「賃上げはコスト増」関西の中小企業から厳しい見方 高市首相は「5%超維持」主張も…

大阪市をはじめとした関西には中小企業が集積している=2020年8月、大阪市(本社ヘリから)

高市早苗首相が「5%超の賃上げ定着」を掲げる中、関西企業からは「賃上げはコスト増につながる」として経営改善に対する賃上げの実効性に厳しい見方が出ている。政府は、賃上げを成長と分配の好循環の中核と位置付けるが、物価高騰が続く中で賃上げに不可欠な価格転嫁が一向に進んでいない。企業の収益性向上につながる直接的な施策が求められる。

政府は11月25日、労働団体や経済界と賃上げなどを協議する政労使会議を開催。高市首相は、前年からの賃上げの勢いを維持するよう求めた。

石破茂前内閣では「2020年代に最低賃金を全国平均で時給1500円まで引き上げる」ことを目標とした。高市内閣の総合経済対策ではこの目標値に触れていないが、価格転嫁と生産性向上支援などによる、最低賃金引き上げのための環境整備を打ち出す。

だが、賃上げをめぐっては、中小企業を中心に関西企業から厳しい見解が示されている。帝国データバンク大阪支社が9月に実施し、関西の1680社から回答を得た調査では、最低賃金引き上げが消費回復に効果が「ある」と回答したのは11・8%で、「ない」が49・5%だった。

賃上げは経営体力の乏しい中小企業には重しとなる。回答企業からは「税金や社会保険料も上昇するので、雇用主は疲弊し、労働者の手取りはほとんど増えない」と悲観的な声が聞かれた。

原材料費や光熱費の上昇が続いており、コスト上昇分の適切な価格転嫁が望ましいが、中小企業庁によると、コスト上昇分を価格に反映した割合を示す価格転嫁率は、9月時点で53・5%と大きくは伸びていない。

大阪商工会議所の鳥井信吾会頭は、賃上げの原資を生み出すための価格転嫁推進を訴え、「最低賃金を上げて消費経済を回すべきだ」と語る。

りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は、価格転嫁が進まない要因について、消費者が商品の値上げを嫌う傾向が変わらず、小売りなど「川下」の業種で値上げできていないと指摘。その上で「企業の賃上げコストを直接的に軽減するため、従来の延長線上にとどまらない、思い切った政策が必要だ」とした。(牛島要平)