ホンダ「プレリュード」600万円超でも売れる訳

2025年9月5日に発売したホンダの新型「プレリュード」(写真:三木 宏章)
大空を自由に滑空するグライダーのような軽快な走り。長距離を快適かつ高速で移動できる高性能なグランドツーリング(GT)カー。これらは、ホンダが新型3ドアクーペ「プレリュード」の走行性能などで追求したコンセプトだ。
【写真を見る】ホンダのスペシャリティスポーツ、新型「プレリュード」の内外装を詳しく確認する(85枚)
24年ぶりに復活した新生プレリュード
昭和の時代に人気を博し、1980年代には女性を誘ってドライブするのに最適なクルマ、いわゆる「デートカー」ブームを牽引した名車がプレリュード。その後継モデルとして24年ぶりに登場した6代目の新型は、独自の2モーター式ハイブリッドシステム「e:HEV(イーエイチイーブイ)」を搭載した電動化モデルとして復活を果たす。
しかも、ハイブリッド車向け最新技術の「ホンダS+シフト」や、同社が誇るスポーツモデル「シビック タイプR」譲りの高性能シャーシなどを採用。先に述べた軽快性や長距離移動での快適性などを高次元で実現することで、従来の電動化モデルでは体感できない「操る喜び」を堪能できるクルマに仕上がっているという。
では、実際に、新型プレリュードの乗り味には、どんな魅力や特徴があるのだろう。ホンダが主催したプレス向け公道試乗会に参加し、ワインディングや高速道路、市街地などの一般公道を走ってみたので、それらの印象を紹介しよう。
プレリュードは、初代モデルが1978年に登場した歴史あるモデルだ。とくに1980年代の2代目や3代目は、当時としてはかなり斬新なデザインや最先端技術などを投入。前述のとおり、一大ブームを巻き起こした「デートカー」というジャンルが生まれるきっかけとなったクルマだ。

新型プレリュードのスタイリング(写真:三木 宏章)
そんな名車の血統を受け継ぐのが2025年9月5日に発売された6代目プレリュード。大きなトピックは、「シビックe:HEV」で定評のある2.0L・4気筒エンジンと2モーター式ハイブリッドのe:HEVを搭載すること。また、これも先述のとおり、ハイブリッド車向け次世代技術のホンダS+シフトを初装備したほか、高性能スポーツモデルのシビック タイプR用シャーシを最適化して投入する。そして、これらにより、「先駆け」「前奏曲」などの意味を持つ「Prelude(プレリュード)」の車名が示すとおり、電動化時代の新しい「スペシャリティスポーツ」に仕上がっているという。
新型プレリュードのエクステリア

新型プレリュードのリアビュー(写真:三木 宏章)
一方、外観では、前述したコンセプトのひとつ、「グライダー」をイメージしたデザインを採用。低く伸びたシルエットが印象的だ。ちなみにグライダーとは、エンジンがなく、上昇気流を利用して滑空する乗り物のこと。特徴は、エンジンを使わないことで環境に優しく、上昇気流を利用することで自然と一体となること。
また、空力性能を追求したボディは、優雅かつスポーティ。そして、走りと環境性能を両立させた次世代ハイブリッドを謳う新生プレリュードのスタイリングには、こうしたテイストを色濃く投影。とくに伸びやかで軽快な全体のプロポーションは、グライダーの雰囲気を採り入れたポイントのひとつだという。

新型プレリュードのサイドビュー(写真:三木 宏章)
なお、ボディサイズは、全長4520mm×全幅1880mm×全高1355mm、ホイールベース2605mm。グレードは1グレードで、ボディカラーは「ムーンリットホワイト・パール(新色)」と「フレームレッド」のイメージ色のほか、「クリスタルブラック・パール」や今回試乗した「メテオロイドグレー・メタリック」といった計4色で展開する。
ちなみに、新車オンラインストア「ホンダオン(Honda ON)」では、2トーンカラー「ムーンリットホワイト・パール&ブラック」も設定されたが、こちらは初年度限定販売(数量限定)。現在(2025年10月5日時点)は受注数が限定数に達したことで、受け付けはすでに終了となっている。
運転席・メーター&スイッチ類

