高市政権が防衛産業の活性化に本腰、連立合意で装備品輸出規制撤廃も

(ブルームバーグ): 高市早苗首相の下で、日本が国際的な防衛産業大国となるべく本格的に乗り出そうとしている。 防衛産業を巡る規制の緩和に前向きな日本維新の会が自民党の新たな連立パートナーとなったためだ。

  自民、維新両党は連立政権合意に基づき、防衛装備品の輸出規制撤廃や装備品工場の建設、防衛分野への投資の加速を打ち出している。小泉進次郎防衛相は24日、国家安全保障戦略、国家防衛戦略、2027年に終了予定の防衛力整備計画の安保関連3文書見直しを議題に、防衛省の幹部会議を開いた。

  最優先事項の一つは、世界的な軍拡を追い風に日本の防衛産業を成長させることだ。日本の上位5社は世界の防衛輸出の2%未満しか占めていないが、新規受注への期待から株価は上昇している。

Japanese Prime Minister Sanae Takaichi Delivers Policy Speech

  高市政権のこうした姿勢は、日本が安全保障条約を結ぶ唯一の同盟国である米国に対し、同盟強化に向けた日本の姿勢を示すとともに、トランプ米大統領訪日に際し、防衛費増額への圧力をかわす狙いもある。トランプ氏は同盟国に対し防衛費を国内総生産(GDP)比5%に引き上げるよう求めているが、日本は現時点で1.8%程度だ。

  高市首相は24日の所信表明演説で、関連経費を含めた防衛費を2025年度中にGDP比2%とする方針を表明。従来計画の27年度から2年前倒しで達成する。首相は「日米同盟の抑止力・対処力を高めていく」と述べた。トランプ大統領は28日、米海軍横須賀基地を訪問する予定だ。

Share of global arms revenues

  政府の積極姿勢は、劇的な転換を示している。わずか数年前まで、日本では「死の商人」と呼ばれる防衛産業への忌避感や、第2次世界大戦後に設けた厳しい輸出制限のため、産業育成への体系的な取り組みはほとんど見られなかった。

  三菱電機で防衛・宇宙システム事業本部副事業本部長を務める洗井昌彦氏は、欧州の競合企業がプレゼンを行う際は軍関係者や大使館の職員など大勢参加していたが、日本企業はそうした「サポートが得られなかった時も結構あった」と振り返った。

Live Fire Exercise by Japan Ground Self-Defense Force

  洗井氏は、政府の支援体制は改善していると指摘。オーストラリア政府は8月、次期フリゲート艦の導入計画を巡り、三菱重工業が建造する艦船を選定したと発表。石破茂前首相らによるロビー活動に加え、シドニー市内に三菱重工を宣伝する大型広告を展開するなど大規模なPRキャンペーンが後押しとなった。

  交渉に関わったオーストラリア政府当局者は、「少しやり過ぎに感じた」ものの、日本の艦船の性能がドイツの競合案を上回っていることがすぐに明らかになったと語った。

  契約が予定通り来年初めに締結されれば、日本企業による戦後2件目の大型防衛輸出契約となる。ニュージーランド軍がブルームバーグに提供した声明によると、ニュージーランドも同型艦の調達を検討中で、同国国防相は最近、日本の防衛相と協議したという。

Japan's top five defense companies

  日本は、防衛装備品の持続的な輸出拡大に向けた戦略策定にあたり、韓国など他国との比較・検証を進めている。韓国は、防衛産業がより発展しており、りゅう弾砲やロケットシステム、弾薬などの装備品を供給する数十億ドル規模の契約をポーランドなどの国々と締結している。

  元防衛省職員の小木洋人氏は、日本はミサイルシステムや宇宙技術といったより高度な技術分野で、こうした成功例に続くことが可能だとの見方を示した。

  日本は、地雷除去用の砲など防御目的の装備を除き、殺傷能力を持つ装備品の輸出を原則禁じてきた。連立を離脱した公明党はこの制限措置の維持を主張していた。政府は一部の例外措置を設けることで対応してきたが、来年にはこうした措置を全面的に撤廃する方針を掲げている。

  元米海兵隊大佐で自衛隊との連絡官を務めたグラント・ニューシャム氏は、「広い意味で見れば、日本は自国の防衛に関して普通の国として自らを認識し始め、他国の軍隊と自由に交流しながら防衛力の強化に乗り出す可能性がある」と述べた。

