中国、先端半導体不足が深刻化 米輸出規制で打撃

中国がAI競争で優位に立とうとする中、国内企業は米国の輸出規制で痛手を被っている
中国政府は、米国の半導体輸出規制で窮地にある自国のテクノロジー大手を支援するため、積極的なアプローチを取っている。
事情に詳しい複数の関係者によると、先端半導体不足が深刻化していることを受け、中国政府は国内最大の半導体受託製造会社、中芯国際集成電路製造(SMIC)の生産物の供給に介入し始めた。当局は、SMICの技術を使って人工知能(AI)半導体を製造するハイテク複合企業かつ中国の代表的企業である華為技術(ファーウェイ)のニーズを優先しようとしているという。
中国のテック企業は限られた国内生産能力の確保に奔走しており、場合によっては、誰もが欲しがるエヌビディア製の高性能半導体を研究所がひそかに入手している。
話題のAIスタートアップ、ディープシークは今年、半導体不足のため、最新モデルのリリースを延期せざるを得なかった、と同社の事業に詳しい関係者が明かした。また別の関係者によれば、ファーウェイなどの企業は、AIモデルの訓練に役立つ巨大で電力消費量の多いシステムに数千個の半導体を束ねるなど、次善策を講じている。
中国企業と中国政府が最近の米国の輸出規制に直面して講じている措置の規模は、AI覇権争いにおける利害関係の大きさを示している。
米政府高官の間では、中国への半導体・製造装置の輸出制限を継続するか、それとも販売拡大を認めるかで意見が分かれている。彼らの目標はファーウェイ製半導体のさらなる高度化と世界的な需要拡大を防ぐことだ。ホワイトハウスの決定は国内(エヌビディアなどの企業)と国外の両方に影響を及ぼす。

ファーウェイなどは、米の半導体輸出規制を回避しようとしている
ドナルド・トランプ大統領は先ごろ、中国の習近平国家主席との会談で、新しいエヌビディア製半導体の対中輸出の可能性について議論しないことを選択した。これは、より優れた技術を提供することで中国軍を強化するなどの安全保障上のリスクについて、高官から警告を受けたためだ。
エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、中国は半導体の生産を急速に拡大しており、世界のAI開発者の半数が中国に拠点を置いていると主張している。また、エヌビディアがファーウェイと競争し、同社の半導体が世界中に拡散するのを阻止するために、自社の先端AI半導体「ブラックウェル」の中国向け輸出は認められるべきだとしている。
同氏は先ごろ「中国はAI分野で米国に数ナノ秒遅れているだけだ」と述べた。
エヌビディアやホワイトハウスのAI担当責任者デービッド・サックス氏などは、多くの専門家が中国の進歩の速さを過小評価しており、国家主導の投資は最終的に成果を上げるだろうと話す。
在米中国大使館の劉鵬宇報道官は「われわれの成熟した半導体生産能力は世界市場の約28%を占めており、先端半導体セクターは画期的な成果を生み出している」と述べた。

中国のAIスタートアップ、ディープシークは今年、半導体不足のため、最新モデルのリリースを延期せざるを得なかった
中国でテック分野を監督する工業情報化部、SMIC、ファーウェイ、ディープシークの担当者はコメント要請に応じなかった。
中国の自立
多くの専門家によれば、中国の半導体生産を定量化するのは困難だが、最も楽観的な予測でさえ同国の需要を満たせておらず、完全な自給自足を実現することの難しさを示している。
シンクタンクのインスティテュート・フォー・プログレスの著名な技術フェローで、バイデン政権下で輸出規制に携わったサイフ・カーン氏は「数字を5倍にしても、国内市場の需要を満たすには程遠いかもしれない」と述べた。
中国当局者は自国の半導体製造能力について、米国ほど先進的ではないことを認めながらも、急速に発展しており、工業生産を加速させることができる政治体制によって支えられていると言う。
在ニューヨーク中国総領事館の馬蕭蕭・副総領事は先週の記者会見で、「今は米国ほど良くないかもしれないが、その差はどんどん縮まっていくだろう」と述べた。

トランプ氏は、習氏との最近の会談で、新しいエヌビディア製半導体の対中輸出の可能性について議論しないことを選択した
関係者によると、中国が半導体自給率の向上を目指す中、当局は国有データセンターにエヌビディア製半導体の使用を中止するよう指示し、一部では既存のエヌビディア製品をサービスから撤去する動きもある。また、企業にエヌビディアの旧製品を使用しないよう指示しており、一部のアナリストはこれを米国との交渉でより優れた半導体へのアクセスを確保するための駆け引きと見ている。
この移行は痛みを伴うものだった。エンジニアはエヌビディアの独自ソフトウエアエコシステムに慣れており、国内の代替品には過熱やシステムクラッシュ、ソフトウエアサポートの不足といった問題があると指摘し、苦労しているという声もある。
次善策
制限に直面する中、上海を拠点とするメタXなどの一部の半導体企業は、より古く入手しやすい技術で半導体を設計し、二つ以上の小型半導体を組み合わせて、限られた計算能力を補っている。複数の関係者によれば、中国企業におけるバンドリング戦略は電力を大量に消費するデータセンターを生み出し、複数の地方政府が電力料金の補助を開始する事態を招いているという。
中国企業はまた、エヌビディア製半導体の密輸を続けたり、クラウドコンピューティングを利用して他国でリモートアクセスしたりしている。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した契約書によると、少なくとも16基の冷蔵庫サイズのブラックウェルラック(小型部品に分割して輸送され、中国で再組み立てされる)が11月までに納入される予定だった。この半導体の数量では、先進的な大規模AIモデルの訓練には不十分だが、研究の実施や強力なアプリケーションの開発には依然として有用だ。
エヌビディアは、密輸は大規模に行われているわけではないとし、中国での生産能力不足や同社製品の需要を示す数字に異議を唱えている。「中国国内の産業は、望ましくない用途や軍事用途に十分すぎるくらいの国産AI半導体とサーバーを保有しており、数百万個の余剰がある」と同社の広報担当者は述べた。
中国が独自に生産できる半導体には限界がある。米国は、シリコンウエハーに数十億個のトランジスタが埋め込まれた微細なパターンを描画する「極端紫外線リソグラフィー装置」と呼ばれる装置の販売を禁止している。
中国の製造工場は、効率の低い古い製造技術に頼らざるを得ず、これによりエラーが増え、製造される半導体のうち使用可能な割合が低下している。モルガン・スタンレーのアナリストらは9月のリポートで、SMICの技術を用いてファーウェイの先端半導体「910C」を製造すると、生産されるシリコン100枚のうち95枚が使用不能になる可能性があると推定した。