新型プレリュードのインテリア(写真:三木 宏章)
インテリアでは、シートやインストルメントパネル、センターコンソールなどにリアルレザーをメインで使い高級感を演出。シート外側など、擦れが生じやすい場所には合成皮革も用いることで耐久性も確保する。
運転席に座ると、ホールド感の高いシート形状が好印象だ。コーナリング中に体が極端にアウト側に傾いたり、ズレたりしにくい。また、座面や背もたれは硬すぎず、軟らかすぎないことで、長距離走行でも疲れにくいことが期待できる。
本革巻きのDシェイプステアリングは、握り心地もよく、左右に動かす際の操作性も抜群。水平基調のインストルメントパネルなどにより、前方視界も良好だ。フロントフード先端も見やすいため、せまい路地などでも見切りがいい。断面を削り死角を減らした形状のAピラーにより、旋回中にコーナーの出口付近が見やすいのもいい。

センターコンソールには、エレクトリックギアセレクターなどのスイッチ類が集約される(写真:三木 宏章)
シフト操作などは、センターコンソールにある「エレクトリックギアセレクター」で行う。最近のホンダ車に多いボタン式シフトだ。中央のスイッチは、上から「P(パーキング)」「R(リバース=後退)」「N(ニュートラル)」「D(ドライブ=前進)」といった配列。パネルの運転席側には「P(パーキングブレーキ)」や、ブレーキペダルを踏み続けなくても停止状態を保持する「オートブレーキホールド」のスイッチを配置。助手席側には「ドライブモード」や、このモデルの大きな特徴である「S+シフト」のボタンを設置している。
ちなみに、S+シフトとは、ハイブリッド車ならではの高い環境性能を維持しつつ、加減速時にエンジン回転数の緻密なコントロールを実施し、ダイレクトな駆動レスポンスや鋭い変速を実現する機構のことだ。とくに面白いのが、メカニカルな変速機構を持たないe:HEVながら、ステアリング左右に備わるパドルシフト(減速セレクター)の操作を行うことで、まるで有段ギアを変速したようなリニアな変速レスポンスを味わえることだ。
新型プレリュードでは、S+シフト作動時に仮想の8段ギアを設定。変速操作を行うパドルシフトは、右の「+」で仮想ギア段数をアップ、左の「-」でダウンする設定だ。
4つのドライブモード

ドライブモード選択時のメーター表示(写真:三木 宏章)
また、ドライブモードには、ソフトな乗り心地の「コンフォート(COMFORT)」、一般的なノーマルモードに相当し、幅広いシーンに対応する「GT」、ワインディングや高速道路などでキビキビとした走りを楽しめる「スポーツ(SPORT)」を用意。加えて、ドライバー各人の好みに応じた設定ができる「インディビジュアル(INDIVIDUAL)」といった4モードを用意する。
さらに、いわゆる通常のハイブリッド仕様となる「ベーシックコントロール」も選べ、こちらも上記4つのドライブモードを使用可能。つまり、合計8つのモードから、好みや状況などに応じたタイプを選べるようになっているのだ。
正直に言って、これだけ多くの走行モードについて、いきなりすべてを把握し、使いこなすのはかなり難しい気がする。だが、このクルマを愛車として長く乗ることで、各モードの効果を徐々に発見できる面白さはありそうだ。ともあれ、走りに関するこうした幅広い選択肢を持つことで、街乗りからワインディングまで、さまざまなシーンに対応する奥深さを持ったクルマが新型プレリュードだといえるだろう。
ワインディング試乗

ワインディングでの試乗シーン(写真:三木 宏章)
静岡県御殿場市内の会場を出発し、箱根の峠道へ向かう。新型プレリュードの目玉であるホンダS+シフトを体感するためだ。センターコンソールのS+シフト専用スイッチを押すと、まず気づくのが、ステアリング奥の2連メーター左側が変化することだ。
通常のベースコントロール時、2連メーター左側は「パワーメーター」の表示となっている。これは、ホンダ製のハイブリッド車やBEVに多い表示方式で、加速時にはモーターで車両を駆動する出力などを、減速時にはバッテリーへの回生充電の状況を視覚的に表示する。一方、S+シフトにすると、実エンジン回転数を表示する「タコメーター」に切り替わり、アクセルペダルを踏み込みながら、エンジン回転の上昇などを視覚的にも楽しむことを可能とする。

