「揺らぐジェンガ」のような米経済、富裕層依存の構造に深まるリスク

(ブルームバーグ): 米国経済は想定外の底堅さを示しているが、水面下では、低・中所得層の家計に弱さが広がっている。成長を牽引しているのは引き続き高所得層の消費者だ。

  持てる者と持たざる者の格差は目新しいものではない。ただ、足元では経済的な痛みが低所得層から中間層へと広がりつつある。富裕層との格差はいっそう鮮明となっており、一部の経済学者は、これが景気後退リスクを高める要因になっていると指摘する。

  所得分布上位10%の消費者は株高による資産効果の追い風を受け、米国の消費全体のほぼ半分を支えている。一方、低所得層の家計は厳しいやり繰りを強いられるなか、依然として高水準にある生活費や相次ぐ企業の人員削減の影響を受け、支出を抑えている。

Inflation Tracks Up As Consumer Price Index Rises 2.7 Percent

  外食チェーンのチポトレ・メキシカン・グリルやホテル大手ヒルトン・ワールドワイドなどの経営陣は、最近の決算説明会でこうした動向に言及した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も、二極化する経済の兆候を当局が慎重に注視していると述べた。

  「現在の米経済は、上の方に重心が偏って不安定なジェンガ(積み木崩しゲーム)のようだ」。経済の二極化拡大を表現する「K字型」の概念を広めた経済学者のピーター・アトウォーター氏はこう語る。

  人気ゲームのジェンガでは、木製ブロックを積み上げ、プレーヤーが片手でブロックを引き抜いて最上段に乗せていく。タワーは次第に不安定になり、最後に崩したプレーヤーが負けとなる。株式市場が過去最高値を更新する一方で、雇用の伸びが鈍り、人員削減がじわりと広がる現状は、この構図に重なる。

低・中所得層の消費者信頼感が低下 | 対照的に高所得者の信頼感は上昇している

  トランプ政権による大幅な政策転換にもかかわらず、米経済はエコノミストの予想を上回るペースで成長している。しかし、消費の動きが二極化し、限られた層が経済を支える構図が強まるなかで、米国がより深刻な景気減速に陥るリスクを懸念する声が広がっている。

  ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、マーク・ザンディ氏は「高所得の富裕層世帯に何らかの異変が生じれば、経済全体が極めて脆弱な状態に陥りかねない」と語った。

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  ブルームバーグが最近実施したエコノミスト調査では、当面の景気低迷は見込まれておらず、失業率も現在の水準から大きく上昇するとは予想されていない。しかし、低・中所得層では家計への圧迫感が一段と強まっている。

  ムーディーズ・アナリティクスによれば、足元では上位20%の高所得層が消費全体の約3分の2を占めており、過去最高水準となっている。一方、新型コロナ禍前に消費全体の4割超を占めていた残りの層の比率は、いまや37%にとどまる。調査会社サーカナのデータによると、低・中所得層の消費者は衣料品や玩具など幅広い分野で支出を減らしており、特に今年に入って関税が発表されて以降、その傾向が強まっている。

  信用調査会社トランスユニオンによると、個人向け与信全体にサブプライム(信用力の低い借り手)向けが占める割合が高まっており、7-9月は14.4%とコロナ禍前の水準に達した。家賃や食料品など生活必需品を中心にインフレ懸念が根強く、賃金の伸び鈍化や採用の停滞、雇用削減の拡大も重なる。さらに政府機関の閉鎖で食料支援や育児サービスの中断など多くの人々に影響が及び、状況は一段と悪化している。

  「所得下位層にとって、かつてはアメリカン・ドリームの一部だった多くのものが、いまや手の届かない存在になっている」とアトウォーター氏は語った。

富裕層依存

  企業各社も消費行動の変化に気付いている。食品スーパー大手のクローガーは9月、低・中所得層の買い物客がクーポンの利用を増やし、低価格の自社ブランドを選ぶ傾向が強まっていると明らかにした。外食を控える動きも広がっているという。

  高い利益率を誇る高価格帯製品を重視してきたアップルでさえ、低価格ノートパソコンの開発にかじを切り始めた。

  アトランタ連銀のボスティック総裁は先週、消費動向が変化していることについて言及。「企業経営者の景況感指標を見ると、足元の動きはやや鈍っていると感じているようだ」と述べた。「しかし、鈍化は必ずしも弱いとか問題があるということではない。極端な表現は聞かれていない」と付け加えた。

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  消費動向の二極化は珍しい現象ではなく、低所得層が物価上昇に敏感に反応するのも通常のことだ。しかし、足元の状況がこれまでと異なるのは、中間所得層が景気への悲観を背景に支出を抑制している点だと、トゥルイスト・アドバイザリー・サービスのマイケル・スコーデレス氏は分析する。従来は雇用が広範に失われない限り、こうした動きはみられなかったという。

   KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は先月のリポートで、現在懸念されるのは、本来「自然な範囲」とみなされる格差が「極端」な水準へと拡大し、経済全体を一段と脆弱にしかねないことだと指摘。「格差の広がりは不満や社会的不安を引き起こし、成長を促すどころか、むしろそれを蝕む存在になる」と警鐘を鳴らした。

原題:‘Jenga Tower’ US Economy at Risk as Spending Slowdown Spreads(抜粋)

--取材協力:Uma Bhat、Vince Golle.

(アトランタ連銀総裁の発言を追加します)

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