2026年、米国株は“バブル崩壊”の瀬戸際へ? 一方の日本株は「勝ちやすい条件が揃う」5つの決定的な理由

“常識破りの局面”出現?…2026年、米国株は「バブル」本格化へ, 投資家は、「バブル的過熱」への備えを, 前半は不安定、後半は回復基調…米国「中間選挙年」の傾向, 米国市場は製造業に注目、欧州は「割安」も成長材料に不足, ウクライナ情勢、米中対立…意識したい地政学リスクと“逃げ場”, 日本株が「いいポジションにある」といえる5つの理由, 1.設備投資の拡大, 2.賃上げと消費回復, 3.インフレの定常化, 4.株主還元と市場改革, 少数与党でキーとなる「積極財政」, 5.政治は積極財政に動くか

(※画像はイメージです/PIXTA)

米中対立や長引くウクライナ情勢といった地政学リスクに加え、米国株のバブル懸念や欧州株の停滞など不安要素が重なり、2026年にかけても投資家心理は揺れやすい状況が続きそうです。日本国内でも政治基盤の不安定さや財政運営への懸念が残る一方で、日本株には他国と比べて相対的に有利な条件が整いつつあります。こうした波乱含みの環境下で、なぜ日本株が「投資家に選ばれる」といえるのか。塚本憲弘氏の著書『資産運用の論点2026』(日経BP)より、その背景と具体的な要因をみていきましょう。

“常識破りの局面”出現?…2026年、米国株は「バブル」本格化へ

2026年に米国株が本格的な「バブル局面」に入る可能性も想定しておく必要があります。図表1で示したCAPE(シラーPER)は確かに割高圏にありますが、過去最高水準(ITバブル期の44倍前後)と比べれば依然として下回っており、歴史的にはまだ「絶対的な頂点」には達していません。

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[図表1]米国株CAPE(10年平均利益に基づくPER)の推移 (出所)イェール大学より筆者作成

しかも、市場が必ずしも過去最高水準で頭打ちとなる保証はなく、投資家心理や金融環境次第では、その水準を超えて一段と拡張していく可能性も否定できません。金融緩和が再開し割引率低下が株価の追い風となれば、CAPEがさらに押し上げられ、過去の常識を超える新たな局面が出現するシナリオも現実味を帯びてきます。

同時に、指数の集中度も高まり、S&P500では上位10銘柄だけで時価総額の約4割を占めるまでになっています。AI関連の収益期待を背景に資金が一極集中する構図は、上昇局面では市場全体を押し上げる一方で、反転局面では同時性の高い調整を引き起こすリスクを孕みます。

さらに、AIインフラへの巨額投資が世界的に加速しておりますが、こうした前提は需要の持続を前提にした投資であるため、想定より収益化が遅れる場合には、過剰投資や投資回収難が一気に表面化し、バブル崩壊の引き金となり得ます。

また、株式益利回り(E/P)と10年金利との差、いわゆる株式リスクプレミアム(ERP)が縮小しており、株式の相対的な妙味は低下しています(図表2)。

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[図表2]株式リスクプレミアムの推移 (出所)Bloombergより筆者作成

これは「高バリュエーションを正当化する余地」が限られていることを示唆し、もし投資家が成長ストーリーの持続に疑念を抱いた場合には、株価調整のインパクトが増幅される可能性があります。

投資家は、「バブル的過熱」への備えを

このように、2026年相場は「期待から実力へ」という基調が正しさを保ちつつも、別シナリオとして「バブル的過熱」が加速する展開も排除できません。

投資家はCAPEや予想PERなどのバリュエーション指標、指数集中度、AI関連投資の需給バランス、株式リスクプレミアムの水準といった定点観測を行いながら、万一のバブル局面に備えたリスク管理を怠らないことが求められます。

長期投資家にとっては、こうしたリスクシナリオを頭に置くことで、資産配分の見直しやヘッジ戦略を適切に組み込むことが可能になるでしょう。こうした価格水準や需給のリスクに加え、2026年は米国の中間選挙年という政治イベントも市場変動の契機となり得ます。