ステアリング奥には、パドルシフトとしても機能する減速セレクターを備える(写真:三木 宏章)
また、通常のAT(オートマチック)モードから、パドルシフトとしての役割もある減速セレクターを操作すると、MT(マニュアル)モードとなり、タコメーター中央には、先に述べた最大8段の仮想ギア段数を表示。パドルシフト(減速セレクター)を操作する際、仮想のギア段数が現在何段なのかが一目でわかるようになっている。
加えて、新型プレリュードには、「アクティブサウンドコントロール」も搭載する。これは、S+シフトに切り替えると、車内のスピーカーから回転数と同期した迫力あるエンジンサウンドを奏でるシステムだ。ハイブリッド車のため、走行中に車外へ出す排気音量などはかなり小さいモデルだが、車内ではスポーツカーのようなスポーティなエンジンサウンドを楽しめるのだ。

試乗したメテオロイドグレー・メタリックの新型プレリュード(写真:三木 宏章)
しかも、コーナー手前の減速中などに仮想ギア段数をダウンさせると、「ブリッピング」サウンドも奏でる。ブリッピングとは、急激なシフトダウン時にエンジン回転数を上げることで、駆動輪のロックやギアチェンジ時のショックを軽減し、スムーズな加速につなげる技術だ。シフトダウンに合わせ、「ブン、ブン」とエンジン回転も上下するこのサウンドは、サーキットなどでスポーティな走行を楽しみたいドライバーにとって気分をかなり高揚させてくれるはずだ。
とくに、ドライブモードをスポーツにすると、エンジンサウンドもかなり主張が大きくなる。回転が上昇するにつれ音質が徐々に高音へ変わり、回転がグーンと上昇していくような伸び感を味わえるのが楽しい。また、ブリッピングのサウンドも、GTやコンフォートなどほかのドライブモードと比べると、明らかに音量が大きくなり、スポーツ走行の気分を存分に味わえる。
リニア感が増すS+シフトとスポーツモード

ドライブモードの上に配置されたS+シフトのボタン(写真:三木 宏章)
そして、乗り味。S+シフトとスポーツモードの組み合わせは、明らかにアクセル操作に対し、リニアなレスポンスを感じられる。また、シビック タイプRのシャーシをベースにした車体も、コーナリング中にしっかりと踏ん張る感じで安定感が高い。足まわりも、電子制御式サスペンションの「アクティブ・ダンパー・システム」などを採用していることで、アクセル操作に対しタイヤがしっかりと路面を捉えてくれる。トラクション性能はかなり高いといえる。そのため、ある程度の速度でコーナーを旋回しても、車体がロールする感じも少なく、安心してコーナリングを楽しめた。
新型プレリュードが持つ走りは、この「S+シフト×スポーツモード」の設定時に最も醍醐味を感じられる気がする。とくに、この設定で意外だったのが、変速などの操作をクルマ任せにするATモードにしたときだ。MTモードからATモードへの切り替えは、パドルシフト(減速セレクター)の「+」を長押しするだけ。設定を変えてアクセルペダルを踏み込んで加速すると、自動でシフトアップ。また、コーナー手前で減速すると、自動でシフトダウンを行うだけでなく、ブリッピングまでしっかり自動化されている。しかも、それらのタイミングがすべて絶妙。筆者の場合、自分が手動で操作するよりも、クルマ任せのATモードのほうが「スムーズに走れるのではないか」と思ったほどだ。
この設定時こそが、最もこのモデルのコンセプトである「大空を滑空するグライダー」のような自在な走りを体感できると実感。その秀逸な走りは、まるでプロドライバーの運転テクニックを習得できたと錯覚するほどなので、ぜひ一度試してみていただきたい。

新型プレリュードのエンジンルーム(写真:三木 宏章)
なお、プレリュードが搭載するパワートレインのスペックは、2.0L・4気筒エンジンが最高出力104kW(141PS)/6000rpm、最大トルク182N・m(18.6kgf・m)/4500rpmを発揮。電気式CVTに内蔵している走行用と充電用のモーター2基のうち、走行用モーターは最高出力135kW(184PS)/5000~6000rpm、最大トルク315N・m(32.1kgf・m)/0~2000rpmだ。これらの数値は、基本的にベースとなっているシビックe:HEVと同じだ。
また、シャーシを流用しているシビック タイプRの場合、2.0L・4気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力243kW(330PS)/6500rpm、最大トルク420N・m(42.8kgf・m)/2600~4000rpmを発揮する。プレリュードは、パワー的にはシビック タイプRに劣るものの、そのぶん、車両重量は1460kgとハイブリッド車としてはかなり軽量。これにより、リニアなハンドリングや軽快な旋回性能などに貢献しているという。
助手席の快適性

