、同事業は非常にゆっくりと成長していた」とし、「しかし時間がたつにつれて、アクティブファンドと違い、パッシブファンドのパフォーマンスがいかに優れているかに人々は気付いた」と述べた。

バンガード・グループのトレーディングフロア(2019年、ペンシルベニア州モルバーン)

チャールズ・シュワブ、フィデリティ・インベストメンツ、ブラックロックなどの株主所有企業がインデックスファンド事業への参入を決定すると、インデックスファンド市場は過熱し、はるかに競争的になった。バンガードの競合他社の中には、一部のインデックスファンドにバンガードよりも安い手数料を課している企業もある。

米投資信託協会(ICI)の最新統計によると、アクティブ株式投信の平均経費率は0.64%で、インデックス投信の0.05%の12倍を超える。つまり、投資額1万ドルに対して、前者は年間64ドル、後者は5ドルかかる計算だ。

ICIによると、アクティブ株式ETFの平均経費率は0.44%と、インデックスETFの0.14%の3倍超だ。これはアクティブ投信とインデックス投信の差よりも小さいが、その差が数年間で大きな金額になることに変わりはない。

最近では、従業員に会社負担の年金基金を提供する企業がますます少なくなっているため、確定拠出年金「401k」などの貯蓄制度を使って投資し、自ら投資判断を下すリスクを負う人が増えている。

このような状況において、低コストで退屈なインデックスファンドは、より輝いているが高コストのアクティブファンドに対して大きな優位性を持ってスタートする。そのため、インデックスファンドは「見渡す限り」アクティブファンドから市場シェアを奪い続ける可能性が高い。

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――筆者のアラン・スローン氏はベテランのビジネスライター