財政リスクと株バブル崩壊、危ないのはどちらか…円安を左右する「日本売り」VS「米国売り」の“綱引き”【今週の予想レンジ〈154~159円〉の根拠】

11月26日~12月1日の「FX投資戦略」ポイント, 高市政権の「財政政策」への懸念から円安が拡大した先週, 日本の長期金利と米ドル/円の連動続く…一時158円近くまで円安に, なぜ日本株は積極財政好感の上昇から下落に転換したのか, 11月から広がりだした世界的株安…「バブル崩壊」の始まり?, 相場のゆくえを左右する「日本売り」VS「米国売り」, 2024年まで円安の“幕引き役”だった為替介入だが…, 今週の米ドル/円は「154~159円」と予想

(※画像はイメージです/PIXTA)

高市政権の財政リスク懸念から円安が一時158円近くまで進み、日本株も下落へ転じ「日本売り」の様相を強めた先週の米ドル/円。その一方で、米国主導の世界的株高にも変化の兆しがみられ、上がり過ぎた株価が下がる「米国売り」の恐れがあるとみられます。その理由と今週予想される相場展開について、本記事でくわしくみていきましょう。

11月26日~12月1日の「FX投資戦略」ポイント

<ポイント>

・先週は高市政権の財政リスクへの懸念から、一時158円近くまで円安が進行した。

・11月に入り、日本株も下落へ転換。債券や円と合わせ「日本売り」の様相に。一方、米国主導の世界的株高にも変化の兆し。円安を食い止めるカギは「日本売り」と株価バブル崩壊を受けた「米国売り」の綱引きにあるとみられる。

・今週の米ドル/円は「154~159円」と予想。

高市政権の「財政政策」への懸念から円安が拡大した先週

日本の長期金利と米ドル/円の連動続く…一時158円近くまで円安に

高市政権の積極財政政策は、財政規律への懸念から円売り要因になっているとみられます。こうしたなか、先週も米ドル/円は上昇を続け、一時は年初来高値の158.8円に迫る展開となりました。ただ、21日に高市政権の経済政策が発表されたあとは、156円前半まで反落しました(図表1参照)。

11月26日~12月1日の「FX投資戦略」ポイント, 高市政権の「財政政策」への懸念から円安が拡大した先週, 日本の長期金利と米ドル/円の連動続く…一時158円近くまで円安に, なぜ日本株は積極財政好感の上昇から下落に転換したのか, 11月から広がりだした世界的株安…「バブル崩壊」の始まり?, 相場のゆくえを左右する「日本売り」VS「米国売り」, 2024年まで円安の“幕引き役”だった為替介入だが…, 今週の米ドル/円は「154~159円」と予想

[図表1]米ドル/円の日足チャート(2025年9月~) 出所:マネックストレーダーFX

財政規律への懸念が円売り要因になっていることを裏付けるように、158円台までの米ドル高・円安は日本の長期金利上昇(債券価格下落)とほぼ連動したものでした。そして、21日の経済政策発表後に長期金利が低下へ転じると、米ドル安・円高へ戻すところとなったのです(図表2参照)。

11月26日~12月1日の「FX投資戦略」ポイント, 高市政権の「財政政策」への懸念から円安が拡大した先週, 日本の長期金利と米ドル/円の連動続く…一時158円近くまで円安に, なぜ日本株は積極財政好感の上昇から下落に転換したのか, 11月から広がりだした世界的株安…「バブル崩壊」の始まり?, 相場のゆくえを左右する「日本売り」VS「米国売り」, 2024年まで円安の“幕引き役”だった為替介入だが…, 今週の米ドル/円は「154~159円」と予想

[図表2]米ドル/円と日10年債利回り(2025年9月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ただしこれは、経済政策の発表を受けて財政規律への懸念が後退したことを意味するものではありません。

今回の経済政策は総額21兆3,000億円と、2020年の「コロナ・ショック」以降で最大規模となり、むしろ財政悪化への懸念を再確認させる内容だったと考えられます。

その意味では、「日本の長期金利上昇=円安」の流れが転換したと判断するのは、まだ時期尚早といえるでしょう。

なぜ日本株は積極財政好感の上昇から下落に転換したのか

ところで先週は、株価の下落が一段と広がりました。11月に入ってから続いていた株安に対し、円安はほとんど反応を示していませんでしたが、それに少し反応したのが21日の米ドル安・円高にはわずかに反応した可能性があります。

円安とは対照的に、株価は10月末までは高市政権の積極財政を好感して大きく上昇する状況が続いていました。それが、11月に入り一転して大幅な下落に転じたのはなぜでしょうか(図表3参照)。

11月26日~12月1日の「FX投資戦略」ポイント, 高市政権の「財政政策」への懸念から円安が拡大した先週, 日本の長期金利と米ドル/円の連動続く…一時158円近くまで円安に, なぜ日本株は積極財政好感の上昇から下落に転換したのか, 11月から広がりだした世界的株安…「バブル崩壊」の始まり?, 相場のゆくえを左右する「日本売り」VS「米国売り」, 2024年まで円安の“幕引き役”だった為替介入だが…, 今週の米ドル/円は「154~159円」と予想

[図表3]米ドル/円と日経平均(2025年9月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

日本株の下落拡大は、米国が主導していた世界的な株高が株安へと転換したことに連動したとみられます。

つまり、10月末までの円安・株高は、高市政権の積極財政に対して「円売り・株買い」という正反対の評価があったのではなく、株高は世界的な株高に連動していた可能性が高いと考えられます(図表4参照)。

そうであれば、日本株の今後のゆくえは、世界的な株高がすでに終わったかどうかが目安となるでしょう。

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[図表4]日経平均とナスダック総合指数(2025年1月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

11月から広がりだした世界的株安…「バブル崩壊」の始まり?

