厚生年金でも「月額10万円」に満たない人は少なくない!老後、公的年金だけで生活するのは難しいのか
老後に100%公的年金だけで生活できている高齢者世帯は「たったの4割」

厚生年金でも「月額10万円」に満たない人は少なくない!老後、公的年金だけで生活するのは難しいのか
心地よい秋晴れのもと、散策や運動を楽しむのに最適な季節となりました。しかし、その爽やかな陽気とは裏腹に、老後の生活資金について考える時、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
とくに今年は物価高が家計を直撃するなか、老後の生活を支える年金額への関心は高まっています。現役時代に厚生年金へ加入して働いた経験のある高齢者の平均受給額(基礎年金を含む)は月14万6429円ですが、その裏側には大きな格差が存在します。
本記事では、この年金格差に焦点を当て、「月10万円未満」と「20万円以上」の受給者がどちらの層が多いのかをデータで確認し、シニア世代の現状を紐解きます。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
日本の公的年金制度は「2階建て構造」

公的年金は「偶数月の15日」に支給され、15日が土日や祝日に重なる場合は直前の平日に前倒しされます。
前回の支給日は2025年10月15日で、次回は2025年12月15日となります。
日本の公的年金制度は、「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」で成り立つ2階建て構造です。
ここで、それぞれの基本を確認していきましょう。
国民年金(1階部分)の「加入対象・保険料・受給額・被保険者」
・加入対象:日本に住む20歳以上から60歳未満の全ての人が原則加入
・年金保険料:全員一律(※1)
・老後の受給額:40年間欠かさず納めれば満額(※2)
・被保険者:第1号~第3号に分かれる(※3)
※1 国民年金保険料の月額:2025年度 1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2025年度 6万9308円
※3 第1号被保険者は農業者・自営業者・学生・無職の人など、第2号被保険者は厚生年金の加入者、第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者
厚生年金(2階部分)の「加入対象・保険料・受給額・被保険者」
・加入対象:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所(※4)に働き一定要件を満たした方が、国民年金に上乗せで加入
・年金保険料:収入に応じて決まり(※5)、給与からの天引きで納付
・老後の受給額:加入期間や納めた保険料により個人差あり
・被保険者:第1号~第4号に分かれる(※6)
※4 1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※5 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※6 第1号は、第2号~第4号以外の、民間の事業所に使用される人、第2号は国家公務員共済組合の組合員、第3号は地方公務員共済組合の組合員、第4号は私立学校教職員共済制度の加入者
次章では、それぞれの平均年金月額を、厚生労働省の一次資料を参考に確認していきます。
「厚生年金・国民年金」シニアは月にいくらもらってる?
厚生労働省年金局の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、厚生年金と国民年金の平均年金月額を見ていきましょう。

厚生年金・国民年金の平均年金月額(2023年度末現在)
「厚生年金」の平均年金月額はいくら?
・男女全体:14万6429円
・男性:16万6606円
・女性:10万7200円
※国民年金を含む。
※ここでは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金月額を紹介しています。
「国民年金」の平均年金月額はいくら?
・男女全体:5万7584円
・男性:5万9965円
・女性:5万5777円
国民年金は全加入者が同じ保険料を納める仕組みのため、将来の受給額には大きな差が出にくいのが特徴です。
平均では男女ともに月5万円台で、満額を受け取った場合でも2025年度で月6万9308円にとどまります。
そのため、国民年金だけで月10万円を超えることは現実的ではありません。
一方、厚生年金は国民年金に上乗せして支給されるため、受給額は相対的に多くなる傾向があります。
また、厚生年金の保険料は現役時代の収入を基準に決められるため、将来受け取る金額には大きな個人差が生じます。
では実際に、「月20万円以上」の年金を受給している人はどれくらいいるのでしょうか。
「月10万円未満」の層との比較を、次章にて確認していきます。
厚生年金「月額20万円以上と月額10万円未満」どっちのほうが多い?
すでに述べたように、厚生年金の受給額は現役時代の収入や加入していた期間によって差が生じます。
ここからは、国民年金部分を含めた厚生年金の受給額の分布を確認していきましょう。

厚生年金の受給額ごとの受給権者数
10万円未満:厚生年金の受給額ごとの人数
・1万円未満:4万4420人
・1万円以上~2万円未満:1万4367人
・2万円以上~3万円未満:5万231人
・3万円以上~4万円未満:9万2746人
・4万円以上~5万円未満:9万8464人
・5万円以上~6万円未満:13万6190人
・6万円以上~7万円未満:37万5940人
・7万円以上~8万円未満:63万7624人
・8万円以上~9万円未満:87万3828人
・9万円以上~10万円未満:107万9767人
20万円以上:厚生年金の受給額ごとの人数
・20万円以上~21万円未満:80万1770人
・21万円以上~22万円未満:62万6732人
・22万円以上~23万円未満:43万6137人
・23万円以上~24万円未満:28万6572人
・24万円以上~25万円未満:18万9132人
・25万円以上~26万円未満:11万9942人
・26万円以上~27万円未満:7万1648人
・27万円以上~28万円未満:4万268人
・28万円以上~29万円未満:2万1012人
・29万円以上~30万円未満:9652人
・30万円以上~:1万4292人
国民年金を含めた厚生年金の受給額を見ると、「月10万円未満」の人は21.2%を占めています。
これに対し「月20万円以上」の人は16.3%にとどまり、10万円未満の層の方が割合として多いことがわかります。
《参考》
・10万円未満の割合:21.2%
・10万円以上の割合:78.8%
・15万円以上の割合:47.6%
・20万円以上の割合:16.3%
・20万円未満の割合:83.7%
・30万円以上の割合:0.09%
なお、これらの割合は厚生年金(国民年金部分を含む)の受給者を対象としたものです。
国民年金のみを受給している人も含めて考えると、「月10万円未満」の層はさらに増加し、「月20万円以上」の層はより少なくなると考えられます。
老後に100%公的年金だけで生活できている高齢者世帯は「たったの4割」
厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」では、高齢者世帯(※)の収入の内訳が示されています。
平均的な収入構成をみると、最も割合が大きいのは「公的年金・恩給」で63.5%、次いで「稼働所得」が25.3%、「財産所得」が4.6%となっており、公的年金が老後の生活を支える中心であることがわかります。
ただし、公的年金だけで生活費をまかなえている世帯は全体の43.4%にとどまります。

出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
言い換えると、高齢者世帯の6割近くが、公的年金だけでは生活費をまかなえず、その他の収入源に頼らざるを得ないのが実情です。
※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯
まとめ
帝国データバンクの調査によれば、2025年10月の飲食料品値上げは3024品目に達し、半年ぶりとなる値上げラッシュとなっています。これにより、年間の値上げ品目数は2年ぶりに2万品目を超えました。生活必需品の価格上昇が止まらない状況下では、公的年金だけで老後の生活を賄う厳しさは増すばかりです。
また、本記事で確認した年金受給額の分布は、「月10万円未満」の層が「月20万円以上」の層よりも多いという格差の現実を明らかにしました。
物価が継続的に上昇する時代に入った今、年金に頼りきるのは難しいかもしれません。だからこそ、まずはご自身のペースで老後資金計画の第一歩を踏み出し、この先の未来を明るく描いていきましょう。
参考資料
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
・厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況
・厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」用語の説明
・帝国データバンク「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2025年10月