コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置」新基準、リビング・ダイニングは31口を提案

<住宅のコンセントは「部屋の2隅」にあるのが一般的。明らかに足りていないが、いくつあるのが理想なのか。パナソニックの新たな提言とは?>, 住宅を建てるときに「配線」を考えていない, 新築施主の75%がコンセントに不満あり, 部屋の四隅、テレビ周り、収納内などに分散配置

コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置」新基準、リビング・ダイニングは31口を提案

住宅にあるコンセントの口数・位置がニーズに合っておらず、タコ足配線になっている家は珍しくない years44-shutterstock

<住宅のコンセントは「部屋の2隅」にあるのが一般的。明らかに足りていないが、いくつあるのが理想なのか。パナソニックの新たな提言とは?>

自分の家にコンセントがいくつあるか、知っているだろうか。

たとえワンルームマンションに住んでいても、即答できる人はほとんどいないだろう。それでも、誰もが知っていることがある。「コンセントが足りない」という事実だ。

スマホ、タブレット、スマートウォッチ、縦型クリーナー、サーキュレーター、電気調理鍋、コーヒーメーカー、電動歯ブラシ、美顔器......。ますます便利になる暮らしと引き換えに、充電が必要な家電、大容量の家電は増え続けている。

一般的な住宅のコンセントの口数については後述するが、その数や位置に対する不満を持っている人は多いようだ。部屋の片隅や家電の裏側がタコ足配線になっている家は珍しくない。

この問題を解決するには、どうすればいいか。日本の電設資材メーカー最大手、パナソニックがこのたび、「文化」を変えるところから取り組むと、新たな提言を発表した。

名付けて「でんきの設備でeくらし」。住宅(戸建て・マンション)の電気設備設計の新基準を提案し、2030年までに定着させることを目指す。提案するコンセントの新基準は「四隅配置」だ。

<住宅のコンセントは「部屋の2隅」にあるのが一般的。明らかに足りていないが、いくつあるのが理想なのか。パナソニックの新たな提言とは?>, 住宅を建てるときに「配線」を考えていない, 新築施主の75%がコンセントに不満あり, 部屋の四隅、テレビ周り、収納内などに分散配置

パナソニック エレクトリックワークス社 マーケティング本部 電材営業統括部長の平岡勇氏 Newsweek Japan

住宅を建てるときに「配線」を考えていない

パナソニック エレクトリックワークス社の平岡勇氏(マーケティング本部電材営業統括部長)によれば、家づくりの中で、間取りやデザインに関する話し合いは多いが、コンセントや電気設備の話は後回しになりがちだという。

住宅を建てる前から、コンセントや配線のことを考えてもらう「文化」を根付かせたい――。

そのために同社は、電気設備に対する一般の関心を高め、住宅メーカーや電気工事店に働きかけ、業界を挙げて取り組んでいく計画だ。「数年かけて『文化』を変える運動になる」と、平岡氏は言う。

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パナソニック エレクトリックワークス社の津工場(三重県)に併設されているショールーム「TRUST FACTORY TSU」には、創業当時の日本家屋が再現された展示もある。1918年のアタッチメントプラグ発売に続く、1920年の2灯用クラスタ(写真)発売により、1つの電灯ソケットから2系統の電源を取れるようになり、部屋のあかりを付けたまま電気アイロンやこたつを使えるようになった Newsweek Japan

1918年に創業し、今日の配線器具にあたるアタッチメントプラグを発売したパナソニックにとって、配線器具は祖業だ。1966年に「電気の1・2・3運動」を展開し、「1つの部屋に2つのあかり、3つのコンセント」を提案。日本の住宅設計に大きな影響を与えた。

1993年には「電気設備のABC」キャンペーンを開始し、A(安全)、B(便利)、C(コントロール)の重要性を普及させた。このたびの「でんきの設備でeくらし」は、それ以来の大型キャンペーンとなる。

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パナソニック エレクトリックワークス社 電材&くらしエネルギー事業部事業部長の川本哲靖氏 Newsweek Japan

新築施主の75%がコンセントに不満あり

「いま改めて日本の暮らしに目を向けると、ライフスタイルや価値観が大きく変わっている。こうした変化に対し、現状では十分に対応できているとは言えない」と、パナソニック エレクトリックワークス社の川本哲靖氏(電材&くらしエネルギー事業部事業部長)は反省を口にする。

実際、同社が今年4月にルームクリップと共同で家を新築した約1000人を対象に実施したアンケートでは、75.4%がコンセントに関する不満があると回答。「家具などで隠れてしまう」「季節家電を好みの位置に置けない」といった声が寄せられた。

日本では、電気設備に関する法令にも、電気工事の設計・施工・検査などに関する民間規格である「内線規程」にも、コンセントの「数」「位置」についての明確な規定はない。

一方、アメリカには、州や郡など地方政府が採用する「全米電気規定(National Electrical Code)」があり、それには「壁のどの地点からも6フィート(約1.8メートル)以上離れない場所に設置しなければならない」といったコンセントの位置に関する規定も含まれるという。

部屋のどこからでもコンセントにアクセスしやすくするための規定であり、「でんきの設備でeくらし」キャンペーンの開始にあたって参考にしたと川本氏は説明する。

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「四隅配置+くらしに合わせたアドオン」を日本の住宅の新基準に、とパナソニックは提唱する(同社記者発表資料より)

部屋の四隅、テレビ周り、収納内などに分散配置

現在の主流は、コンセントを部屋の対角の2カ所に設置する「二隅配置」だ。これからは「四隅配置+くらしに合わせたアドオン」を定番にすることをパナソニックは提唱する。「アドオン」とは使い勝手を考えて、あらかじめ追加して設計しておくことを指す。

同社の調査によれば、一般的な住宅で、リビング・ダイニング周りの現在のコンセント数は約11口だという。これを部屋の四隅、テレビ周り、ダイニングテーブル、収納内、ソファ周りなどに分散配置し、計31口(推奨16口+アドオン15口)まで増やすのが提言の内容となる。

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リビング・ダイニング周りのコンセント数は計31口(推奨16口+アドオン15口)へ――。このような「〈部屋別〉コンセント計画 プラン例」のほか、Wi-Fiと有線LAN、EV充電設備、住宅分電盤の選び方などをまとめた「電気設備の教科書」を作成し、住宅メーカーにも使ってもらうようにする計画だという(同社記者発表資料より)

キッチン周りは現在の約8口から計20口(推奨14口+アドオン6口)へ、ワークスペースでは現在の約5口から計17口(推奨13口+アドオン4口)へ。

戸建ての場合、照明や防犯カメラ、EV充電用として、エクステリア(屋外)のコンセント配置も考えなくてはならない。これは現在の約4口から計13口(推奨8口+アドオン5口)へ増やすのがいいという。

「近年、住宅が高断熱化しており、後からコンセントを追加するのが難しいが、特にエクステリアは慎重に準備したほうがいい」と、平岡氏は説明する。

リビング・ダイニングでは「現状は11口、理想が31口」――。多くの住宅で、いかにコンセントが不足しているかが分かるだろう。

パナソニックの「でんきの設備でeくらし」キャンペーンは「これからの新基準」を作るもので、既存住宅におけるコンセント不足の悩みを直接解消してくれるものではない。だが、この新しい「文化」が広まれば、賃貸住宅の設計や既存住宅のリフォームにも影響していくはずだ。

過電流、発熱・発火の原因となるタコ足配線には、火災のリスクが付きまとう。日本の住宅をより安全に、そして便利にするために「新基準」の定着に期待したい。

森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)