米ナスダック総合指数は7月以降、最大で7%以上の比較的大きな下落を記録しました。先週は米半導体大手エヌビディアの決算発表を受け、大きく反発する場面もありましたが、翌日には再び大幅反落するなど、不安定な動きが目立っています。

さらにナスダック指数のNYダウに対する相対株価をみると、一時0.5倍以上に拡大しました。これは2000年のITバブル期を上回る割高水準であり、ナスダックの相対的な割高感は“超バブル”といっても過言ではない状況です(図表5参照)。

11月26日~12月1日の「FX投資戦略」ポイント, 高市政権の「財政政策」への懸念から円安が拡大した先週, 日本の長期金利と米ドル/円の連動続く…一時158円近くまで円安に, なぜ日本株は積極財政好感の上昇から下落に転換したのか, 11月から広がりだした世界的株安…「バブル崩壊」の始まり?, 相場のゆくえを左右する「日本売り」VS「米国売り」, 2024年まで円安の“幕引き役”だった為替介入だが…, 今週の米ドル/円は「154~159円」と予想

[図表5]NYダウに対するナスダック指数の相対株価(1990年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

この“超バブル”の修正が本格化し、いわゆる「バブル崩壊」が始まったとすれば、それは米ドル売りの急拡大につながる可能性があります。

冒頭で触れたように、日本の財政リスク懸念に伴う「日本売り」による円安に歯止めがかかるかどうかは、米国主導の世界的株高の「バブル崩壊」にともなう「米国売り」が拡大するかどうかにかかっているといえるでしょう。

相場のゆくえを左右する「日本売り」VS「米国売り」

2024年まで円安の“幕引き役”だった為替介入だが…

先週、米ドル/円は148円台で円安が一巡し、146円台まで円高に戻しました。その背景には、日本政府関係者から米ドル売り・円買い介入の可能性が示唆されたことが一因としてあるとみられます。ただし、現時点で米ドル売り介入の可能性はまだ低いでしょう。

2024年、日本の通貨当局は160円前後で断続的に米ドル売り介入を実施しました。水準面では再びその圏内に近づいていますが、過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)かい離率でみると状況は異なります。2024年の為替介入時はプラス20%以上だったのに対し、足元では15%程度にとどまっています(図表6参照)。

2022年の介入時もかい離率はプラス20%以上だったことから、2024年までと同じ方針が続く限り、米ドル売り介入が当面行われる可能性は低いとみられます。

11月26日~12月1日の「FX投資戦略」ポイント, 高市政権の「財政政策」への懸念から円安が拡大した先週, 日本の長期金利と米ドル/円の連動続く…一時158円近くまで円安に, なぜ日本株は積極財政好感の上昇から下落に転換したのか, 11月から広がりだした世界的株安…「バブル崩壊」の始まり?, 相場のゆくえを左右する「日本売り」VS「米国売り」, 2024年まで円安の“幕引き役”だった為替介入だが…, 今週の米ドル/円は「154~159円」と予想

[図表6]米ドル/円の5年MAかい離率と為替介入(1990年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

もう1つ重要なのは、現在の状況が2022年や2024年の介入局面と異なり、介入が「失敗」に終わるリスクを抱えていることです。過去の介入は米ドルが“買われ過ぎ”の局面で行われましたが、足元ではその懸念がまだ低いとみられます(図表7参照)。

11月26日~12月1日の「FX投資戦略」ポイント, 高市政権の「財政政策」への懸念から円安が拡大した先週, 日本の長期金利と米ドル/円の連動続く…一時158円近くまで円安に, なぜ日本株は積極財政好感の上昇から下落に転換したのか, 11月から広がりだした世界的株安…「バブル崩壊」の始まり?, 相場のゆくえを左右する「日本売り」VS「米国売り」, 2024年まで円安の“幕引き役”だった為替介入だが…, 今週の米ドル/円は「154~159円」と予想

[図表7]米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

今週の米ドル/円は「154~159円」と予想

2024年までの円安局面では、日本の米ドル売り介入が円安終了の大きな要因となりました。しかし、今回は事情が異なる可能性があります。今回の円売りの主役は、日米金利差を背景とする投機筋ではなく、日本の財政リスクを受けた資本流出だからです。

したがって、円安が止まるかどうかの目安は、日本以上に米国から資本流出が拡大するかどうかにかかっています。具体的には、株価の“バブル”崩壊が米国で本格化するかが焦点となるでしょう。

以上を踏まえると、今週は特に米国株の動向に注目しながら、米ドル/円は「154~159円」と予想します。

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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