新型プレリュードの運転席および助手席(写真:三木 宏章)
一方、S+シフトと通常走行用のGTモードのマッチングでは、スポーツモード時と比べ、クルマの走りはややマイルドになる。ホンダによると、このモードは、走り方によってシフト制御を幅広く変えるような設定になっているとのこと。これにより、ハイペースで走りたいときからゆっくりと流したいときまで、さまざまな状況に対応するという。
だが、もし、助手席に奥方など大切な人を乗せてクルージングするのであれば、快適性重視のコンフォート・モードにすることをおすすめする。このモードは、とくにS+シフトのATモードで走ると、仮想ギア段数がより低いエンジン回転数でアップするようになっている。しかも、もともとプレリュードは3.0Lエンジン並みの太いトルク特性を持つクルマ。低めの回転数で走っても、クルージングなどであれば余裕の走りを楽しめる。さらに、この設定にした場合、エンジン音はかなり小さくなるし、ブリッピング音もほぼしない。これらから総合して考えると、助手席に人を乗せて快適なクルージングを楽しむには最適なセットだといえる。
ちなみに、助手席の座り心地は、足下スペースがかなり広々していて、窮屈さをまったく感じない。これは、運転席の足下スペースと比べ、ドア側を広げている効果が出ているためだ。また、シート形状は、座面端ドア側のサイドサポートを、運転席より低く設定することで、乗り降りをしやすくしている。
ただし、運転席ほどのホールド性はないため、コーナリング中にやや体が外側に傾きやすい。とくに、左右のコーナーが連続する場所では、かなりゆっくりと走らないと、体も左右に揺れやすく、車酔いする人もいるかもしれない。助手席に人を乗せる場合は、あくまでスムーズにゆっくりと走ることが必要のようだ。コーナーが楽しいクルマだからといって、ペースを上げて走るのは1人で乗るときだけにしないと、人によっては次から同乗してくれない危険性もあるのであしからず。
市街地・峠の下り坂

新型プレリュードのリアビュー(写真:三木 宏章)
市街地では、通常のハイブリッド仕様であるベースコントロールの状態で、減速度を変更し「シングルペダル操作」と「コースティング走行」を試してみた。
プレリュードは、ベースコントロール設定時、アクセルペダルを離した際の減速度を7段階で調整できる。減速度を最大にすると、アクセル操作のみで加減速ができるシングルペダル操作を使うことが可能。また、減速度を最小にすればホンダ車で初となるコースティング走行もできる。
各操作は、ステアリング左右に備わったパドルシフトも兼ねる減速セレクターで行う。右側が減速度を減少させる「+」、左側が減速度を増す「-」だ。シングルペダル操作にする場合は、左側「-」セレクターを最大の減速度になるまで数回押す。すると、市街地など、比較的低い速度域で走行する場合や渋滞路などで、アクセルペダルの操作だけで加減速を調整できるようになる。赤信号時などに、停止寸前まで減速できるため(完全停止時はブレーキペダルの操作が必要)、頻繁にブレーキペダルを踏む必要がない。ドライバーの疲労軽減に貢献する機能だといえよう。しかも、減速度を最大にしたときの制御が絶妙だから、アクセル操作に対し車体がギクシャクしづらいのもいい。