Australian Diplomats Attend Inspection Inside The Escort Vessel Mikuma

  日本は、ミサイルやその他装備品の生産能力増強も検討している。これにより国内の備蓄強化に加え、弾薬不足を警告している米国への支援にもつながる可能性がある。連立政権は、民間企業が運営する国営の装備品工場の設置も検討対象としている。

  米英両国など防衛に特化した大手企業が存在する国々とは異なり、日本の防衛産業は、主に他の分野を中核とする製造・技術系の複合企業数社で構成されている。多くの企業にとって、防衛関連事業の売上は全体の20%未満にとどまり、供給先は主に自衛隊だ。

Japan's Self -Defense Force Holds Live Fire Exercise

  こうした限定的な市場規模が生産能力拡大の阻害要因となっており、収益性の低さから多くの中小企業が防衛分野から撤退している。

  三菱電機の洗井氏は、日本の防衛予算のトレンドの変化に追従していくと、「しっかりした投資もできないし、ちゃんとした技術生産基盤も社内に作れない」との見方を示した。

  三菱電機を含め日本の防衛関連企業の多くは、防衛関連の売上高を地域別には公表していない。

  洗井氏は、売上全体に海外輸出が占める割合は20%程度が「健全」だと指摘。これは米大手防衛企業と同水準だという。同社は、最新の受注状況を基にすれば、31年3月期までに防衛システム事業の売上高を昨年比ほぼ倍増の6000億円以上に引き上げるという目標を前倒しで達成する見通しだという。

Targeting two percent | Japan's prime minister has pledged to raise defense spending to 2% of GDP this fiscal year

  日本の防衛産業に対する方針が転換したのは、22年のロシアによるウクライナ侵攻がきっかけで、台湾有事などアジアでも同様の紛争が起きる可能性への懸念が高まった。

  日本政府は、長距離巡航ミサイルや軍事衛星など防衛力整備に5年間で43兆円を投じ、GDPの1%程度に抑えられてきた防衛費を27年度までに2%へ引き上げる方針を示した。

  ミサイルや衛星は、中国や北朝鮮などを念頭に、陸・海・空から相手国の軍事拠点を攻撃できる能力を備えることで、抑止力を確保するという新たな戦略の一環となっている。

  三菱重工は、防衛予算の拡大で大きな恩恵を受けている企業の一つで、長距離巡航ミサイルを含む大型受注を獲得している。オーストラリア政府との次期フリゲート艦導入計画でも主要事業者となっている。

Australian Diplomats Attend Inspection Inside The Escort Vessel Mikuma

  三菱重工の伊藤栄作社長は最近のインタビューで、陸・海・空が連携する統合運用など防衛産業のトレンドを先取りしていく方針を明らかにした。

  ドローンのような無人機が導入され、自動化が進む中で、「そういった最新鋭の技術については社内にもいっぱい技術がある」とし、「将来はこういう技術動向になるというのは提案していく」と述べた。

  衛星や潜水艦用ソナー、ドローン技術などを手掛けるNECでも、防衛関連製品の需要が想定を上回る勢いで伸びている。

  同社は23年に災害予測システムの一環として小型レーダー衛星をベトナムに納入したほか、海外の顧客を念頭に捜索救助用ドローンを開発。同社の航空・宇宙・防衛事業ではこの2年間で人員を1000人増員し、今年度さらに200人増やす計画だ。

  もっとも、日本企業には引き続き課題が残されていると、経営幹部や政府当局者は指摘する。

  主力事業から防衛分野に投資を振り向けることに慎重な企業もあるほか、第2次世界大戦中の軍国主義を経て防衛産業に対する否定的な見方が年配層を中心に根強く残っている点も懸念材料だ。海外のサプライチェーンとの連携も容易ではない。

  防衛産業政策を担当する政府当局者1人によると、こうした分野には関わりたくないという企業もいまだ一部存在するという。

  それでも、新政権が成長を阻害する障壁の撤廃に向けて動いていることや防衛予算が世界的に拡大していること、日本国内でも防衛力強化の必要性を認める声が増えていることを背景に、日本の潜在力に対する楽観的な見方が広がっている。

  かつて在日米大使館で駐在武官を務め、現在は東京を拠点とする防衛関連企業向けコンサルティング会社パックフォースを率いるフランク・クラーク氏は、「日本が世界的な防衛プレーヤーとなるためのピースが今まさにそろいつつある」と語った。

原題:Takaichi Moves to Unleash Japan’s Stifled Defense Industry (2)(抜粋)

--取材協力:高橋ニコラス、佐々木礼奈.

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