高市政権襲う「トリプル安」、予算膨張警戒で市場陶酔に終止符も

(ブルームバーグ): 高市早苗首相が就任後初めて大きな市場の試練に直面している。政府が取りまとめる経済対策を巡って不安が広がり、政権誕生により勢いづいた株式相場の上昇が頓挫しかねない状況だ。

  高市政権による歳出拡大が日本の財政を悪化させるとの懸念から、国債利回りは今週急上昇し、円は為替介入のリスクが高まる危険水域へと下げが加速した。20日の日経平均株価は急反発しているが、18日には4月以来の大幅な下落率を記録した。

  政府は21日にも経済対策を閣議決定する予定で、「日本売り」の動きはこれからが本番となる可能性がある。円は19日の海外市場でドルに対して1%余り下落。20日の東京市場ではさらに下げを拡大し、10カ月ぶりの安値を更新している。

  RBCブルーベイ・アセット・マネジメントの最高投資責任者(CIO)、マーク・ダウディング氏は「もし高市首相が政策面での信認を失えば、投資家は日本資産の全てを売り始めるだろう」と語る。日本で「政策ミスとの認識」が広がった場合には、イールドカーブ(利回り曲線)取引で長期債の売りポジションを増やす予定だと話した。

APEC Economic Leaders' Meeting

  日本市場で今週見られた資産横断的な売りは、いわゆる「高市トレード」の脆(もろ)さを浮き彫りにした。積極的な財政・経済政策が経済成長を押し上げるとの期待から、日経平均株価は10月末にかけて史上最高値を更新したが、高市政権発足からわずか1カ月足らずで首相選出以降の上げを全て失い、投資家に厳しい現実を突きつけた。

  アシンメトリック・アドバイザーズの日本株ストラテジスト、アミール・アンバーザデ氏は、トレーダーらは当初、高市氏の景気刺激的な政策姿勢を歓迎していたが、今や多くが「溺れかけている」と指摘。「ハネムーン期間は終わった」と話す。

  同氏によれば、投資家心理を冷やしているのは財政拡張への懸念だけではない。高市首相はこの2週間の間に基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化の単年度目標を撤回したほか、企業統治指針を株主重視から転換する方針を示し、中国との外交摩擦も引き起こした。こうした一連の動きが投資家を動揺させているという。

  次の試練となるのが経済対策の発表だ。その裏付けとなる2025年度補正予算は昨年度の13兆9000億円を上回るとみられ、一部の自民党議員は25兆円程度の規模を求めている。

財政懸念がマーケットの重しに

  T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフストラテジストは「25兆円は規模が大きく、そこまでやる必要があるかという疑問の声がある」と指摘。経済対策の発表を機に株式・債券・円が同時に下落する「トリプル安」のリスクがあるとし、22年にトラス政権下の英国を襲った市場混乱の再現を懸念する。

  TDセキュリティーズのマクロストラテジスト、アレックス・ルー氏は高市首相が「大型予算」を目指すなら、日本の長期ゾーンの国債利回りはさらに上昇する可能性があると述べた。さらに、20日に公表される米国の雇用統計を受けてドル高が進めば、円は1ドル=160円に向けて下落する恐れがあるとみている。

円、対ドルで1月以来の安値圏に

  円はすでに対ドルで1月以来の水準に下落しており、さらなる円安の進行は政府・日本銀行による為替介入を誘発しかねないとルー氏は指摘する。通貨当局による介入のトリガーとされる円の下落スピードを示す指標は、この1カ月の間に過去の介入実施時に見られた水準に数回接近している。

  通常、円安は日本株、特に輸出関連株にとって追い風となるが、足元では日中外交摩擦への懸念に世界的なハイテク株や暗号資産の調整が重なり、株式市場はほとんど支援材料が見当たらない状況にある。

  日経平均は20日、米エヌビディアの好調な決算を受けて約4%上昇した。ただ、日中間の新たな摩擦によるリスクが残っており、月初から19日までのパフォーマンス(7.4%安)は米S&P500種株価指やMSCI世界株指数を下回る。

日経平均、11月に入ってから世界株に出遅れ

  みずほ銀行の経済・戦略責任者、ビシュヌ・バラサン氏は「今の相場は非常にいびつな構図だ」と指摘。円安が進んでも日本株が上がらず、利回り上昇にもかかわらず円は強くならず、「市場参加者が互いの出方を探っている状況」にあると話した。

  日本市場は短期的にボラティリティーの高い状態が続く可能性があるが、一部の投資家は高市首相の経済対策が中長期的に日本資産を支えるとの見方を崩していない。キャピタル・エコノミクスのアジア太平洋市場統括責任者、トマス・マシューズ氏は高市首相が財政刺激策を実行して景気が過熱し始めれば、日銀の利上げは避けられず、「そうなれば来年には円が急反発する可能性がある」とみている。

--取材協力:横山桃花、近藤雅岐.

(第3段落に円の動きを追加します)

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