前半は不安定、後半は回復基調…米国「中間選挙年」の傾向

2026年は米国の中間選挙年でもあり、例年のパターンを見てみましょう。歴史的に見ると、中間選挙年の前半は政策不透明感や政局の思惑から株式市場のパフォーマンスが相対的に低調となる傾向があります。

しかし、選挙が終わると政治リスクが後退し、財政刺激や規制緩和への期待が高まりやすく、年後半から翌年にかけて株価が回復基調に転じやすいのも特徴です(図表3)。

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[図表3]大統領選挙サイクルでみる米国株のパフォーマンス (出所)Bloombergより筆者作成

2026年も同様のシナリオが意識される可能性があり、投資家にとっては「不安定な前半」と「回復余地のある後半」という時間軸の違いを踏まえたポジショニングが重要になるでしょう。選挙サイクルと格差是正要求が財政拡張による短期の押し上げをもたらす一方、その副作用として中期的な景気過熱とバリュエーション拡張のリスクが蓄積しかねません。

投資家は、政策の方向性×金利・需給の感応度×バリュエーションの三点を定点観測し、シナリオごとに資産配分とヘッジ方針を事前に用意しておくことが肝要です。

米国市場は製造業に注目、欧州は「割安」も成長材料に不足

市場参加者の関心は、従来の一部のハイテク株や大型株に集中するのではなく、より広範なセクターに分散しつつあります。

米国市場ではドル安傾向や関税政策の影響を受け、輸出型企業や製造業セクターへの注目が高まっています。欧州株式市場は相対的なバリュエーションの割安さから投資妙味を持つものの、成長材料の不足が重しとなりやすい状況です。

ウクライナ情勢、米中対立…意識したい地政学リスクと“逃げ場”

2026年の市場を展望するうえで、地政学リスクも投資家心理を大きく左右する要素です。ウクライナ情勢の長期化や中東での不安定化、さらには台湾海峡をめぐる米中対立など、火種は複数存在します。

こうしたリスクが顕在化すると、短期的には資金が米ドル・米国債・金などの「安全資産」に流入しやすい一方、防衛関連株やエネルギー株など特定のセクターは相対的に買われる傾向があります。

実際、2024〜25年にかけては、地政学的な緊張が高まる局面で金価格が最高値圏に上昇し、また欧州では防衛産業関連株への継続的な資金流入が確認されました。

2026年も同様に、リスクオフ局面では安全資産と防衛・資源関連への回避的シフトが、リスクオン局面では生成AIや半導体関連といった「成長セクター」への選好に戻る、といった二面性のあるポジショニングが想定されます。

つまり、投資家は地政学リスクを完全に予測することはできないものの、シナリオごとの資金の逃げ場やローテーション先をあらかじめ意識したポートフォリオ構築が求められる局面と言えるでしょう。

日本株が「いいポジションにある」といえる5つの理由

米国株や欧州市場に過熱感や一段の相場押上げ材料が必要とされる一方、日本株は相対的に良好なポジショニングにあるでしょう。その背景には、構造改革の進展やガバナンス改善に加え、マクロ環境と制度面の後押しが重なっている点が挙げられます。具体的には、以下のような複数の要因が株式市場を支えています。

1.設備投資の拡大

日本企業は、長らく設備投資を抑制してきた反動もあり、ここ数年で投資意欲が高まっています。

とりわけデジタル化に向けた構造転換は待ったなしであり、電池、再生可能エネルギー、データセンター、半導体製造装置といった分野で投資が急増しています。さらに人手不足が慢性化するなか、省力化や自動化に向けた機械投資、AI導入による業務効率化も進展中です。

こうした投資は単なる設備更新ではなく、将来の生産性や企業競争力を高める戦略的な動きであり、中長期的に企業収益の底上げにつながります。

2.賃上げと消費回復

2024年の春闘では、賃上げ率がバブル期以来の高水準となり、労働者の可処分所得を押し上げました。さらに2025年の春闘においても、大企業を中心に5%前後の賃上げが相次ぎ、中小企業にも波及しつつあります。

2年連続で高水準のベースアップが実現したことで、単発ではなく持続的な賃上げサイクルが定着し始めたと評価できます。

名目賃金の伸びが物価上昇率を上回る見通しが強まっており、実質購買力の改善が期待されています。耐久消費財の買い替え需要やサービス消費の回復が内需を押し上げ、企業収益に波及する好循環が形成されつつあります。