新型プレリュードの試乗シーン(写真:三木 宏章)
一方、コースティング走行の設定は、右の「+」セレクターで減速度を最小にする。コースティングとは、ギアをニュートラルに入れてアクセルをオフにしたときのように、減速度がほぼ利かない(ガソリン車の場合はエンジンブレーキがほぼ利かない)状態で走行することだ。たとえば、市街地で先にある信号が赤になったときなどに、アクセルをオフにしてブレーキのみを操作し、停止線まで減速を行う感じだ。タイミングさえうまく合わせれば、速度の落としすぎなどが少なく、アクセルの再操作などが不要となる。
今回の試乗では、市街地だけでなく、峠道の長い下り坂で、コースティング機能を使ってみた。この場合も、ブレーキペダルの操作だけで走行が可能となり、かなり楽に走ることができた。ただし、こうしたケースでは、ブレーキを酷使しすぎると、フェード現象などを起こし、ブレーキが利かなくなる恐れもあるので注意したい。筆者の場合、速度が速くなりすぎて、法定速度を超えそうになったり、前の車に追いつきそうになったりしたときなど、左側の「-」セレクターで減速度を増して速度をコントロールした。この方式なら、ブレーキを使いすぎず、しかもアクセルペダルを頻繁に踏む必要もないため、実用域での燃費向上にも貢献するはずだ。
なぜコースティングを設定したのか?
ちなみにホンダによれば、「欧州では、下り坂でコースティング走行を使うことはかなり一般的」だという。また、「(コースティング機能の)ホンダ車への搭載も要望が多かった」ようだ。とくに新型プレリュードは、日本だけでなく、欧州などでも販売するグローバルモデル。欧州ユーザーへの対応などもあり、今回の新規導入につながったようだ。
コースティング機能自体は、以前からアウディなど一部の欧州車で国内モデルにも採用されている。また、近年はBEVモデルなどでも採用例が増えてきている。だが、まだまだ日本では、あまり馴染みのない機能なのもたしか。そんな新機能に対し、国内ユーザーがどんな反応を示すのかも気になるところだ。

新型プレリュードのラゲージスペース(写真:三木 宏章)
先進運転支援システム「ホンダセンシング」に関しても、プレリュードには新機能が採用されている。広い水平画角のフロントワイドビューカメラと前後8つのソナーセンサー、レーダーなどの装備により、「衝突軽減ブレーキ」や「踏み間違い衝突軽減システム」、「急アクセル抑制機能」など、プレリュードでは全16もの機能を搭載。なかでも、高速道路などで使うことの多い「ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)」や「LKAS(レーンキープアシストシステム)」の進化が顕著だといえる。
まずはACC。これは、適切な車間距離を保ちながら先行車を追従する機能だ。プレリュードでは、渋滞時に先行車が停止すると、自車も自動で停車。先行車が再発進すると、一定の操作で追従を再開する「渋滞追従機能付き」だ。しかも、今回のアップデートでは、先行車が隣の車線などに移動し自車と同一車線を離脱する際、設定速度まで速度を上げる場合があるが、その際の加速がかなりスムーズになった。
従来の機能では、先行車が完全に自車の車線を離れるまで速度を上げなかったため、加速開始が遅れていた。対するプレリュードでは、先行車が隣の車線を跨いだときに加速を開始するように設定。これにより、加速遅れがなく、自分で運転しているときに近い自然なフィーリングでの速度回復が可能となっている。
最新のレーンキープアシスト

新型プレリュードの後席(写真:三木 宏章)
一方のLKAS。これは、車線内を走行できるようにステアリング操作を支援する機能だ。従来、この機能は、車種や走行状況などにもよるが、高速道路のコーナリング中などに、ステアリングのアシストが遅れるなどで、走行ラインが車線中央からやや外側などに寄りすぎる傾向が出ることもあった。
それに対し、プレリュードが採用する最新のLKASでは、旋回時のアシストタイミングをわずかに早めることで、ドライバーの感覚により近い走行ラインを取ることが可能となった。さらに、やはり車種や状況にもよるが、従来の機能では、クルマ側のアシストに対しドライバーがよりステアリングを切ろうとしても、まるでシステムがその操作に抵抗するような曲げにくさもあった。それに対しても、プレリュードではドライバーの操作に対応し、素直にステアリングを切れるような制御に変更。より感覚的な違和感が少なくなったことを実感できた。
なお、ACCの機能をオンにすると、S+シフトの機能はオフになる。また、逆にACC使用中にS+シフトをオンにすると、ACC機能がオフになるように設定されている。このあたりは、あくまでS+シフトは、コーナリングを中心に走りを楽しむ機能だという考え方からだろう。とくに、アクセルやブレーキの操作をシステムに委託するACCでは、それらを操作することが楽しいS+シフトは不要といった判断からであることがうかがえる。
クルージング性能

