自動車ユーザーの「重税苦」に終止符? 高市政権の減税&公約は、本当に政局・財源の壁を越えられるのか

自動車税制決定の年

 2024年12月に公表された「税制改正大綱」には、重要な一文が盛り込まれている。

【画像】「えぇぇ!」 これがコンテナから発見された「盗難車両」です!

「取得時における負担軽減等課税のあり方を見直すとともに、自動車の重量及び環境性能に応じた保有時の公平・中立・簡素な税負担のあり方について、関係者の意見を聴取しつつ検討し、令和8年度税制改正において結論を得る」

そう明記されているのだ。つまり、2025年12月までに自動車関連の税制が再設計されることになる。制度の方向性が定まる、極めて重要な一年となる。

 その矢先、石破総理が辞任し、高市政権が発足した。石破氏は“財務省寄り”とされ、減税には慎重な姿勢を崩さなかった。一方で、高市氏は積極財政を掲げる政治家だ。2025年9月、名古屋で開かれた総裁選の演説会では

「自動車環境性能割を2年停止」

と明言している。政権交代により、税制議論の重心は大きく動いた。2025年の改正論議は、自動車業界にとって単なる制度改定ではなく、構造転換の入り口となる可能性がある。

残された重量税、止まった改革

自動車税制決定の年, 残された重量税、止まった改革, 維新との連立で揺れる政策決定, 租税特別措置改廃の影響, 筆者への反対意見, 国民負担の限界と反発必至

自動車のイメージ(画像:写真AC)

 自動車関係の税は、

・購入時に課される「環境性能割」と保有時に課される「種別割」からなる自動車税

・車検時に課される自動車重量税

で構成されている。これに加えてガソリン税なども上乗せされており、消費者や業界からは、複雑かつ過重な制度として長年にわたり見直しを求める声が上がってきた。

 暫定税率の問題も根深い。これはオイルショック期に「道路特定財源」として道路整備のために導入された増税措置が、民主党政権下で一般財源化されたにもかかわらず、当時の税率が維持されたまま残ったものだ。何度も廃止論が浮上したが、

「当分の間税率」

と名前を変えながら今日まで続いている。

 最近では、国民民主党がガソリン暫定税率を問題視し、自民党が少数与党であったことも背景に、自民、公明、国民民主の三党協議で「ガソリンの暫定税率を廃止する」との合意に至った。しかし、議論の対象はガソリン税だけであり、

「自動車重量税の暫定税率は置き去りにされたまま」

だ。課題は依然として山積している。

 一方で、高市政権の誕生によって、積極財政への転換が進むとの見方もある。自動車ユーザーの間では、税負担軽減への期待が高まっている。しかし、政治の現実は単純ではない。財源確保と産業支援、その両立が問われる局面が続くだろう。

維新との連立で揺れる政策決定

自動車税制決定の年, 残された重量税、止まった改革, 維新との連立で揺れる政策決定, 租税特別措置改廃の影響, 筆者への反対意見, 国民負担の限界と反発必至

全日本自動車産業労働組合総連合会のウェブサイト(画像:全日本自動車産業労働組合総連合会)

 高市氏は党内基盤が弱く、自民党総裁に就任したのも麻生太郎氏の後ろ盾を得てかろうじて実現したものだといわれている。その麻生氏の義弟であり、鈴木善幸元総理の息子でもある鈴木俊一氏が幹事長を務めることから、高市政権は

「第二次麻生政権」

とも呼ばれる状況にある。

 麻生氏や鈴木氏は必ずしも財務省と対決する方針ではない。さらに高市氏は総理大臣の首班指名も不安定で、公明党との連立も解消した。その結果、日本維新の会との連立を組まざるを得なくなった。

 国民民主党は支持母体として自動車関連の労働組合である全日本自動車産業労働組合総連合会(自動車総連)を抱えることから、自動車関係諸税の軽減について

「自民党以上に業界寄りの発言をする」

ことがある。しかし維新の会は業界との関係が薄く、どのような反応を示すかは未知数だ。維新の意向も無視できなくなったことで、高市氏の政策がどこまで通るかは予断を許さない。

租税特別措置改廃の影響

自動車税制決定の年, 残された重量税、止まった改革, 維新との連立で揺れる政策決定, 租税特別措置改廃の影響, 筆者への反対意見, 国民負担の限界と反発必至

税制調査会長に就任した小野寺五典氏(画像:首相官邸)

 実際、税制のあり方を事実上決める自民党税制調査会が存在する。その会長であった宮沢洋一氏は、ガソリン税の暫定税率を廃止するなら

「代替財源が不可欠」

と発言するなど、慎重な姿勢で知られていた。高市氏は就任早々、宮沢氏を後退させた。

 しかし、新たに税制調査会長に就任した小野寺五典氏も、ガソリン税暫定税率廃止の代替財源として国債発行を認めず、複数の手段を挙げた。

 まず、「租税特別措置の改廃」である。これは特定の産業や活動に対する税の優遇措置を見直し、廃止することを指す。例えば、企業の研究開発投資や環境対応車購入に対する税額控除が対象となる。優遇措置を減らせば、その分税収が増える。

