ウォーレン・バフェットの「株売却」はAIバブル崩壊の予兆か否か…米株アナリストが語る「納得の見立て」

マネックス証券のチーフ外国株コンサルタント、岡元兵八郎氏。長年のバフェットウォッチャーで、バフェットの投資会社バークシャー・ハサウェイの株主総会は例年参加。引退発表の場にも居合わせた。

アメリカ株市場の動向を示すNYダウ平均は11月12日に史上最高値を更新し、史上初めて4万8000ドルを上回った。その後、急落に転じ、11月20日には4万5000ドル代まで一時急落するなど、激しい値動きを見せている。

これに前後して投資の神様ウォーレン・バフェット氏が退任を表明したばかりのバークシャー・ハサウェイが現金保有を過去最高水準に引き上げたことも含めて、「AIバブル崩壊」の警戒感を強める要因となっている。

果たして「AIバブル」は2026年、崩壊するのか。

マネックス証券チーフ外国株コンサルタントの岡元兵八郎氏に、ドットコムバブルとの比較を通じて市場の行方を聞いた。

バフェットの株売却は「AIバブル崩壊への警戒」ではない

2025年5月の伝説的な出来事となったバフェットの退任発表をしたバークシャーハサウェイの株主総会の様子。

AIバブル崩壊論を語る際、しばしば引き合いに出されるのが、バフェットの投資会社バークシャーハサウェイの現金保有額が2025年第3四半期決算で過去最高を記録した事実だ。

投資の神様もAIバブルとも言われるアメリカ株市場の割高を警戒しているのでは —— そんな見方が一部であるのは事実だ。

しかし、岡元氏はこの見方を明確に否定する。

「バフェット氏は相場の見方をシェアしない。現金が増えているのは、決してマーケットが高いからではないと思っています」

そもそも、バフェット氏はバリュー投資家、つまり割安銘柄を見つけて、最終的に大きなリターンを狙う手法を一貫して続けている。また、投資手法をブレさせない投資家としても知られている。

「(バフェット氏は)自分はバリュー投資だと決めたら、バリュー投資しかやらない。ゆえに、上がりそうなハイテク株があっても一切触らない」

つまり、エヌビディアなどのAI関連銘柄を、少なくとも成熟した今の段階では投資対象として見ていないはずだと見る。

ではなぜ、バークシャーの保有現金が積み上がっているのか。岡元氏が指摘するのは、バフェット氏の投資対象の限定性だ。

「最近の彼の株式投資を見ていると、本業である保険会社の株や資源系の投資がとても多い。そちらのエリアを集中して獲物を狙っているという感じがします」

バフェット=バークシャーの投資は、基本的に巨額。それゆえに、株を買うという行為自体が、難しい調整を伴うことがある。

実際、2025年5月の株主総会では、バフェット氏自ら「大きな案件があったが成立しなかった」とも明かしている。

ここには少し説明が必要だ。バークシャーの投資は基本的に巨額になるため、場合によっては発行済み株式の3〜10%を取得することもある。投資先企業の経営陣からすれば、経営の意思決定に影響する規模になりうるため、対話は欠かせない。

実際、バフェット氏の「日本株投資」として有名な日本の総合商社株への投資の際、2020年8月の公表当初は「10%以上には増やさない」と明言していたほどだ(その後、2025年夏に、この上限値を緩和してバークシャーの保有比率が10%超になったこと自体がニュースになった)。

そもそも「彼らが本格的に株を買うってことは、やっぱり大変」(岡元氏)なのだ。

結果、この大型案件が不成立に終わったため、

「あくまでも今買う銘柄がたまたま見つからないだけ。獲物が出てくるまでじっと待っているのが彼のスタンス」(岡元氏)

つまり、大型案件が不成立に終わった結果、現金が残った —— これが実態ではないかと岡元氏は示唆する。

バフェットはそもそもAI関連株を投資対象にしていないし、バークシャーの保有現金が増えていることもAIとは関係がない。

つまり、AI市場の行方を占う上で、バフェット氏の動向を参照するのは適切ではない —— これが岡元氏の見解だ。

AIバブルの行方は「ドットコムバブル」との比較でわかる

ウォーレン・バフェットの自宅。この自宅も、数十年前に購入して以来、長期に保有し続けており、不動産価値も大きく上がっている。バフェットが得意とする「長期投資」は自宅不動産にも言える。

それでも、バフェットの投資動向とは無関係に、現在のアメリカ株市場をドライブしている大きな要因がAI銘柄であることは岡元氏も認める。

11月、エヌビディア株が決算を契機に大幅に下げに転じるなど、「AIバブル崩壊か」との論調は次第に現実味を帯び始めているようにも感じられる。

岡元氏は、バブルの崩壊を考えるなら、1990年代のドットコムバブルと比較分析すべきだと指摘する。

ドットコムバブルは、ブームが始まってから最終的にバブルになるまで5年以上を要した。一方、生成AIブームが始まったのは2022年11月。約3年が経過したに過ぎない。

「世の中の動きは早いので、(今も)同じタイムフレームではないかもしれないものの、やはりブームが始まって3年でバブルになって崩壊はしないと思う」

加えてドットコムバブルでは、インターネットという新技術への過度な期待が先行し、収益モデルが不明確な企業にも資金が流入した。

しかし、現在のAIブームでは、いくつかの点で状況が異なる。

ドットコムバブル崩壊とは「何が違う」のか

OpenAIのサム・アルトマンCEO(左)とNVIDIA創業者のジェンスン・フアン氏。

岡元氏が注目するのは、AI投資の収益性が実証され始めている点だ。

エヌビディアのジェンスン・フアンCEOやメタ(旧フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグCEOなど、AI銘柄大手の経営者の発言を総合すると、明確な傾向が見える。

「やっぱり色んな人たちの話を聞くと、AI投資はここで終わらない、これからもまだ続くし、かつ、少しずつ企業がAI投資をすることによって『リターンを得ている』との発言が散見されている。この勢いは、多分止まらないと思う。それを考えると、来年(2026年)もまだAIブームにドライブされたマーケットの上昇は継続するんだろうなと」

ただし、市場が一本調子で上昇し続けるとは考えていない。それは、アメリカ株市場のこれまでの特性を見ていれば分かることだと岡元氏。

「アメリカのマーケットは史上最高値を10月28日(取材時点。その後11月12日に最高値を更新)につけましたが、もちろん毎日上がるわけでもない、毎週上がるわけでもない、毎月上がるわけでもない。必ず調整はあります。それはバブルが弾けたということではなく、普通の『調整』です」

岡元氏によると、アメリカ市場は1929年の世界恐慌以降、平均して年1回は10%以上の調整、年3回は5%以上の調整を経験している。

「(株価が)下がるのはある意味普通のことなんです。それを踏まえた上で、投資を検討される方は長期的な視点を持って投資をされる必要があります」