新型プレリュードのフロントフェイス(写真:三木 宏章)
高速道路での走りでは、直進安定性がかなり高く、一定速度でのクルージングがとても快適だった。ただし、凹凸や段差のある荒れた路面では、タイヤがギャップを拾い、突き上げ感などを多少感じた。これは、高速道路だけでなく、一般道の広い幹線道路などでも同様。また、比較的低速で走る市街地などのタイトなコーナーでは、ステアリングを切る際にやや重さを感じるシーンもあった。
おそらく、これらの要因は、大径タイヤが影響しているのかもしれない。プレリュードの純正タイヤサイズは、235/40R19。また、ホイールサイズは19×8.5Jだ。たとえば、乗り心地をより向上させたい場合は、タイヤやホイールをより小径の18インチなどにインチダウンするのも手かもしれない。インチダウンをすると、偏平率が上がりタイヤのクッション性が増すことで、乗り心地の向上が期待できるからだ。また、低速時のハンドリングが軽くなったり、タイヤ交換時の購入価格を抑えられるなどのメリットを期待できる。

新型プレリュードのタイヤ&ホイール(写真:三木 宏章)
ただし、プレリュードでは、フロントのブレンボ製ブレーキキャリパーがかなり大型なので、ホイールを変える場合はサイズに注意したい。また、プレリュード用ホイールは5H-PCD120。国産車で一般的な5H-PCD100ではないので、この点も注意したい。ホンダの開発者によれば、ホイールをもし18インチに変える場合、アフターマーケットなどで販売しているシビック タイプR用であれば、おそらくプレリュードにも装着可能だろうとのこと。ただし、これはあくまで目安。もし実際に変更する場合、詳細なサイズやモデルなどは、タイヤやホイールの専門店などに事前に相談してから決める方がいいので、念のため。
プレリュードには、ほかにも、センターモニターにGoogleを搭載した「9インチHonda CONNECTディスプレー」を採用。スマートフォンで使い慣れた「Googleマップ」をはじめ、お気に入りのアプリをクルマへ簡単にダウンロードできる「Googleプレイ」も備える。また、「Googleアシスタント」も採用し、マップや音楽、ポッドキャストなどの各種アプリはもちろん、エアコンの温度設定などを音声で操作できる機能も有している。
なお、プレリュードの燃料消費率はWLTCモード値23.6km/L。スポーツモデルとしてはかなり燃費性能が高いといえる。また、ホンダのテストによれば、S+シフトを使っても、燃費の落ち込みはわずか2%程度で、ほぼ変わらないとのこと。さらに、燃料はスポーツモデルに多いハイオクガソリンではなくレギュラー。一時期ほどではないが、まだまだガソリン代が高い昨今では、ランニングコストを比較的抑えられるのもうれしい点だ。
プレリュードの販売状況

新型プレリュードのリアデザイン(写真:三木 宏章)
ホンダによれば、2025年9月5日の発売から約1カ月後となる10月6日時点で約2400台。月間の販売計画300台の約8倍を記録しているという。価格(税込み)は617万9800円だから、国産車としてはかなり高価な部類に入る。それでも、売り上げ好調なのは、名車プレリュードの後継という高いブランド力も影響しているのだろう。1980年代に青春時代を送った50代や60代など、このモデルのメインターゲットといえるシニア層の反応がよかったことがうかがえる。

新型プレリュードの走行シーン(写真:三木 宏章)
また、S+シフトなど最新かつ多くの機能を採用し、ミニバンなど大衆車ほどの販売台数も見込めないモデルの割には、価格的にかなり頑張ったと感じているユーザーも一定数いるかもしれない。
ただし、個人的には、高級車の部類に入る600万円台のクルマだけに、運転席と助手席にはオートでポジション調整ができる電動パワーシートを設定してほしかったところだ。座面の前後移動や高さ、背もたれの角度などの調整は、いわゆる手動式レバーを引いて行うタイプなのはちょっと寂しい感じがする。
ホンダによると、これは俊敏な走りの実現に向け、「徹底的に車体の軽量化を追求したため」だという。たしかに、電動のパワーシートは、可動するための電動モーターを搭載する必要があるため、車体重量は比較的重くなってしまう。また、生産コストの面でもより高くなるため、販売価格がさらに高くなることを避けた面もあるかもしれない。
プレリュードの今後について
この点に関しては、今後、ユーザーのニーズが高まるなどがあれば、現在の1グレード展開を変更する可能性も予想できる。電動パワーシートをはじめ、より装備が充実した上級グレードの追加があっていいだろう。もちろん、それ以前に、現在の設定で、ある程度のセールスを記録することも必要だろうが。
ともあれ、発売直後は好調な売れ行きを見せている新生プレリュード。この好調さが、安定的に続き、ホンダを代表する次世代の名車となるのかが注目だ。