日産は復活できる! そのカギになるのは「非日常感」―― 「西部警察」から「EV」改革へ、80年超のDNAが繋ぐブランド再構築戦略とは
昭和ドラマと日産戦略
かつて世界を席巻した日産は、今また大きな岐路に立っている。EVシフトの遅れ、米中市場での苦戦、巨額赤字――逆風は強い。しかし新型リーフやマイクラEVの投入、ハイブリッド戦略、生産体制の再構築など、未来への挑戦は止まらない。 本リレー連載「頑張っちゃえ NISSAN」では、厳しい現実と並走しながらも改革を進める日産の姿を考える。
【画像】「えぇぇぇぇ!」 これが日産自動車の「平均年収」です!(計6枚)
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私たち消費者と日産の接点のひとつとして、昭和期のテレビドラマがある。以前の記事(「「経営陣が無能」「技術の日産は死んだ」 ネット上に“アンチ日産”が大量発生する理由――愛と挫折の40年史が映す、ブランド不信の深層とは」2025年9月21日配信)でも書いたが、特に現役を退いた世代にとって、
・大都会
・西部警察
といえば日産を連想するだろう。両ドラマは過激なカーアクションをともなう刑事ドラマとして人気を博した。
劇中には日産提供の車両が多数登場し、視聴者の関心を集めた。後者に登場するスーパーマシンは特に注目を集め、放映当時、多くの人々を魅了した。筆者(近澤眞吉、モータージャーナリスト)もそのひとりである。
前者は後期になると日産との関係が深まり、日本テレビ系列とテレビ朝日系列で展開されたシリーズは異なるが、日本テレビ系の同シリーズは1979(昭和54)年10月以降、テレビ朝日系「西部警察」に自然と引き継がれた。「西部警察」では、
・フェアレディZ
・スカイライン
をベースにした特殊なパトカーが数多く登場し、番組の象徴的存在となっている。
特殊車両が生んだブランド力

海外で愛される日産社イメージ(画像:Pexels)
マシンRSはスカイライン2000ターボRS(DR30JFT前期型)を土台にした車両である。RS-1、RS-2、RS-3の3台があり、順に攻撃・戦闘指揮、情報収集、分析と役割を分担していた。
スーパーZは2代目S130型フェアレディZを基に、大門団長専用車として設計された。油圧ダンパー式フルオート・ガルウィングドアや、ボンネット搭載の催涙弾発射銃、煙幕発生装置など、ユニークな装備が特徴である。ガゼールは木暮課長専用のコンバーチブル車で、当時としては珍しい自動車電話を装備して話題となった。
これらの特殊車両は視聴者に未来感と非日常感を強烈に印象付けた。インターネットが消費者の前に存在しなかった時代、テレビドラマは貴重な
「日産と消費者の接点」
であった。輝いた日産車は世代を超えてブランドシンボルとなった。非日常感を演出するエクステリアやインテリア、プロトタイプやコンバーチブルモデルならではの先進性は、強い個性と高揚感を生んだ。
「かっこよさ」と「未来感」を体現した車両だからこそ、現在のモデルが物足りないとの評価が出ることも理解できる。ブランドアイデンティティの変化が、消費者の印象に直結しているのである。
ブランド価値の再構築戦略

2025年8月25日発表。主要12か国と北欧3か国の合計販売台数と電気自動車(BEV/PHV/FCV)およびHVシェアの推移(画像:マークラインズ)
日産の魅力は、電気自動車(EV)の歴史の長さにもある。戦後、石油不足に陥った日本で、いわゆる「たま電気自動車」を開発した。水力発電の余剰電力に着目した取り組みである。1947年に製造されたこのEVは、日産初の電気自動車として知られ、タクシーにも活用された。鉛蓄電池を搭載し、最高速度は時速35km、一充電走行距離は65kmを誇った。
その後はエンジン車開発に注力したが、平成に入りEV開発は再び活発化する。1996(平成8)年のプレーリージョイEVは、世界初の円筒型リチウムイオン電池を搭載した市販EVである。法人向けリースを軸に、最高速度120km、一充電航続距離200km以上を実現し、高い実用性と極地対応の堅牢性を兼ね備えていた。さらに約2年後に登場したアルトラEVは、当時の世界最長航続距離を達成し、日本と米国で約200台が販売された。2000年にはハイパーミニEVが登場し、青春コメディー映画「スリープオーバー」にも登場してメディア露出によるブランディング効果もあった。
2010年にはリーフが登場し、「ゼロ・エミッションの時代」を象徴する量産EVとして普及した。中国市場向けのシルフィゼロ・エミッションやニッサンIMk(軽EVコンセプトカー)へとつながる日産のEVは、独自の力強くスムーズな走行と静粛性を実現し、次世代運転支援やコネクティビティ機能との融合にも成功している。EVとデジタルトランスフォーメーションの世界観を提示してきたことは、日産の未来感醸成力を示す。
日産はまた、スカイラインコンバーチブルなど次世代技術やデザインを体験できる車両を提供してきた。現在の市場構成を踏まえると、ニーズのあるセダン分野での差別化戦略は有効である。セドリックブランドの復活は、高級セダンのブランド価値再構築という意味でも注目される。実用性と非日常感を両立させる市場独自性の確保が、日産が歩むべき次の道である。
非日常と未来感の融合

海外で愛される日産社イメージ(画像:Pexels)
筆者のような中年世代のライターにとって、日産は単なる自動車メーカーではなく、
「非日常体験と未来感を提供できるブランド」
である。西部警察のような未来感ある車両でのブランディングもあれば、EVや魅力的なプロトタイプにデジタルトランスフォーメーションを加え、新しい移動体験とデザインの魅力を提示することも可能である。過去のブランド価値を受け継ぎつつ、未来への挑戦を続ける姿を消費者に体感させられる力を日産は持つ。
2023年のジャパンモビリティショーでは、計5台のコンセプトカーが公開された。ニッサン ハイパーフォースは、究極のドライビングプレジャーと環境性能の両立をテーマに掲げる。1000kWの最大出力を発揮する全固体電池と高出力モーターを搭載し、加速力と環境性能を両立させた。ニッサン ハイパーツアラーは、日本独自のおもてなし精神と上質さ、先進技術を融合したプレミアムEVミニバンで、自動運転技術と全固体電池を採用する。他に、ニッサン ハイパーパンク、ニッサン ハイパーアドベンチャー、ニッサン ハイパーアーバンがデジタル展示され、日産の未来感と非日常感を軸にした
「他社がやらないことをやる」
という精神を体現した。
こうした活動は、「日産の挑戦を応援したい」という声を増やすはずである。
・品質
・デザイン
・未来感
・非日常感
という軸での企画を今後も継続することが重要である。未来感と非日常感を体験として提供する力は、日産ならではの強みである。この力を改めて多くの人に見てもらいたい。
非日常で魅せるブランド

海外で愛される日産社イメージ(画像:Pexels)
改めて強調したいのは、日産復活のカギは
「非日常感と未来感の打ち出し」
にあるという点である。テレビドラマとの連動による未来感の提示や、80年に近いEV開発の歴史、EVとデジタルトランスフォーメーションを組み合わせた未来生活の提示など、日産は独自の強みを多く蓄積してきた。
こうして築かれたブランド力と次世代技術、グローバル戦略を融合させることが、市場での再評価につながる。
日産の歴史ある姿を見直し、多くの人が「頑張っちゃえ NISSAN」と応援できる状況を作ることが重要だろう。