 次に、「金融所得課税の強化」である。株や債券の利子、配当など、金融資産から得られる所得にかかる税率を引き上げることで、政府の財源を確保する狙いがある。

 さらに、「自動車関係諸税の課税強化」も示された。仮にガソリン税暫定税率が廃止されても、代替財源が自動車関係諸税から確保されるなら、自動車ユーザーにとってはプラスマイナスゼロとなり、実質的な軽減にはならない。

 加えて、自動車関係諸税は地方税であり、地方自治体にとって重要な財源である。通貨発行権を持たない自治体にとって、この税は

「絶対に減税してほしくない収入」

である。さらに、首相補佐官に就任した今井尚哉氏は、安倍政権時代にも補佐官を務めていた人物である。今井氏は反財務省的な動きを抑える役割でも知られている。

 こうした状況を踏まえると、高市政権の前途は多難であるといわざるを得ない。

筆者の意見

自動車税制決定の年, 残された重量税、止まった改革, 維新との連立で揺れる政策決定, 租税特別措置改廃の影響, 筆者への反対意見, 国民負担の限界と反発必至

地方自治体のイメージ(画像:写真AC)

 筆者の意見(松原晴雪、フリーライター)と想定される見通しを整理すると、高市政権誕生は自動車税負担の軽減に向けた追い風となる可能性がある。

 総裁選中の明言や税制調査会人事の刷新は、減税への期待感を高めている。国内経済の活性化の観点からも、税負担の軽減は歓迎されるだろう。自動車業界は電動車を含め、購入や保有にかかる負担軽減を長年求めてきた。税制見直しは、まさに「100年に一度の変革期」に即した措置となる。

 一方で、高市氏の党内基盤は弱く、維新の会や麻生派との調整が不可欠である。首相補佐官の今井尚哉氏など、反財務省的なブレーンも政権内に入っている。さらに、小野寺新税制調査会長の方針には、財源確保の観点から自動車関係税の増税も含まれている。

 加えて、地方自治体は税収減の穴埋め策を強く求めることが必須であり、単純な減税は容易ではない状況である。

 自動車関係諸税は複雑で過重な負担となり、自動車ユーザーを長年苦しめてきた。負担軽減は避けられない課題だ。経済産業省や自動車業界は、取得時に課される自動車税の環境性能割の廃止を求めている。

 これにより国内経済の活性化を図る狙いもある。自動車関係諸税に限らず、日本の税負担は国民所得のほぼ半分に達しており、国民生活は疲弊している。国民負担を軽減し経済活性化を進めなければ、経済停滞という負の遺産を次世代に押し付けることになる。

筆者への反対意見

自動車税制決定の年, 残された重量税、止まった改革, 維新との連立で揺れる政策決定, 租税特別措置改廃の影響, 筆者への反対意見, 国民負担の限界と反発必至

ドナルド・トランプ米大統領(画像:EPA=時事)

 一方で、自動車関係諸税の軽減には高いハードルが存在する。政治状況がそれを容易にしていない上、税制自体に内在する問題も減税の足かせになっている。

 そのひとつが、自動車関係諸税が

「地方自治体の重要な財源」

となっている点だ。道路特定財源ではなくなったとはいえ、税収は事実上、道路インフラの維持に使われている。その廃止でインフラ維持が可能かという反論は十分にあり得る。財務省にとって、高市氏の減税方針は財政健全化を損なう懸念材料である。

 さらに、経済産業省や自動車業界が負担軽減の対象として環境性能割の廃止を優先することも別の反発を招く。環境性能割の廃止は脱炭素政策に逆行すると総務省などが指摘しているからだ。加えて、減税の恩恵は新車購入層に偏り、

「中古車市場や低所得層への影響は限定的」

との指摘もある。

国民負担の限界と反発必至

自動車税制決定の年, 残された重量税、止まった改革, 維新との連立で揺れる政策決定, 租税特別措置改廃の影響, 筆者への反対意見, 国民負担の限界と反発必至

日本史上初の女性内閣総理大臣となった高市早苗氏(画像:首相官邸)

 結果として、高市政権の誕生は自動車税負担軽減の可能性を示した。しかし、党内基盤の弱さや連立相手との調整など、ハードルは高い。さらに、どの税目を軽減するかによっては、別の反発も招く可能性がある。

 一方で、国民の税負担は限界に達している。ガソリンの暫定税率廃止の代替財源を車体税に振り替えるような

「付け替え」

は、ユーザーから必ず反発を受けるだろう。

 加えて、高市政権を支持する層が、そのような結論で本当に納得するかも見極める必要がある。税制調査会も会長人事以外は公表されておらず、2025年中に方針を決定できるのか疑問も残る。自動車関係諸税を巡る議論だけでも、

「高市政権の前途が多難である」

ことは明らかだ。