賃上げの継続は、国内経済の安定成長を支える最大の要素のひとつとなっています。

3.インフレの定常化

日本経済にとって長年の課題だった「デフレの常態化」からの脱却が、ようやく現実味を帯びています。

これまでの物価上昇は原材料高や円安など外部要因による一時的なコストプッシュ型が中心でした。しかし現在は、賃金上昇と物価上昇が相互に作用する「賃金―物価連動」型への移行が始まりつつあります。さらに、サプライチェーン再編やサービス価格の粘着的な上昇が下支えとなり、適度なインフレが経済に根付きつつあります。

このような環境は企業にとって投資や賃上げを正当化する基盤を提供し、結果として株式市場全体の成長期待を押し上げています。

“常識破りの局面”出現?…2026年、米国株は「バブル」本格化へ, 投資家は、「バブル的過熱」への備えを, 前半は不安定、後半は回復基調…米国「中間選挙年」の傾向, 米国市場は製造業に注目、欧州は「割安」も成長材料に不足, ウクライナ情勢、米中対立…意識したい地政学リスクと“逃げ場”, 日本株が「いいポジションにある」といえる5つの理由, 1.設備投資の拡大, 2.賃上げと消費回復, 3.インフレの定常化, 4.株主還元と市場改革, 少数与党でキーとなる「積極財政」, 5.政治は積極財政に動くか

[図表4]日本の成長率と金利の推移 (出所)Bloombergより筆者作成

4.株主還元と市場改革

東京証券取引所の「PBR改革」を契機に、企業の資本効率改善への意識が一段と高まっています。ROEやROICを意識した経営戦略が広がり、配当や自社株買いによる株主還元も急拡大しました。実際、2024年度の自社株買い枠は過去最高の19兆円に達し、時価総額比でも約2%という規模感です。

こうした積極的な株主還元姿勢は株価の下支えとなり、海外投資家にとっても日本株を再評価する契機となっています。さらに、N ISA拡充を背景に「貯蓄から投資へ」の流れが個人マネーを市場に呼び込み、中長期的に需給面の安定化をもたらしています。

少数与党でキーとなる「積極財政」

5.政治は積極財政に動くか

与党はすでに少数与党の体制にあり、公明党の連立離脱によって政権基盤の不安定さはさらに強まりました。その後、高市早苗氏の下で自民党は日本維新の会との距離を実質的に縮めたものの、政権基盤の脆さそのものが解消されたわけではありません。そのため、財政・経済政策を進めるうえでは野党との協調が不可避となっています。

野党側では減税や給付拡大、公共投資などの積極財政路線が支持を集めており、自民党内にも「規律ある積極財政」を掲げる勢力が台頭しています。自民・維新の連立に踏み切っても、与党はなお国会過半に届かず、法案処理・予算運営では他党との調整も不可避であり、連立の枠組み自体も強固ではありません。

こうした構図から判断すれば、政策として支出拡大・減税に向かう方向性は回避しがたいものとなっています。

短期的には、拡張財政は景気刺激・企業業績・家計負担緩和を通じて市場に歓迎される面がある一方、長期的には債務の持続性や国債市場の信認を揺るがすリスクを伴います。

直近でもフランスでは、政治的停滞が財政再建を遅らせ、その不安が国債利回り上昇という形でコスト化しており、日本も無関係ではありません。債務膨張と統治機能への疑念が同時に表面化すれば、市場は迅速に反応する可能性があります。

さらに、日本の場合、積極財政へ動くとしても、主張の異なる複数の野党との調整が不可避であり、合意形成が滞れば政策の停滞そのものがリスクとなります。高市政権は維新との合意を梃子に安定化を図る一方で、政策実行段階ではなお多党間調整が不可欠であり、その流動性が基礎的不確実性として残存しています。

すなわち、拡張方向が「望ましいか否か」以前に、それを実行可能な政治的合意、そして市場の信認を損なわない設計が確保されるかどうかが問われており、難しいかじ取りが迫られている状況にあります。

塚本 憲弘

執行役員

マネックス証券株式会社

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